オノアクト®を自然滴下で投与したところ、他の看護師に輸液ポンプまたはシリンジポンプで投与する薬剤だと指摘された!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、オノアクトⓇを自然滴下で投与したところ、他の看護師に輸液ポンプまたはシリンジポンプで投与する薬剤だと指摘された場合について解説します。
ヴェクソンインターナショナル株式会社 看護企画部
クリティカルケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
薬剤投与時は6Rなどの誤薬防止の手順に沿ったダブルチェックを正しく、ていねいに実施します。
特に正しい目的(right purpose)においては、患者さんの病態生理や薬剤の知識を深めることで致死的なダメージを回避できる可能性が高くなります。
- オノアクトⓇは心臓のβ1受容体を遮断して心拍数などを抑え、頻脈性不整脈を改善する薬です。
50mgと150mgの2種類のバイアルがあります。
バイアル内の粉末状の薬剤を生理食塩液で溶解して投与します。
通常オノアクトⓇ50mgを3バイアル(150mg)または150mgを1バイアルのいずれかを生理食塩液50mLに溶解し、2~6mL/時間で投与する薬剤です。
起こった状況
症例
80歳代、女性。既往に慢性心不全があり、誤嚥性肺炎で入院となっていました。
発熱が持続しており、頻脈性の不整脈を繰り返していました。
誤嚥性肺炎に対してはセフトリアキソン(ロセフィンⓇ)0.5gを1日2回投与していました。
経験5年目のA看護師が当日の受け持ちでした。
主治医から新しい点滴の指示が出ていました。指示の内容は以下の通りです。
【指示内容】
オノアクトⓇ150mg 1バイアル
生理食塩液50mLで溶解
点滴持続投与
A看護師は指示内容のオノアクトⓇ150mg 1バイアルと生理食塩液50mLをB看護師と一緒にダブルチェックをしましたが、お互いどのような目的で実施するのかを認識していませんでした。
A看護師は指示にあるオノアクトⓇ150mg 1バイアルを生理食塩液50mLで溶解し、輸液セットを接続し点滴を自然滴下で投与開始したところで、C看護師がオノアクトⓇの投与開始に気がつき投与が中止されました。
どうしてそうなった?
1 薬剤の認識不足
A看護師は誤嚥性肺炎で入院している患者さんであることは理解していました。
しかし、頻脈性の不整脈に対してオノアクトⓇが開始となることを理解しておらず、オノアクトⓇが新たに開始となる抗生剤と認識していました。
投与されていた抗生剤であるロセフィンⓇとオノアクトⓇが同じようなバイアル形状で粉末の薬剤を溶解して使用することが誤った認識の背景にあったようです(図1)。
図1オノアクトⓇ点滴静注用150mgとロセフィンⓇ

両方ともバイアルで粉末状の薬剤を溶解して用いる点では共通している。
2 曖昧な指示
指示書には点滴持続投与の指示がありましたが、投与速度指示の記載がありませんでした。
投与速度の指示は別の指示書に記載されていました。
A看護師は別の指示書の記載を確認せずに抗生剤と認識していたため自然滴下による点滴投与を行っています。
3 正しいダブルチェックが行われていない
薬剤投与における誤薬は患者さんに致死的なダメージとなり得るため、6Rなど誤薬防止の手順に沿った薬剤投与が重要です。
6Rとは、正しい患者(right patient)、正しい薬(right drug)、正しい目的(right purpose)、正しい用量(right dose)、正しい用法(経路)(right route)、正しい時間(right time)です。
6Rと具体的な例を表1に示します。
表16Rと具体例

A看護師とB看護師が6つの項目を照らし合わせながら実施していれば、正しい目的(right purpose)と正しい時間(right time)について主治医などに確認する機会となります。
どう切り抜ける?
繰り返しますが、薬剤投与における誤薬は患者さんに致死的なダメージとなり得ます。
日々の業務で忙しいときこそ、ダブルチェックや6Rをていねい、かつ何度でも実施する必要があります。
また、基本的で重要なことになりますが、患者さんに投与する薬剤はどのような目的で投与する薬剤なのか理解して投与することが原則となります。
誤嚥性肺炎で入院となっている高齢患者さんが、発熱の影響もあり頻脈性の不整脈を繰り返しています。
頻脈性の不整脈が持続すれば既往にある慢性心不全が悪化し、危機的状況に進行します。
そこで、心臓のβ1受容体を遮断する作用があり、心拍数などを抑えることで、頻脈性不整脈を改善するオノアクトⓇが開始となっています。
ピンチを切り抜けるには、追い詰められた苦しい状況にさせないための学習や正しいチェックが重要です。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



