抗凝固薬を中止していないことが手術当日に判明。手術が延期になってしまった!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんの抗凝固薬を中止していないことが手術当日に判明し、そのせいで手術が延期になってしまった場合について解説します。

山下 美由紀

社会医療法人 河北医療財団 河北総合病院 看護部
手術看護認定看護師

 

 

患者の抗凝固薬を中止していないことが手術当日に判明し、そのせいで手術が延期になってしまい焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

抗凝固薬や抗血小板薬といった抗血栓薬を内服する必要のある疾患や既往の多い高齢者には注意して服薬情報を確認することが重要です。
また、関連各部署で情報共有することも抗血栓薬の中止忘れによる麻酔法の変更や手術延期の防止につながります。

 

POINT
  • 手術を受ける患者さんが術前に内服している薬がある場合、継続あるいは中止の指示確認が重要です。
    特に抗凝固薬や抗血小板薬を内服している患者さんでは、術中に大量出血や止血困難な状況に陥る可能性があるため、内服中止が可能な場合は休薬する必要があります。

 

 

起こった状況

症例

椎間板ヘルニアのAさん。痛みが強くなり、手術を受けることが決まりました。
看護師は手術の決まったAさんに入院までの生活や手術に関するオリエンテーションを行いました。
現在飲んでいる薬についても聞きましたが、「たくさん飲んでいて詳しくはわからない」と曖昧に返されてしまったため、入院当日は内服薬とお薬手帳を持参するように伝えました。
看護師は家族にも聞いてみようと連絡しましたが、つながりません。
他の部署も確認するだろうと思い、そのままにしてしまいました。
その後、手術当日になって家族の話から抗凝固薬を飲んでいることが発覚し、手術が延期になってしまいました。

 

 

どうしてそうなった?

抗血栓薬が休薬されないまま手術が行われると、大量出血や止血困難な状況に陥る可能性があります。
急を要さない場合は休薬期間(表1、2)を設けてから手術となるため、延期になります。

 

表1抗血小板作用をもつ薬剤の休薬の目安

抗血小板作用をもつ薬剤の休薬の目安をまとめた表

廣瀬宗孝:【術前】抗血栓薬の中止忘れ.オペナーシング 2021;36(10):40-43.より引用

 

表2ワルファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)の休薬期間と拮抗薬

ワルファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)の休薬期間と拮抗薬をまとめた表

廣瀬宗孝:【術前】抗血栓薬の中止忘れ.オペナーシング 2021;36(10):40-43.より引用

 

多剤内服している患者さんや長期間内服している患者さん、また高齢者や認知症の患者さんでは、本人や家族もなぜ飲んでいるのか思い出せなくなったり忘れたりすることがあります。
また、複数の部署で共有される情報は、ときに「他部署が確認しているはず」といった思い込みや不注意によって漏れてしまうことがあります。

 

 

どう切り抜ける?

1 患者さんの既往歴からアセスメントする

心筋梗塞や脳梗塞、深部静脈血栓症、心房細動などの既往がある患者さんは抗血栓薬を内服している可能性があります。
また、心臓の弁置換術や人工血管置換術を受けた患者さんも注意が必要です。
中には、若年時に心臓手術を受け、長期にわたって抗血栓薬を内服している患者さんもいます。
高齢者の中には既往が多い方も多く、情報収集は大変ですが、見過ごさないような注意が必要です。

 

2 術前指示を確認する

術前に抗血栓薬を中止することで、周術期の出血量を抑えることができます。
一方で、中止することで血栓が生じてしまうリスクのある患者さんは抗血栓薬を継続したまま手術することもあるため、術前指示をしっかり確認することが重要です。

 

休薬期間が短い場合や緊急手術の場合では、ビタミンKや静注用ヒトプロトロンビン、新鮮凍結血漿の準備が必要(表2)となることもあるため、執刀医や麻酔科医に確認することが大切です。

 

3 患者さんや家族以外にも情報を共有できる仕組みの構築

地域医療連携や外来、病棟、薬剤部、手術チームなど各部署における多職種連携が重要です。
病院と地域の保険薬局が連携したことによって周術期患者の安全な薬物療法管理につながった報告も見られるようになりました。
医療情報を共有する仕組みが構築され、広く運用されることが期待されます。

 

 

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引用文献 閉じる

1) 廣瀬宗孝:【術前】抗血栓薬の中止忘れ.オペナーシング 2021;36(10):40-43.

参考文献 閉じる

1) 石原慎之,玉木宏樹,望月優里,他:術前患者に対する内服薬剤管理の病院・保険薬局との連携システムの確立.日本臨床麻酔学会誌 2022;42(7):555-562.

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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