開頭術

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』より転載。
今回は開頭術の流れや看護のポイントについて解説します。

 

伊藤萌子
東海大学医学部付属八王子病院看護部

 

 

開頭術とは?

開頭術は、頭皮、頭蓋骨、硬膜を切除し、病巣に直接アプローチする方法です。

 

適応疾患には、脳血管障害脳腫瘍頭部外傷などがあります(図1)。

 

図1開頭術の適応疾患

図1開頭術の適応疾患

 

 

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開頭術の主な術式

脳動脈瘤クリッピング術

脳動脈瘤に対する開頭術として、クリッピング術があります(図2)。

 

図2脳動脈瘤クリッピング術

図2脳動脈瘤クリッピング術

 

脳動脈瘤の根元の部分を、血管の外側からクリップではさみ、瘤の中に血液が入らないようにすることで破裂を防止する手術です。

 

脳動脈瘤の形に関係なく治療できますが、脳の深い部分では治療が難しくなります。

 

脳腫瘍摘出術

脳腫瘍の手術では、腫瘍の種類、発育部位、大きさなどに合わせた術式が用いられます。

 

脳腫瘍は良性脳腫瘍(主に脳実質外腫瘍)と悪性脳腫瘍(主に脳実質内腫瘍)に大きく分けられ、悪性腫瘍の多くが全摘出は困難です。脳周囲の神経や血管を巻き込んでいる場合には、麻痺などの後遺症を残さないために亜全摘や部分摘出にとどめることもあります。

 

手術は顕微鏡を用いて行われますが、ニューロナビゲーション図3)や神経モニタリングといった新しい機器や技術を併用することで、より安全で腫瘍近傍の神経機能の温存を目的とした手術が可能となっています。

 

図3ニューロナビゲーション

図3ニューロナビゲーション

 

memo:神経モニタリング

神経モニタリングの目的は、運動機能に加え、感覚機能、視機能、聴覚機能などの温存である。モニタリング方法は多岐にわたる。術後の脳神経機能の合併症の予防には、神経モニタリングによる手術中の異常の早期検出が重要となる。

 

 

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看護師は何に注意する?

開頭術前の看護のポイント

全手術に共通する確認事項のほか、意識レベルと瞳孔所見、血圧、頭痛、悪心・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状の有無を確認します。

 

memo:全手術に共通する確認事項

  • アレルギーの有無
  • 感染症の有無
  • 内シャントの有無
  • 内服状況(特に抗凝固薬)
  • 義歯や動揺歯の有無

 

脳血管障害では高齢者が多く、高血圧、糖尿病、心疾患、不整脈、呼吸器疾患などの合併症を有することが多いので、これらの合併症についての評価も行います。

 

開頭術の流れと看護のポイントを図4に示します。

 

図4開頭術の流れと看護のポイント

図4開頭術の流れと看護のポイント

★1 橈骨神経麻痺
★2 腓骨神経麻痺
★3 外減圧術
★4 ドレナージ術

 

開頭術後の看護のポイント

創部は血液、分泌物、発汗などで汚染されることによって、感染を引き起こす可能性があります。創部からの出血がないか確認し、創部周囲を清潔にして、清潔なガーゼやテープで保護することが大切です。

 

開頭術後の患者さんの観察は、頭蓋内の状態を身体所見からいかに評価するかがポイントです。気道の開通と呼吸状態、循環動態、神経学的所見、体温、ドレーンや創部の観察など、全身状態の観察が必要です。

 

開頭術後の合併症には、術後出血脳浮腫脳血管攣縮感染症深部静脈血栓症肺血栓症などがあり、早期発見や予防を考慮した観察が重要です。

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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