神経サルコイドーシス

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』より転載。
今回は神経サルコイドーシスの検査・治療・看護について解説します。

 

牛久清美
東海大学医学部付属八王子病院看護部主任

 

 

 

神経サルコイドーシスとは?

サルコイドーシスは、全身の臓器に肉芽腫が形成され、多様な症状を起こす難病です(図1)。この疾患のうち、脳神経障害をきたす神経サルコイドーシスは、5%程度といわれています。

 

memo:サルコイドーシス

ラテン語で「肉のようなもの」という意味。

 

図1神経サルコイドーシスの病態

図1神経サルコイドーシスの病態

 

 

神経サルコイドーシスには、中枢神経系サルコイドーシス・末梢神経系サルコイドーシスがあります。

 

サルコイドーシスは難病指定されており、重症度ⅢとⅣは公費助成を受けることができます(表1)。

 

表1サルコイドーシスの重症度分類

表1サルコイドーシスの重症度分類

難病情報センターホームページ(2020.2.25アクセス)より引用

 

サルコイドーシスの予後は、短期改善型(2年以内)、遷延型(2~5年の経過)、慢性型(5年以上)、難治化型があります。

 

男性は若年者、女性は高齢者に多くみられます。

 

 

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患者さんはどんな状態?

サルコイドーシスは、病変部位によりさまざまな症状が出現します(図2)。初期は、肺門部リンパ節腫脹、肺野病変、皮膚・関節・眼症状が現れることが多く、約90%が肺病変を形成します。

 

図2サルコイドーシスの症状

図2サルコイドーシスの症状

 

memo:ブドウ膜

眼の虹彩、毛様体、脈絡膜の総称。

 

時には肉芽腫性血管炎によって、虚血性変化梗塞・静脈洞血栓症などを起こすこともあります。

 

脳神経障害による症状

脳神経が障害されると、うつ状態記憶障害神経症認知症人格障害せん妄などの症状が出現します。また、視床下部、側脳室、髄膜、下垂体が障害されると、尿崩症脳炎水頭症髄膜炎症状を認めます。

 

視神経や顔面神経に症状が出現することが多いです。このほか迷走神経・舌咽神経・聴神経にも症状が出現し、ものがかすんで見えたり(霧視)、光がまぶしく見えたり(羞明)、飛蚊症、口角下垂といった症状を認めることがあります。

 

末梢神経が障害されると、脱力感腱反射喪失神経痛知覚障害が出現します。

 

 

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どんな検査をして診断する?

サルコイドーシスの診断は、サルコイド結節を探して生検を行い、乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を確認します。

 

胸部X線検査では、両側肺門リンパ節腫脹などの異常が大半にみられます。

 

脳のMRI検査では、硬膜・髄膜の造影増強効果、脳・脊髄実質内の造影病変を探します。

 

脳脊髄液検査では、アンジオテンシン変換酵素(ACE;angiotensin converting enzyme)、髄液細胞CD4/CD8比をみます。

 

神経生検と同時に、短腓骨筋を採取して筋生検を行うと診断確率が上昇します。

 

症候性でもクレアチンキナーゼ(CK)の上昇が目立たない例もありますが、無症候性でも筋生検やPETで筋病変が出ることが頻繁にあります(図3)。

 

図3神経サルコイドーシスの画像診断

図3神経サルコイドーシスの画像診断

 

 

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どんな治療を行う?

副腎皮質ステロイドの投与を行います。

 

二次治療薬:メトトレキサートやアザチオプリン(免疫抑制薬)を投与します。

 

 

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看護師は何に注意する?

多彩な症状が出現するため、脳・神経だけでなく全身の看護を行います(表2)。

 

表2サルコイドーシスの症状と看護

表2サルコイドーシスの症状と看護

 

肝臓、脾臓、上気道、胃腸、乳房、精巣では、仮に病変が見つかっても自然に治るのを待ちます。症状が出現する場合は、症状の緩和に努めます。

 

疲れ、息切れ、痛み、発熱など、説明のつかない全身症状を訴える患者さんが多くみられます。患者さんの訴えを聞き、苦痛を受けとめることが大切です。

 

フキダシ:患者さん個々にあった看護を行うことが大切です。

 

退院支援

入院日から、本人・家族より家での暮らしについて情報収集します。情報を踏まえて「やりたいこと」「できること」の折り合いを付けて目標を設定します。

 

医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、MSW、薬剤師、管理栄養士などとのチームで、目標に向かって「その人らしい暮らし」ができるようサポートします。

 

難病指定の助成金手続きを進めるとともに、社会的支援が必要な場合は、入院中から要介護認定の申請、ケアマネジャーや訪問看護ステーションなどとの契約を進めます。すでにケアマネジャーや訪問看護ステーションと契約している場合は、連絡をとり、患者さんの現在の状態と、退院後の注意点などの情報交換を行います。

 

退院前には服薬指導・栄養指導の機会を設定し、退院後の不安を改善し、生活のイメージができるような援助を行います。

 

自宅でも行えるようなリハビリテーションを紹介します。

 

副腎皮質ステロイドを内服している場合は、易感染状態であるため、感染予防のための手洗い、うがい、マスクの使用について指導を行う。

 

 

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看護のポイント

多くの症状が出現するため、全身症状や精神症状のケアに加え、日常生活援助が必要となります。また、髄膜炎や麻痺といった神経症状の出現に注意して観察を行っていきます。麻痺や意識障害がある場合は、転倒・転落の防止も重要となります。

 

 

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神経サルコイドーシスの看護の経過

神経サルコイドーシスの看護を経過ごとにみていきましょう(表3)。

 

表3神経サルコイドーシスの看護 一覧

表3神経サルコイドーシスの看護 一覧

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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