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2016年07月02日

「もみじの家」で子どもと家族が笑顔に|看護師にしかできないこととは?

「もみじの家」をご存知ですか?

もみじの家は、24時間医療的ケアが必要な重症の子どもが、看護師らのケアを受けながら短期間の宿泊ができる施設です。

年間20日まで利用できます。

 

現在、在宅で「人工呼吸器」や「経管栄養」「たんの吸引」などの医療的ケアを常時必要としている子どもは、全国に約1万3千人います。

 

常時医療的ケアが必要ということは、たとえば、1日5回、1回あたり4時間かけてチューブから食事をとり、体調が悪ければ5分置きに「たんの吸引」を受けるというような状態です。

 

このような医療的ケアは、原則として看護師などの医療者、そして家族しか行えません。

 

そのため、在宅で家族は24時間365日、子どものケアにつきっきりになります。

「私がいなくてはこの子が死んでしまう」という緊張感と疲れとともに毎日を過ごしているのです。

 

しかし、子どもを預けたくても、多くの保育園や幼稚園では医療的ケアを実施できないため、受け入れてもらえません。

 

このような子どもと家族を救うため、2016年4月15日に「もみじの家」(東京都世田谷区)がオープンしました。

看護師が24時間態勢でケアにあたっているため、子どもと家族は安心して利用できます。

 

「もみじの家」のミッションと、看護師だからできることを、看護師長の滝本悦子さんに伺いました。

 

「もみじの家」の玄関前の滝本さん

 

 

【目次】

 

 

【ミッション1】重症の子どもに笑顔を

重症の子どもは、医療的ケアを24時間、365日必要としています。

そのため、多くの子どもにとって当たり前のこと(友だちと遊ぶ、勉強をする、公園に行く、お風呂に入る等)ができません。

 

自宅にこもりっきりの子どもたちに、医療的ケアを受けながら楽しい時間を過ごし笑顔になってもらうこと。

これがもみじの家の1つ目のミッションです。

 

「医療的ケアが必要なお子さんに笑顔になってほしい」

この想いが滝本さんを突き動かしています。

 

 

重症の子どもが一番安心できる場所、それはおうちです。

「もみじの家」は“家”という名前が表すように、子どもにとっての第二の家を目指しています。

 

「おうちと同じ環境で安心して過ごしてもらうことが、笑顔への近道なんです」と、滝本さんは語ります。

 

重症の子どもたちは、特に環境の変化に敏感だといいます。

そのため、滝本さんはスタッフとともに「どうしたらより自宅に近い環境になるのか」日々試行錯誤しています。

 

中でも大きな特徴として、1日のスケジュールを「おうちと同じ」ように過ごしてもらっていることが挙げられるそうです。

 

「病院の場合、1日のスケジュールを決めるのは医療者ですよね。でも、ここではお子さんとご家族が主体。お子さんが一番くつろいで過ごせるスケジュールに、私たち看護師が合わせているんです」

 

子どもたちは、手作りの時計で勉強したりおもちゃで遊んだりして過ごす。

 

 

また、普段外出できない子どもたちにとって、友だちに会えることも笑顔の一因です。

 

もみじの家では、重症の子ども同士はもちろん、その兄弟・姉妹も一緒に遊べるように、広々としたプレイスペースが設けられています。

 

仕切りのない空間で、子どもたちは伸び伸び過ごすことできます。

また、見渡しやすいため、看護師や家族の眼が行き届き、安心できる工夫にもなっています。

 

2階のプレイスペースには間仕切りがない。

 

子どもたちはおうちと同じように安心できる環境で、普段はできない楽しい体験をすることができるのです。

 

 

【ミッション2】子どもの両親に笑顔を

重症のお子さんをもつご両親は、子どもを預けて出かけることに抵抗感や罪悪感をもっていることもあります。

 

365日、どこへも出かけないという方もいます。

なぜなら、「私がいなければこの子は生きていけない」という思いの中で毎日を過ごしているからです。

 

しかし、自宅にいるときも気は抜けません。

眠るときも、子どもが咳き込むたびにこまめに起床して、「たんの吸引」や「ミルクの交換」を行うこともあります。

 

まとまった睡眠ですら、ほとんどとれない場合が多いのです。

 

そんなご両親に対して、滝本さんはこんなふうに想いを語ってくれました。

「『がんばり過ぎなくていいんですよ』と伝えたいです。お子さんがもみじの家で過ごすことによって、少しでもご両親が安らげればと思います」

 


もみじの家には、両親がくつろぎ、リフレッシュできる工夫も凝らされています。

 

共有のダイニングスペースには、いくつもテーブルが設置されており、のんびりと食事を楽しむことができます。

 

共有のダイニングスペース。後方にはキッチンがある。

 

このダイニングスペースは、家族同士がコミュニケーションをとれる場としても役割を果たしています。

 

 

「のんびりと食事をしながら、共通の悩みをもつご両親同士で話をできることも、もみじの家の特徴です。ご両親は、いつも張りつめている分、相談したり、雑談をするだけでも気持ちが楽になることが多いようです」

 


また、ダイニングスペース後方にはキッチン設置されており、お父さんが料理を振舞ってくれたこともあるとのこと。

 

毎日外での仕事をこなし、自宅では子どものケアに付きっきりになっているため、「久々の料理が気分転換になった」という感想が聞かれたそうです。


また、手料理の良さは、ご本人の気分転換だけにとどまらないと滝本さんは言います。

「手料理のにおいは、“おうち”には欠かせないものだと思います。あたたかな家らしい雰囲気になり、とても有難かったですね」

 

 

