看護師教育は大学へ―専門学校は減少、准看護師学校の応募者は1万人減

看護師の知識・技能が高度化するにつれて、准看護師養成や2年制・3年制課程の応募者が減少しています。これに反比例するように看護大学は増加していて、看護師養成が准看護師や養成校から大学などにシフトする傾向が顕著になっています。

日本医師会の「助産師・看護師・准看護師学校養成所調査」で明らかになりました。

看護師養成2年課程は減少傾向

2年・3年課程の看護師養成学校の動きを見てみると、学校数が増えているのは3年課程のみで、2年課程の学校は減少し続けています。

定員数を見てみると、3年課程では学校数の増加に伴って増えていますが、2年課程では定員数の減少が続いています。15年度は前年と比べて8校が減った影響もあり、全体の定員数は3366人。15年度に初めて3年課程の定員を下回りました。

2年課程の養成校・定員数が減っているのは、准看護師から正看護師を目指す場合、通信制の教育課程への入学者が増えていることが要因と考えられます。特に、10年以上の業務経験を持つ准看護師は、2004年の規制緩和によって通信制へ入学する割合が増えていて、2年課程の減少に拍車がかかっているようです。

なお、入学者に対する男子学生の割合は、准看・2年課程で22％、3年課程で14％でした。全体に横ばいですが、准看護師では微増にあるようです。

准看護師学校は5年前より17校の減少

准看護師学校は年々減り続けて188校となり、5年前に比べて17校も減っています。募集停止や廃校も増えていて、2015年3月には5校が廃校となりました。

また応募者数は2009年から11年までは増加して、11年のピーク時には2万9058人の応募者があったものの、その後は減少に転じています。15年度は前年より3600人少ない1万8900人で、ピーク時よりも1万人も減りました。

応募者数の動きについて、日本医師会では「准看護師の応募数は、景気に連動する傾向にある。ここ数年の応募者の減少は、景気が回復しているため」と分析しています。

リーマン・ショック後に激増―景気とリンクする准看護師人気

事実、医師会が指摘するように、准看の応募者は2009年から増加しており、08年に起こった世界的な金融危機、リーマン・ショックの時期と重なります。

また、社会人経験者で准看護師を目指す人は、相変わらず増えています。高校や短大・大学を卒業して、一度は別の仕事などについてから准看護師学校に入学する人の割合は、全体の約7割を占めています。

これらを考え合わせると、不況下ではとくに、手に職を求めて改めて看護学校に入りなおす人が増加していたと考えられます。

准看護師の高齢化、60歳以上が5％→17％へ急増

准看護師の年齢構造も大きく変化しています。2002年には「30歳未満（20％）」と「30～39歳（23％）」があわせて43％と、30代以下の准看護師が半数近くを占めていました。

これが10年後の12年には、30代以下の准看護師は26％にまで減少。反対に、40代以降が増えていて、全体の4分の3を占めるようになりました。

「40～49歳」の割合は横ばいですが、「50～59歳」は10年間で23％から29％に増加、「60歳以上」は10年前にはたった5％だったものが、17％にまで増加しています。

卒業後の進路では、進学する人の割合が年々増加しています。進学者の割合は、10年には37.4％だったのが、15年には46.9％と10ポイント近く増えていました（医療機関に就職しながらの進学を含む）。

正看への実務年数は短縮

調査結果を見ると、准看護師および2、3年課程を含めた養成校全体の傾向として、縮小が続いていることがわかります。看護師に求められる技術・知識が高度化するにつれて、看護師教育が養成校から大学などへシフトしつつあることが浮き彫りになっています。

一方で厚生労働省は、准看護師が正看護師になるための実務年数の短縮を決めていて、看護師不足を背景に准看護師への根強い需要も続きそうです。

(参考)

医療系でない大学まで…なぜ？止まらない看護大学の新設ラッシュ、25年間で20倍に増加

准看護師から正看になるための実務年数を短縮するのはなぜ？厚生労働省取材

日本医師会