人工呼吸器装着中の搬送途中に酸素ボンベが空になった!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、人工呼吸器装着中の搬送途中に酸素ボンベが空になった場合について解説します。
千葉県こども病院
集中ケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
搬送途中に、「酸素ボンベがなくなった!」というようなことが起こらないようにするためには、「酸素ボンベの残量は?」「酸素投与量は?」「搬送や移乗にかかる時間は?」といった情報を集め、ボンベの使用可能時間を計算し、安全に患者さんの搬送が行えるための準備を事前にすることが必要です。
- 入院中の患者さんを、検査や手術、転棟などにより、搬送することは日常的に行われています。
搬送中に起こりうるトラブルの1つに、酸素ボンベの残量がなくなり、患者さんに酸素投与ができなくなるということがあります。
そのような事態を防ぐためには十分な準備が必要です。
起こった状況
症例
患者Aさん。手術翌日に挿管管理のままCT撮影のため、3階の病棟から1階のCT室へ搬送することになりました。
受け持ち看護師は搬送の準備をして、医師がジャクソンリースを用いて搬送を行いました。
CT撮影後、CT室から病棟へ搬送している途中、ジャクソンリースが膨らまなくなり、AさんのSpO2が低下し始めました。
看護師はどうしたらよいかわからず頭が真っ白になってしまいました。
どうしてそうなった?
酸素ボンベ残量の確認不足により、搬送に必要な酸素量が足りなくなってしまった状態です。
人工呼吸器管理の患者さんの搬送中、酸素投与ができなくなるということは、患者さんが危機的状況に陥る危険性がとても高いということです。
どう切り抜ける?
1 搬送前に酸素ボンベの残量を確認する
酸素ボンベは圧力計の表示から、使用可能時間を算出できます。
搬送にかかる時間を考え、搬送中に酸素ボンベの残量が不足しないかどうか搬送前に確認します。
1)ボンベの種類
ボンベの種類と充填量・重量等を(表1)にまとめました。
一般的に3.4L容器のボンベが使用されています。
表1ボンベの種類

2)酸素ボンベの充填量の計算方法
ボンベの充填量(L)=ボンベの容積(L)×充填圧力(MPa)×10
ボンベ3.4L容器では、3.4L×14.7MPa×10=499.8で、約500Lとなります。
フローメーターにはMPa表記とkgf/cm2表記の2種類があります。
3)MPaとkgf/cm2の違いは?
これらはともに圧力の単位です。
1999年10月1日から、医療ガスの圧力単位がkgf/cm2(キログラム毎平方センチメートル)から、国際単位系のPa(パスカル)に変更されました。
圧力計にはMPa(メガパスカル)が使用されています(図1)。
図1酸素ボンベのメーター

4)酸素ボンベの使用可能時間について
酸素ボンベの使用可能時間は、ボンベ内の充填残圧と使用する酸素流量により変わります。
実際に使用する際には、ボンベを空にせず安全に使用できるように、「安全係数(8割)」を考慮し、使用可能時間を計算することが推奨されています。
5)ボンベの使用可能時間(分)の計算方法
①まず、ボンベにどれくらいの酸素が残っているか、使用可能量を計算します
・フローメーターがMPa表記の場合
ボンベの容積(L)×圧力計の指示値(MPa)×10×0.8(安全係数)=使用可能量(L)
・フローメーターがkg/cm2表記の場合
ボンベの容積(L)×圧力計の指示値(kg/cm2)×0.8(安全係数)=使用可能量(L)
②使用可能量を実際に使用する酸素投与量で割り、使用可能時間を計算します
使用可能量(L)÷使用投与量(L/分)=使用可能時間(分)
(例)酸素ボンベの容積3.4L、ボンベ残量10MPa、使用投与量8L/分のときの使用可能時間は?
3.4L×10MPa×10×0.8(安全係数)÷8L/分=34分
8L/分投与が必要なときは34分使用可能であることがわかりました。
注意点として、搬送にかかる時間だけを概算するのではなく、移動先での移乗の時間など、酸素投与が必要な時間を考慮しておく必要があります。
搬送して検査をして…と考えると、意外と時間がかかることがわかると思います。
検査中も酸素ボンベを使用してしまうと、すぐに残量がなくなってしまうので、移動時のみ酸素ボンベを使用して、中央配管がある場所では中央配管から酸素供給を行います。
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1) 道又元裕:これならわかる!呼吸器の看護ケア.ナツメ社,東京,2021:57.
2) 日本医療ガス学会ホームページ:医療ガス研修会.
3) 道又元裕:新 人工呼吸ケアのすべてがわかる本.照林社,東京,2014.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



