神経ベーチェット病

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』より転載。
今回は神経ベーチェット病の検査・治療・看護について解説します。

 

牛久清美
東海大学医学部付属八王子病院看護部主任

 

 

神経ベーチェット病とは?

ベーチェット病は、慢性・再発性の炎症(静脈炎)により全身の臓器が障害される難病です(図1)。この疾患の特殊病型として、中枢神経に病変が発症したものを、神経ベーチェット病と呼びます。急性型と慢性進行型があり、髄膜炎や片麻痺を発症する場合もあるため、注意が必要です。

 

memo:ベーチェット病の3大亜型

神経ベーチェット病、血管ベーチェット病、腸管ベーチェット病は3大亜型といわれ、重症化することがある。

 

図1ベーチェット病の病態と症状

図1 ベーチェット病の病態と症状

 

神経ベーチェット病は、ベーチェット病発症後から5~6年で発症する場合が多く、女性より男性のほうが重症化しやすいといわれています。

 

ベーチェット病は、世界的にみると日本、韓国、中国、中近東、地中海沿岸諸国に多くみられ、シルクロード病とも呼ばれています。

 

 

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患者さんはどんな状態?

ベーチェット病には4つの主症状(眼症状、アフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状)があります。

 

神経ベーチェット病には、急性型慢性進行型があり、それぞれ症状が異なります(表1)。

 

表1神経ベーチェット病の急性型と慢性進行型

表1神経ベーチェット病の急性型と慢性進行型

 

 

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どんな検査をして診断する?

画像検査

MRI画像では、脳幹部を中心に小脳、大脳などで萎縮を認めます。ただし、異常所見がない場合もあります。

 

検体検査

脳脊髄液検査では、細胞成分の増加(細菌やウイルスの髄膜炎を除外する必要があります)、持続的なインターロイキン-6(IL-6)の上昇が特徴的です。

 

血液検査では、炎症データが上昇します。

 

 

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どんな治療を行う?

急性型は、副腎皮質ステロイドの投与、点滴によるステロイドパルス療法を行います。

 

慢性進行型は、メトトレキサートが有効です。

 

memo:副腎皮質ステロイドの長期服用

副腎皮質ステロイドを長期間服用すると、骨粗鬆症になりやすい。
そのため、アレンドロン酸ナトリウム水和物剤(ボナロン®)の内服を開始するが、この薬は日本の水で内服することが原則であり、カルシウムやマグネシウムの含量が多い海外の水で内服してはいけない。

 

 

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看護師は何に注意する?

口腔粘膜のアフタ性潰瘍

口腔内の疼痛の緩和や、食事摂取状況の確認を行います。

 

口腔内の清潔保持のため、口腔ケアを行います。

 

栄養状態を把握するため、食事摂取状況に加え、アルブミンなどの血液データや体重などをアセスメントの参考にします。

 

疼痛により食事摂取が困難な場合は、食事の形態を粥や軟菜にします。

 

外陰部潰瘍

男性は陰囊、陰茎、亀頭部、女性は大小陰唇、腟粘膜の観察をします。

 

有痛性の潰瘍があった場合、症状悪化予防のため、患部の清潔を保持します。失禁などで清潔保持が困難な場合は、膀胱留置カテーテルの挿入を検討します。

 

皮膚症状

下腿や前腕には結節性紅斑が、顔・頸部・胸部には座瘡(ざそう)様皮疹が発症しやすいため、注意して観察します。

 

皮膚症状がある場合は、疼痛の程度を観察し、悪化予防のため、患部の清潔保持をします。

 

眼症状

両眼の病変を発症する場合が多いです(図2)。

 

図2眼球の構造

図2眼球の構造

 

虹彩毛様体炎では、眼痛、充血、羞明、瞳孔不同の観察を行います。

 

網脈絡膜炎では、視野が低下し、障害が蓄積されると失明します。

 

視覚障害がある場合、転倒・転落のリスクが上昇するため、ベッド周囲の環境整備が必要です。

 

神経症状

髄膜炎・脳幹脳炎の症状である、発熱頭痛悪心意識障害けいれんの観察を行います。片麻痺小脳症状錐体路症状などの神経症状に加え、認知症などの精神症状が出現する場合もあります。

 

発熱時や身体のバランスの崩れがある場合、転倒・転落のリスクが上昇します。

 

関節炎・血管炎

全身の関節の疼痛の有無や、可動域の観察を行います。疼痛により、身体の可動が困難になると、転倒・転落のリスクが上昇します。

 

消化器症状

腸管潰瘍を発症する場合が多いため、食事摂取や排便の状況を観察します。

 

消化管出血や腸管に穿孔がある場合、緊急手術を必要とする場合があります。日ごろからの排便状況の把握が大切です。

 

副睾丸炎

睾丸部の腫脹・疼痛の観察を行います。

 

発熱を伴う場合、解熱するようかかわります。

 

腫脹による歩行困難が生じる場合、転倒・転落のリスクが上昇します。

 

退院支援

入院日から、本人・家族より家での暮らしについて情報収集します。情報を踏まえて「やりたいこと」「できること」の折り合いを付け、目標を設定します(表2)。

 

表2情報収集の例

表2情報収集の例

 

医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、MSW、薬剤師、管理栄養士などとのチームで、目標に向かって「その人らしい暮らし」ができるようサポートします。

 

指定難病の助成金手続きを進めるとともに、社会的支援が必要な場合は、入院中から要介護認定の申請、ケアマネジャーや訪問看護ステーションなどとの契約を進めます。すでにケアマネジャーや訪問看護ステーションと契約している場合は、連絡をとり、患者さんの現在の状態と、退院後の注意点などの情報交換を行います。

 

退院前には服薬指導・栄養指導の機会を設定し、退院後の不安を改善し、生活をイメージできるような援助を行います。

 

自宅でも行えるようなリハビリテーションを紹介します。

 

副腎皮質ステロイドを内服している場合は易感染状態であるため、感染予防のための手洗い、うがい、マスクの使用について指導を行います。

 

 

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看護のポイント

多くの症状が出現するため、全身症状や精神症状のケアに加え、日常生活援助が必要となります。また、髄膜炎や麻痺といった神経症状の出現に注意して観察を行っていきます。麻痺や意識障害がある場合は、転倒・転落の防止も重要となります。

 

 

 

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神経ベーチェット病の看護の経過

神経ベーチェット病の看護を経過ごとにみていきましょう(表3)。

 

 

表3神経ベーチェット病の看護の経過 一覧

表3神経ベーチェット病の看護の経過 一覧

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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