【ミッション3】看護の目標は「おうちと同じケア」

もみじの家の看護は、「おうちと同じケア」を目指しているとのこと。

「看護のお手本は“お母さん”」として、家庭で行っているケアをきめ細かく引き継ぐようにしています。

 

具体例を滝本さんはこのように語ってくれました。

「たとえば、痙攣が起きたとき、病院ではすぐに『痙攣止め』のお薬を使ったりするんですが、おうちで最初にする対処って必ずしも薬じゃないんですよね。体位を変えたり、首を支えたり、おうちでしているケアをお母さんに教えてもらって、一緒に実施しています」

 

 

キッチン付の個室。家族用の個室もある。


初回入所は原則2泊3日。

このときは、主介護者にも宿泊してもらい、おうちのケアを引き継いだりケアの方針を話し合ったりする時間を設けています。

 

1階のオープンスペース。くつろいで話ができる空間になっている。

 

現在、もみじの家の看護師チームは、小児看護や訪問看護の経験をもっている人で構成されています。

 

このようにキャリアがある看護師であっても、もみじの家に特有の「子どもが主体のスケジュール」にも「家庭のケアを引き継ぐ方針」にも最初は戸惑うといいます。

 

それそれがこれまでの経験を活かしながら、「もみじの家」がめざす「おうちと同じ環境」を実現できるように尽力しているとのことです。

 

「看護師チームは、皆それぞれ経験豊富で、利用者への思いも強いので、意見はたくさん出ますよ。
毎日毎日ディスカッションを繰り返して、おうちと同じで安らげる空間に近づけるよう、皆で頑張っています」

 

 

【ミッション4】もみじの家の取り組みを伝える

もみじの家の4つ目の役割は、取り組みを広く伝えていくこと。

 

医療者でも、成人領域に比べて小児領域に関わる機会は少なく、「どのような助けが必要なのか」があまり知られていないといいます。

 

滝本さん自身も、7年前に国立成育医療センター(「もみじの家」の母体)に転勤になったのが、小児看護に関わる初めての機会だったそうです。

当時の滝本さんは、ICUで気管切開などの高度な医療を受けた子どもたちを、在宅へつなぐための病棟に勤務していました。

 

「もみじの家に関わるようになったのは、ほとんど偶然の成りゆきです。

正直、もともと『小児看護をやりたい!』と希望していたわけではなかったんですよ」

 

 

 


「小児看護は成人看護とはまったく違う分野。専門用語もわからないし、携わって1年間は右も左もわからない…というのがホンネでした。でも続けてみると、子どもたちって『こんなに成長が著しいんだ』『こんなに個性が強いんだ』と感じて、学ぶことが多かったです」

 

3年が経った頃には「このまま小児看護を続けたい」という気持ちに変化していったとのこと。

 

「その頃から、退院の前に必ずご自宅を見に行かせてもらっていたので、重症のお子さんが、おうちでどうやって過ごしているかはイメージはしやすかったです。それで、もみじの家開設プロジェクトに声をかけてもらったのだと思います」

 

プレイルームの柱。季節の飾りつけがかわいらしい。


もみじの家プロジェクトに参加してからも、初めて知ったことがたくさんあったそうです。

 

 

「困っている重症のお子さんやご家族についての社会認知度の低さだけが問題ではないんですよね。重症のお子さんが産まれてきたときに、受容できないご両親もいらっしゃいます。そうした場合、ずっと病院で暮らすことになる。――どうにかならないのかな、と思いますね」

 

もみじの家の取り組みを広く伝え、全国に志を同じくする施設ができるようになることで、困っている方が1人でも笑顔になり、両親の受容などの問題も解決されていくことをめざしているそうです。

 

 

【おわりに】看護師だからできること

もみじの家が4月にオープンしてから、ご両親に「受け入れ先がほぼない状態なので、すごくありがたい」「安心して任せられる」という感想をいただいているそうです。

 

看護師がいるからこそ「受け入れ」ができるのであり、「安心して任せられる」状況になっているのです。

 

また、看護師としての醍醐味は、子どもたちの笑顔が見られる瞬間。


子ども主体の時間割に沿い、看護師が立てたケアプランで、ケアやアクティビティを行った結果、子どもたちが楽しそうにしてくれるのはとても嬉しいといいます。

 

しかし、「子どもにとってほんとうにくつろげる空間になっているか」は、手探りの段階とのこと。

たとえば、「アクティビティの効果はどれほどだったのか」「疲れさせてしまってはいないか」など、アセスメントしては修正する、を繰り返しているそうです。

 

このようなアセスメントとケアの修正も、看護師だからこそできる細やかな配慮です。

 

 

最後に、もみじの家の将来について伺いました。

 

「将来は、短期の宿泊だけでなく、お看取りからグリーフケアまで担える施設をめざしています。終末期の医療的ケアやグリーフケアにおける心理的な看護も、私たちが担っていきたい部分です。

そして、もみじの家の取り組みを1人でも多くの人に知ってもらえるように、頑張りたいです」

 

子どもたちと家族に笑顔をもたらすために、滝本さんたちの取り組みは続いていきます。

 

【もみじの家】

●対象者

〔年齢〕

原則 0歳~18歳まで

〔状態〕

1)在宅で医療ケアが必要なお子様

2)肢体不自由の有無は問いません

3)その他、特別なケアが必要で在宅での生活にお困りのお子様やご家族

 

(参考)

もみじプロジェクト(国立成育医療センター)

おはよう日本(NHK)

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コメント一覧(2)

2匿名2016年07月02日 17時57分

こういうところで働いてみたい!

1匿名2016年07月02日 17時39分

素晴らしい取り組み!母一人子一人の母子家庭なので、夜勤できません。

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