療養上の世話で大切な3つの義務

看護師さんにとって、医療事故や医療訴訟は決して他人事ではありません。
ここでは、医療事故を起こしてしまったときに看護師さんが知っておくべき医療に関する法律の知識を解説します。
第2話では、「入浴中に患者さんが熱傷で死亡してしまった事例」から学ぶ、「療養上の世話で大切な3つの義務」についてのお話です。

 

 

大磯義一郎、谷口かおり
(浜松医科大学医学部「医療法学」教室)

 

第1話では、『入浴中に熱傷で死亡してしまった事例』を紹介しましたが、どこにポイントがあったか覚えていますか?

 

説明義務や、安全への配慮が足りなかったのが問題でしたね。
これから入浴介助をする際は、患者さんの安全を必ず確認します!

 

その通りです。
入浴介助などの療養上の世話は、看護師の皆さんの業務のなかでも頻度の高いものです。
ここで、医療訴訟の争点にもなる3つの大切な義務を紹介しますので、覚えておいてください。

 

〈目次〉

 

入浴時に看護師が行う義務は3つ

入浴中に熱傷で死亡してしまった事例』について、医療訴訟の争点が理解できたところで、皆さんが日頃から行っている看護業務を思い返してみてください。今回、医療訴訟の争点になったのは図1の3点です。この3点を中心に、看護業務を振り返りましょう。

 

 

図1入浴に関する訴訟における3つの争点

入浴に関する訴訟における3つの争点

 

患者さんが安全に入浴するために看護師が行う義務はこれらの3点です。

 

療養上の世話として、患者さんの介助を付す義務

「療養上の世話」は、看護師が自らの判断で行うことができる看護業務です。したがって、どうして患者さんの入浴介助は付さなくてよいと判断したかが明らかでなければなりません。入院時の患者情報や転倒転落アセスメントシート、日常生活動作自立度などの評価ツール、カンファレンス時の記録などが判断の根拠となり、それに基づいて入院看護計画書(図2)が立案されます。

 

 

図2入院看護計画書(見本)

入院看護計画書(見本)

 

ポイントは、食事や入浴(清潔)などの項目と、患者さんと看護師さんの署名があることが重要です。
当院で使用されている書類を元に再現しましたが、各自の施設のものを参考にしてください。

 

患者さんのADL(日常生活動作;activities of daily living)の評価が適切に行われ、タイムリーに記録化される必要があります。各病院や施設によって、看護記録は電子カルテや紙ベースなど、書式はさまざまだと思いますが、「何を根拠に判断したか」を明らかにし、記録として残しておくことが重要であると考えられます。

 

memo一般公開されている転倒転落アセスメントシート

日本医師会が作成した『転落転倒防止マニュアル』がwebサイト上で一般公開されています。

 

患者さんが安全・安楽に入院・療養生活を送るための説明義務

入院時には、病棟内の説明や入院生活上の注意点などについて、オリエンテーションを行ったり、パンフレットを渡すなどをして説明をしていると思います。この際、看護師の説明義務として大切なことは、患者さんが説明をどれくらい理解しているかを確認することです。

 

特に、高齢の患者さんでは、自宅の使い慣れた浴室では入浴が自立していても、新しい環境の浴室では戸惑ってしまい、誤って使用してしまうこともあります。浴室設備の一般的な説明に加え、患者さんが入浴する際も、「使われたことはありますか?」「わからないことはないですか?」と声をかけ、患者さんの理解度を確認することが求められます。

 

入浴時の患者さんの状況に応じて必要な看視義務

高齢者や、歩行が不安定な患者さんの入浴中の事故や急変の可能性は常にありますが、常時看視していたからといって、それらがすべて防げるわけでもありません。

 

入浴の看視は高度なプライバシーにかかわり、患者さんの自立心や羞恥心を損ねる恐れもあるので慎重な判断が求められます。そのため、患者さんのADLや意識状態など総合的に判断し、記録化することが大切です。

 

看視義務は、患者さんの状況に応じては必要となります。その場合の看視の間隔は、患者さんに予測される危険を最小限にできるかが重要となると考えられます。

 

まとめ

看護師にとって、入浴だけでなく、排泄や移動の介助など、「療養上の世話」は日常的な看護業務ですが、行為一つ一つに適切な判断となる根拠が求められます。しかし、忙しい現場では、「いつもやってることだから大丈夫」と思い簡略化されがちです。

 

患者さんの状態は日々違いますし、変化に気づくことができるのが看護の専門性です。患者さんの状況に応じた判断や説明、確認が、安全・安楽な看護の提供であり、ひいては訴訟を防ぐことにもなると考えられます。

 

[次回]

第3話:Q&Aでわかる 「何かあればナースコール」では説明不足?

 

⇒『ナース×医療訴訟』の【総目次】を見る

 


[執筆者]
大磯義一郎
浜松医科大学医学部「医療法学」教室 教授
谷口かおり
浜松医科大学医学部「医療法学」教室 研究員

 


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