術前の剃毛は禁止?除毛をする場合、いつ、どこまで行う?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』より転載。

 

今回は「剃毛」に関するQ&Aです。

 

加藤裕子
市立岸和田市民病院看護局
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

剃毛は禁止? 除毛をする場合、いつ、どこまで行う?

 

剃毛は有害となるため行いません。除毛も手術の邪魔になる場合を除き、基本的には行いません。

 

〈目次〉

 

なぜ剃毛は有害?

皮脂腺など皮膚の深部には無数の常在菌が存在しており、消毒などでも完全に殺菌してしまうことは不可能です。カミソリによる剃毛は今まで手術前の儀式のように行われてきましたが、皮膚表面に多数の顕微鏡的切創をつくり、そこに常在菌が付着し増殖するため、かえって感染の危険性が高まってしまうことになります(図1)。

 

図1剃毛による皮膚損傷の例(写真提供:スリーエムヘルスケア株式会社)

剃毛による皮膚損傷の例

 

電気クリッパー除毛による皮膚表面の状態。

剃毛による皮膚損傷の例

 

剃毛による皮膚表面の状態。出血が認められる。

 

ある研究データでは、安全カミソリによる剃毛を行った患者のSSI(surgical site infection:手術部位感染)発生率が5.6%であったのに対し、剃毛を行わず脱毛剤で除毛または除毛をしない群の患者のSSI発生率は0.6%という結果が出ています。また、手術直前と手術前夜に行った場合では手術直前に行ったほうがSSI発生の頻度は低いという結果でした(1)。これは、カミソリによって傷ついた微細な創へ皮膚深部に常在している細菌が付着し、時間の経過とともに増殖するためです。

 

CDC(Centers for Disease Control and Prevention:アメリカ疫病予防管理センター)のガイドラインでも、患者の術前準備について、手術前夜の手術部位の剃毛はSSIの危険性を優位に増加させるため、「術前の除毛は切開部あるいは周囲の体毛が手術の邪魔になる場合を除き行わない(ⅠA) 」、また「除毛する場合はなるべく電気クリッパーを用いて術前に行う(ⅠA)」とされています。

 

用語解説カテゴリーIAとは?

カテゴリーⅠA とは、強く実行することを勧め られ、適切に計画された実験的、臨床的、あるいは 疫学的な研究に支持されているもの。

 

除毛はどのように行う?

CDCのガイドラインから考えると、手術前のカミソリによる剃毛は絶対に行ってはならず、体毛が手術創に入り込むなど邪魔になる場合に限り、手術直前に電気クリッパーによる除毛を行うことが望ましいということです(図2)。除毛剤に関しては人によって過敏症を起こし、皮膚トラブルを起こす危険性もあるため、使用は望ましくありません。

 

図2除毛には電気クリッパーを使用(写真提供:スリーエムヘルスケア株式会社)

除毛には電気クリッパーを使用

 

3MTM サージカルクリッパー プロフェッショナル

除毛には電気クリッパーを使用

 

カミソリによる剃毛は、 微小な皮膚損傷が細菌 繁殖の原因となる。

 

除毛の処置をどこで行うかはそれぞれの施設の状況によりますが、できる限り直前に行うことが望ましく、病棟で手術室への出棟直前に行うか、もしくは手術室で実施するのがよいと考えます。

 

手術直前に手術室で除毛するのは大変ですよね。

 

前日に病棟で行うルーチンの除毛は、必要のないところまで除毛してしまう可能性があります。何より手術直前に行うことでSSI のリスクを下げるエビデンス があるので、やはり直前にすべきです。

 

マニキュアは基本的に除去してもらいます。 パルスオキシメータのセンサーに影響を与える可能性があること、循環動態を見るうえでの色を確認でき ないからです。
最近はジェルネイルなど除去に時間がかかるものが 多いので、外来で説明をしています。

 


[文献]

  • (1)Seropian R, Reynolds BM. Wound infections after preoperative depilatory versus razor preparation. Am J Sung 1971; 121: 251-254.
  • (2)Department of Health and Human Services Centers for Disease Control and Prevention:Guideline for the Prevention of Surgical Site Infection, 1999.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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