点滴を手動で調整していたら、予定よりかなり残ってしまった!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんに点滴を手動で調整していたら、予定よりかなり残ってしまった場合について解説します。

石田 恵充佳

東京医科歯科大学病院 看護部、感染症看護専門看護師
集中ケア認定看護師

 

 

患者に点滴を手動で調整していたら、予定よりかなり残ってしまい、その様子に焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

手動での輸液管理時は、①薬剤、②患者さん、③ルートや点滴針などの要因が点滴速度に影響します。
手動での速度調節時に滴下に変動があるときは、輸液ポンプの使用や点滴針の留置部位の変更(差し替え)を検討すること、何よりも速度が変動する前提で頻繁な観察が重要となります。

 

POINT
  • 輸液製剤の投与速度は薬剤ごとに規定され、それに基づいて医師の指示が出されます。
    投与時に点滴速度を適切に管理することは、薬剤の効果や副作用の観点からも重要な管理項目となります。
    手動で滴下調節する際は、速度変動を前提とした観察や対策が必要です。

 

 

起こった状況

症例

Aさん、60歳代、男性。
慢性腎不全(透析3回/週)、左腕にシャントあり、右利き。

 

Aさんは急性胆嚢炎のため緊急入院し、入院後から輸液療法と抗菌薬投与が開始されました。
Aさんは左腕にシャントがあるため、右腕肘正中から3横指下側に点滴針が留置され、手動で速度を調整し、輸液投与がされていました。
利き腕でもあるため体動により輸液速度が変化しました。
Aさんには極力腕を曲げずに過ごしていただくよう伝え協力を得ていました。
消灯後、輸液が止まったりすることもよく見られたため、そのつどAさんの腕を伸ばして対処していましたが、輸液更新時に予定よりも輸液量が多く、医師の指示通りに輸液交換ができませんでした。

 

 

どうしてそうなった?

Aさんは、左腕にシャントがあるため、利き手である右腕に点滴針が留置されていました。
加えて、関節に近い部分に留置されていたことで、体動や輸液と患者さんとの高低差などにより手動での速度調節に変動が出たことが考えられます。
これにより、予定よりも輸液が多く残ってしまい、医師の指示通りでの輸液管理ができなかったと考えられます。

 

 

どう切り抜ける?

1 手動での速度調節時に滴下に変動があるときは輸液ポンプを使用する

この症例のように、担当看護師はAさんの輸液管理の際に、手動での速度調節では投与量の変動があることに気づいています。
速度の変動を小さくするために、Aさんに「腕を伸ばして過ごすこと」への協力を依頼していますが、これではAさんは体動が制限され、輸液療法による苦痛が増すことが考えられます。

 

点滴速度に影響を与える要因には、①薬剤(輸液の比重、表面張力、粘度の物理的要因)1、②患者さん(日常生活動作などの動き)、③ルートや点滴針(配合禁忌薬剤投与による結晶化、針自体の太さ、血栓による針内腔狭小化)が考えられます。
今回のように、手動での速度調整時に滴下変動があり、医師の指示通りの輸液管理ができない場合は、患者さんに体動制限を強いるのではなく、輸液ポンプを利用した輸液速度管理の検討が必要となります。

 

2 関節近くに点滴針が留置され滴下変動があるときは、入れ直しを検討する

肘や手背など関節部位に点滴針が留置されている場合(図1)は、関節可動による血管内腔の変化や、点滴針の屈曲や閉塞により輸液速度が変動する場合があります。

 

図1関節部位の点滴針留置例

関節部位の点滴針留置例を示した写真

手首を尺側方向を維持していないと滴下しない。

 

さらに、点滴針が屈曲すると針先が圧迫され血管外漏出につながる場合があります。
関節部位でないところや、患者さんの体動により滴下速度が少ない部位へ点滴針を入れ直すことを検討しましょう。

 

3 頻繁に滴下速度を観察する

輸液ポンプ使用時に、輸液が血管外に漏出しても加圧により輸液が投与され続けます。
血管外漏出時は、痛みを伴うだけでなく、例えば、がん薬物療法薬の中には血管外に漏れると、皮膚に潰瘍病変や壊死を起こす薬剤もあるため、輸液ポンプを使用せずに手動調節を選択する薬剤もあります。

 

また、抗菌薬は濃度依存型と時間依存型、または両方に分けられ、指示通りの速度で投与されない場合は薬物の血中濃度が上昇できず、抗菌薬の作用が出現しにくくなる可能性もあります。
さらに、安全域が狭く厳密な投与管理が重要となる薬剤もあるため、手動の滴下調節により輸液管理をする場合は、速度が変化する可能性が高いことを前提に、滴下状態などを頻繁に観察することが重要になります(図2)。

 

図2滴下せずに側管点滴ラインへ流入している例

滴下せずに側管点滴ラインへ流入している例を示した写真

 

 

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引用・参考文献 閉じる

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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