最終更新日 2019/10/08

迷路

迷路とは・・・

迷路(めいろ、labyrinth)とは、内を構成する管腔構造のことである。側頭骨岩様部の錐体の中にあり、複雑な形状であることから、この名称がついたとされる。

【構造】
迷路は骨迷路(こつめいろ、osseous labyrinth)と膜迷路(まくめいろ、membranous labyrinth)によって構成されている。骨性の管腔構造である骨迷路の中に、骨迷路とほぼ同型の膜の袋である膜迷路が納まっている。骨迷路と膜迷路の間隙は外リンパ、膜迷路内は内リンパと呼ばれるリンパ液で満たされている。

迷路は主に聴覚、平衡感覚をつかさどり、半規管、前庭、蝸牛に分けられる。

■半規管(はんきかん、semicircular canal)
3つのリング状の器官が互いに垂直になるように90度ずつずれ、三次元空間の各方向を向いて組み合わさっている。半規管には膨大部と呼ばれるふくらみがあり、その内部に膨大部稜と呼ばれる感覚装置がある。

膨大部稜には有毛細胞があり、細胞の毛はゼラチン質のクプラによって覆われている。回転加速度が生じることでクプラが動くと、有毛細胞がそれを感知して電気信号に変換する。これが前庭神経を経てに伝達されることで、ヒトは回転加速度を認識している。

■前庭(ぜんてい、vestibule)
半規管、蝸牛の中間に位置し、前庭窓を介して中耳とも接している。膜迷路の中には卵形嚢(らんけいのう)と球形嚢(きゅうけいのう)という袋があり、袋の中に平衡斑という感覚器官を有している。

平衡斑では有毛細胞の上にゼラチン状の耳石膜があり、さらにその上に耳石という砂状の炭酸カルシウムの結晶がのっている。移動により直線加速度が生じて耳石、耳石膜が動くと、それを有毛細胞が感知し、電気信号に変換し、前庭神経を経て脳に伝達する。これによりヒトは直線加速度を認識している。

■蝸牛(かぎゅう、cochlea)
文字通り蝸牛(カタツムリ)のような螺旋状の管腔構造をしている。蝸牛の内部は外リンパで満たされた下階の鼓室階と上階の前庭階、さらにその中間にある蝸牛管の3つに分かれている。音は空気の振動として外耳、中耳を経た後、リンパ液の振動として内耳の蝸牛内へと伝達される。その際、振動は螺旋をのぼるように前庭階から頂上、鼓室階へ伝わり、蝸牛管へと下っていく。

蝸牛管の底(鼓室階との境界)の基底膜に存在する、コルチ器の有毛細胞がその振動を電気信号に変換し、脳に伝達することでヒトは音を認識している。
 

 

引用参考文献
1)坂井建雄ほか.情報の受容と処理.系統看護学講座 専門基礎分野 人体の構造と機能[1]解剖生理学.第9版,医学書院,2014,438-441(ISBN9784260018265)

執筆: 石田 光

元 神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター

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