小児の腰椎穿刺の目的と手順

『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。

今回は小児の腰椎穿刺の目的と手順について解説します。

 

風間 敏子
元 難病子ども支援全国ネットワーク電話相談室

 

 

腰椎穿刺の目的

  • 1中枢神経系の感染症の診断:髄膜炎、脳炎
  • 2炎症性脱髄疾患の診断:急性播種性脳脊髄炎、多発性硬化症
  • 3末梢神経炎の診断:ギランバレー症候群
  • 4髄腔内薬物投与などの治療。

 

 

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腰椎穿刺の手順

1 必要物品の準備

腰椎穿刺に必要な物品は(図1)のとおり。

 

図1 腰椎穿刺の必要物品

腰椎穿刺の必要物品

 

①腰椎穿刺セット(滅菌ガーゼ/圧測定ガラス棒/滅菌スピッツ
②滅菌鑷子
③穿刺針(ディスポスパイナス針)
④注射針(23G・ディスポーザブル)
⑤延長チューブ 
⑥三方活栓
⑦滅菌手袋
⑧滅菌穴あき布
⑨滅菌綿球
⑩消毒液(ポビドンヨード/ハイポアルコール)
⑪ものさし(30cm)
⑫絆創膏
⑬ディスポーザブル覆い布
呼吸・心拍モニター、パルスオキシメーター 
酸素吸入の必要物品
⑯吸引の必要物品

 

2 体位の固定

患児と家族に説明を行う。

 

患児を処置室に連れていき、穿刺部位を露出する。患児を左側臥位にし、臍をのぞき込むように頸部と膝を曲げ、肩全体を保持。膝を介助者の両膝で固定する(図2)。

 

患児の腹部前方に右腕を入れて支柱にし、患児がえびぞりにならないようにする。

 

患児の背中がベッド端にくるようにし、背面は常に垂直に保つ。

 

患児が暴れるなど協力が得られない場合は、鎮静薬を使用する場合もある。

 

図2 患児の体位を固定する

患児の体位を固定する

 

3 穿刺部位の消毒

患児が動かないよう軽く固定したら、穿刺部位を消毒する(図3)。

 

図3 穿刺部位を消毒する

穿刺部位を消毒する

 

POINT

■消毒前に、位置をよく確認する。
■消毒は穿刺部位を中心に、外側に向けて円を描くように、広範囲に行う。
■ポビドンヨードで2回消毒し、ハイポアルコールで拭く。

 

4 腰椎穿刺

❶穿刺部を中心に滅菌穴あき布をかけ(図4)、無菌的操作で医師が穿刺を行う。
介助者はこの間、体位の固定をしっかりと行う。

 

図4 穿刺部を中心に滅菌穴あき布をかける

穿刺部を中心に滅菌穴あき布をかける

 

POINT

■体動が激しい場合は、鎮静薬を使用する場合がある。
■リネンの内側には触れないよう、無菌的操作で行う。
■乳児はおむつを当て、尿や便で穿刺部位を不潔にしないよう気をつける。

 

❷医師が穿刺針を刺入する(図5)。
介助者は患児に声をかけて、不安を和らげる。同時に、患児の顔色や呼吸状態の観察を行う。

 

図5 医師が穿刺針を刺入する

医師が穿刺針を刺入する

 

POINT

■穿刺は第4腰椎以下の脊椎間で行う(図6)。

 

図6 穿刺は第4腰椎以下の脊椎間で

穿刺は第4腰椎以下の脊椎間で行う

 

❸内針を抜き、滅菌スピッツに髄液を採取する(図7)。
抜針後は、滅菌ガーゼで圧迫止血を行う。ポビドンヨードで消毒し、滅菌ガーゼを当てて絆創膏で固定する。

 

図7 滅菌スピッツに髄液を採取する

滅菌スピッツに髄液を採取する

 

POINT

■髄液の色調・混濁を観察する。
■患児の顔色・呼吸状態を観察する。

 

髄圧測定の場合

三方活栓に接続したガラス管、または延長チューブを接続し、初圧を測定する(図8)。

 

図8 髄圧測定

髄圧測定

 

POINT

髄液圧の測定

■Queckenstedt試験(頸静脈を両側で圧迫)で、観察。
■髄液圧の上昇があれば、陰性で正常。
■髄液圧の上昇がなければ陽性で、クモ膜下腔内の閉塞である。
髄液圧の基準値
 新生児 10~80mmH20
 乳幼児 40~100mmH20
 学童  60~180mmH20

POINT

髄液採取の禁忌

頭蓋内圧亢進:CT・MRI画像で明らかな脳浮腫、うっ血乳頭や大泉門膨隆を認める場合。
出血傾向:血小板減少症、抗凝固薬・抗血小板薬使用の場合。
■穿刺部位に皮膚感染症がある場合。

 

CHECK!

穿刺後は、水平にして安静に!

穿刺後は、枕を外して仰臥位をとる(図9)。急激な頭蓋内圧低下を避けるため、頭部を水平にして1〜2時間、仰臥位で安静にする。抱っこして移動する際も、頭を上げずに水平移動。患児や家族に安静の必要性を説明し、協力を得る。必要時、抑制帯を用いる。

 

図9 穿刺後は仰臥位をとる

穿刺後は仰臥位をとる

POINT

観察:穿刺部位からの出血や髄液の漏れ、悪心・嘔吐の有無、下肢知覚異常の有無。
記録:実施時間、髄液の性状・圧、検査中・後の患児の状態、穿刺部位の状態、患児の反応。

 

 

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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ

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