術前の入浴・シャワー浴はSSI(手術部位感染)を減らす?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』より転載。

 

今回は「術前の入浴・シャワー浴とSSIの関係」に関するQ&Aです。

 

森至弘
医療法人医誠会医誠会病院消化器外科医長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

術前の入浴・シャワー浴はSSI(手術部位感染)に関連する?

 

術前の入浴・シャワー浴は推奨されていますが、SSIの減少につながるかははっきりしていません。

 

〈目次〉

 

SSIとは?

SSIとはsurgical site infectionの略で、手術部位感染のことです。術後30日以内に発症する感染と定義されています。

 

SSIには3種類あり、表層SSI(いわゆる創の感染、キズが膿むということ)、深層SSI(筋膜・筋層の感染)、臓器・体腔SSI(腹腔内の膿瘍など)に分類されます。このうち、本項で主に関連するのは表層SSIです。

 

術前の入浴・シャワーは行ったほうがいい?

「手術医療の実践ガイドライン」(日本手術医学会/1)では術前の準備として、「術前のシャワー浴:手術前夜または当日朝のシャワー浴や入浴が勧められる。可能ならば抗菌石けんを使用することが推奨される。」とされています。

 

術前の入浴・シャワーを行ったほうがいい理由は?

「手術医療の実践ガイドライン」にはその理由として、「皮膚切開部の消毒効果を高めるには、可能な限り洗浄により汚れや異物を除去し、物理的にきれいにしておくことが重要である。Cruseらは手術前夜にクロルヘキシジングルコン酸塩などの生体消毒薬を用いて入浴またはシャワー浴することにより、皮膚常在の細菌数を減少させることができたと報告している。高齢者糖尿病患者、ステロイド使用中の患者など感染に対する抵抗力の低下している症例や入院日数が長くて感染の懸念される症例では、このような入浴やシャワー浴が特に有効と考えられる。

 

ただし手術前の入浴またはシャワー浴は皮膚に付着する細菌数を減らすことは証明されているが、実際にSSIの低下に寄与するかどうかは明らかにされていない。」と記載されています(1)。

 

SSIは入浴・シャワー浴で減少するの?

前述のとおり、入浴・シャワー浴でSSIが減少するかどうかははっきりしません。しかし、皮膚に垢などの有機物が付着していると、消毒薬の効果が弱くなってしまいます。皮膚の細菌を減らす以外にも、消毒薬にしっかり効果を発揮してもらう意味も含めて、術前には入浴・シャワー浴で皮膚をきれいにしたほうがよいでしょう。

 


 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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