病院職員のマタハラで最高裁弁論 病院が敗訴の可能性も
女性の妊娠・出産を理由とした不当な扱いに関する、いわゆるマタニティー・ハラスメント(マタハラ)が問題になるなか、病院職員の女性が病院を相手にマタハラを訴えた最高裁判所の弁論が開かれ、注目を集めています。

最高裁がマタハラで初めて判決
訴えたのは、広島市の病院につとめていた理学療法士の女性です。第2子の妊娠を理由に負担の軽い業務を希望したところ、管理職を解かれて降格されました。女性はこれを不服として、男女雇用機会均等法に反するとして病院を訴えていたのです。
最高裁がマタハラについて判断をくだすのは、これが初めてのことです。1、2審では「管理職の任免は使用者側の判断にゆだねられている」などとして、女性の訴えを却下していました。これが最高裁で逆転されて、病院が敗訴となれば、歴史的に大きなターニングポイントとなります。
看護師の切迫流産率は3割 一般女性の2倍にのぼる
女性が多い医療・介護現場では、一般社会よりさらに深刻なセクハラやマタハラ、パワハラが横行しています。日本医療労働組合連合会(医労連)の調査では、母性に厳しい看護師の職場実態が浮かびあがりました。
調査では妊娠を経験した看護師の3割が「切迫流産」を経験。看護師以外の女性労働者全体の平均が17%であるのに対して、2倍近い割合になっています。介護職員の「切迫流産」率(25%)よりも高い数字です。
3分の1が妊娠時の夜勤免除「なし」
妊娠時の母性支援では、「夜勤・当直免除」が65%となっていますが、見方を変えれば3分の1は夜勤が免除されていません。次に多かったのは「夜勤日数の軽減」26%です。「軽度な仕事への配置転換」「時間外勤務免除」などはほとんど行われていませんでした。
3万2000人の回答者のうち4割もが記入した、自由記入欄からは切実な声が聞こえてきます。
「つわりを我慢しながらの夜勤。身の危険を感じる」
「妊婦との夜勤は、本人も一緒にやる人もつらい」
「妊娠中だが月8回夜勤をこなしている」
無事に出産できても、その後も大変さは変わりません。
「子供が小さく夜勤にでるのがとてもつらい。免除はあるが、だれも申請していない」
「日勤後の帰宅は9時、休日もあわない。家族の時間がとれず、しわよせが子供にいく」
「子供の行事にも参加できず、泣かれる。なんのために働くかわからない」
知られていない過酷な看護実態
一方では看護師の人手不足をなげき、一方で、病院あるいは制度みずからが、看護師の働く環境を悪化させています。この矛盾は、長年にわたって解消されていません。
まずは、看護師の労働環境が、いかに過酷であるかを多くの人に知ってもらうことが必要です。また、明らかなマタハラなどハラスメントと感じた場合は、労働基準監督署や労働組合、あるいは全国の医労連などに相談してみるのもいいかもしれません。
今回の裁判では、下級裁判での判決を変える時に必要な弁論が開かれたことから、女性側を敗訴とした1審2審の判決がくつがえされ、逆転して病院側が裁判で負ける可能性が高まっています。
最高裁の判決は10月23日に出されます。どのような結果になるのか、行方が気になるところです。
(参考)
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