輸液中の空気、人体に入ってしまったらどうなるの?|輸液管理

『エキスパートナース』2017年3月号<バッチリ回答!頻出疑問Q&A」>より抜粋。
輸液ルートへの空気の混入について解説します。

 

井上善文
大阪大学国際医工情報センター栄養ディバイス未来医工学共同研究部門特任教授

 

輸液中の空気、人体に入ってしまったらどうなるの?

 

計算上では、輸液ルート内がすべて空気だったとしても、安全限界は超えません。
ただ、患者さんの不安に対応することは重要です。

 

〈目次〉

輸液ルートへの空気の混入

静脈ルートに空気が混入する場合としては、

 

  • 輸液バッグを交換するとき
  • ドリップチャンバー内で、空気と輸液が急に混ざって溶けるとき
  • 冷たい輸液が室温に戻るとき
  • 添加物を入れて溶解するために輸液を振って泡立てたりするとき

などがあります。

 

このなかでも通常は、輸液の温度が変わって、自然に輸液ラインの中に出てくる場合が多いとされています。輸液を作って冷蔵庫に保存しておいてから使用する場合などに、特に注意が必要です。

 

それでは、輸液ルート内に空気が入った場合、どれくらいまで大丈夫なのでしょうか?

 

まずは、実際の空気量を計算してみましょう。

 

輸液ルートの太さは、通常内径2.28mm(=0.228cm)のものが用いられています。

 

これを計算すると、この太さの輸液ルートの場合には、1cmあたり0.04mL(=0.114cm×0.114cm×3.14)となります。

 

すなわち、輸液ルートの1cmの長さに空気が入っていると、空気の量としては0.04mLが入っていることになります。したがって、例えばチューブの1~2cmの長さに空気が入っていても、実際の空気量は0.04~0.08mLに過ぎません(図1)。

 

図1輸液ルートの空気量

輸液ルートの空気量

 

経験上の安全限界は10mLぐらい

ただし、どれだけの量が体内に入ると問題になるのかは、明確なデータはありません。

 

ただ、これまでに報告された内容を検討すると、10mLぐらいが安全限界ということになると思われます。これ以上の空気が急速に血管内に入ると、肺塞栓という生命にかかわる状態に陥ります。

 

先に説明したように、輸液ルート1cmあたりの空気の量は0.04mLです。10cmでも0.4mLにすぎません。逆に言うと、10mLになるには、250cmにわたって空気が充満していなければなりません。通常の輸液ラインの長さは120cmです。全長にわたって空気が入っていて、これがすべて体内に入ったとしても、問題は起こらないことになります。

 

したがって、計算上は、輸液ルート内の空気は、ほとんど問題になりません。ただし、心臓にシャント(右心房と左心房の交通)があれば、の血管に空気がひっかかり、脳の空気塞栓、脳梗塞の原因になる危険性があることは知っておいてください。

 

患者さんへの具体的対応は?

そのため、患者さんに輸液ルート内の空気混入を指摘されても、「心臓に問題がない限り、多少の空気が入っても問題はありません」と答えればよいでしょう。

 

くわしい説明を求められたら、「10mLの空気が安全限界で、このルートであれば、1mぶんが入っても大丈夫です」と答えれば、納得していただけると思われます。

 

しかし、輸液ルート内に空気が入っている状態というのは、患者さんにとっても心配なものです。実際の対応として、気がつけば、そのつど空気を抜くように心がけることが重要です。

 

また、中心静脈ルートの場合には、インラインフィルターを組み込んでいれば、エアベントからルート内の空気は抜けて血管内に入らないので、さらに安全です。

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2017照林社
P.50~51「輸液中の空気、人体に入ってしまったらどうなるの?」

 

[出典] 『エキスパートナース』 2017年3月号/ 照林社

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