Rapid Response System|ICU看護実践マニュアル
『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「Rapid Response System」について解説します。
北里大学病院 集中治療センター
RST・RRT室係長
- ①起動要素:求心路、②対応要素:遠心路、③システム改善要素、④指揮調整要素の4つの要素がうまく稼働しないとシステムとしては成り立たず、最大の目的(予期せぬ死亡を減らす、FTRを減少する)を達成することはできない。
RRSの背景
院外の心肺停止に関する蘇生率は、市民教育の成果とAEDの普及により大幅に向上した(Iwami et al., 2009)とされている。しかし、院内における心肺停止後の蘇生率の向上は、長年の間、改善に苦慮していた(Buist et al., 1999)。
また、院内で心肺停止となった患者の50〜60%で8時間前からバイタルサインの変化があることや、数時間から数日間(中央値:6時間)前に何らかの兆候があることと、その兆候を示すことは、予後不良(死亡率80%)と関連していることが1990年代にすでに明らかになっている(Buist et al., 1999, Franklin C., 1994)。
『心肺停止となってからでは蘇生できない』ということ、『急変には予兆がある』ということから、「予兆の段階で専門家が介入すれば、心肺停止を防げるのではないか」という仮定の元、1990年代にRRSの概念や構造が生まれた(Daryl A. Jones, M.D.et al.,2011)。
本邦においては、2008年に医療安全全国共同行動目標となり、2017年には、日本医療機能評価機構の病院機能評価の項目に組み込まれ、医療安全管理推進団体等のバックアップを受けて、現在、多くの施設がRRSを導入するに至っている。
しかし、本邦では学会などでの発表数は増えているが、具体的な導入施設数や成熟度などの実態は明らかになっていない。
RRSの構造
RRS(Rapid Response System)には、①起動要素:求心路(Afferent limb/component)、②対応要素:遠心路(Efferent limb/component)、③システム改善要素(Patient safety/process improvement limb/component)、④指揮調整要素(Governance/administrative structure limb/component)の4つの重要な要素がある。
この4つの要素のすべてがうまく稼働しないとシステムとしては成り立たず、最大の目的(予期せぬ死亡を減らす、FTRを減少する)を達成することはできないとされている(Jones, DeVita & Bellomo, 2011;Price, Cuthbertson, Cairns, et al. 2007;安宅・藤谷・新井他, 2017)。
RRSの構造を図1に示す。
図1RRSの構造
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(Price et al., 2007を参考に作成)
起動要素:求心路
病棟看護師や担当科医師など、患者の傍にいる全メディカルスタッフが該当者である。
要するに、患者の傍にいる者が、患者の状態の悪化に気づき、要請基準に該当していることを確認しRRTを要請するということが要請側の要素である(求心路という)。
「要請基準」は、施設ごとにバリエーションがあり、大きく分けると2種類ある。
1つは、「シングルパラメーター」と評される基準であり、バイタルサインそれぞれ数値の上限下限に加え、主観的に判断される状態(努力呼吸、傾眠、乏尿や「医療者の懸念」など)が含まれているのが特徴である。
その中の1つでも該当すればRRTを要請することとなる(表1)。
表1要請基準(北里大学病院編since2011)
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もう一つは、EWS(Early warning system)と称される基準であり、バイタルサインそれぞれを1〜3のスコアに変換し、その合計点でRRTを要請する。
EWSは、観察者自身が計算するものもあれば、電子カルテに入力すると自動的に計算されるものもある(表2)。
表2National early warning score(NEWS)

また、計算値を見て要請するかどうかを最終判断する施設もあれば、電子カルテに表現された計算値によって自動的にRRTに連絡される施設もある。
この要請基準の種類や要請の形式は、悪化している兆候があっても要請が遅れたり、要請されないことを解決する方法として、各国・各施設今もなお試行錯誤されている。
対応要素:遠心路
要請された側のチーム(Rapid Response Team:RRT)の要素である。
このチームには、RRTの他に医師主導のMET(Medical Emergency Team)もある。
対応側の要素は、そのチームだけでなく、チームが中心となり、他の専門の診療科につなげる役割もある。
そのチームを中心に、要請のあった患者に対して、要請した医療者とともに、患者の評価と初期対応を行う。
重篤な患者の安定化と管理に必要なスキルを備えたスタッフと必要な資機材からなる。
対応することで、患者の悪化を食い止め、安楽を提供し、医療安全を目標とする。
システム改善要素
発生した事案をデータ集積し、将来同様の事案を回避できるよう、管理、ケアの改善に役立つようフィードバックする役割がある。
指揮調整要素
このシステムは単に要請と対応で構成されているのではなく、施設として、システムを管理し、効果を検証することや、システム上に問題が生じたら、解決策を提示すること、教育の管理も含まれているとされる。
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ICU領域の看護師の関与
RRSのなかにおいて、ICU看護師の関与するところは、院内の急変後の管理をする場所である。まさにICUでの患者の治療とケアに関することだと考える。
また、RRTのチームの構成にICU看護師が関与することが多いが、ICUの看護師全員がその役割を果たせるとは考えにくい。
前述したとおり、RRSの概念や要請された状態に応じて、対応チームとしての役割はとても大きい。
ゆえに、本稿前半部分の概念や仕組みについては、熟知したうえで対応する必要があり、対応した事例では、入院病名とは違う新たな病態出現時であっても、初期評価、初期対応、追加の治療、管理方針の決定などをスムーズに実施していく能力が求められる。
病棟における診療科や病棟看護師のチームの意見を聞きながら、ときとして第三者としての客観的な視点から新たな提案をする。
また、管理方針の検討においては、この後の適正な管理場所(ICUやHCUなど)を提案しその先を調整する。
さらに、RRTコールの中には、終末期医療に関連している状態での症例もあり、それらの決定に診療科や病棟看護師たちと意見交換しながら、病院としての1つの見解を出しつつ、患者本人や家族への意思決定の支援へつなげ、緩和医療への橋渡しをするタイミングになることもある。
RRTは、ただコールを受け、状態を確認するだけではなく、患者の安全を中心に考え、医療の仕組みを知ったうえで、院内リソースの要として調整する役割もある。
したがって、ICUのケアができればその役割を果たせるということにはならず、管理的な視点や対人関係能力が必要となるのはいうまでもない。
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最後に
1995年に初めてのRRSに関連する論文が出され、このシステムの歴史はまだ浅く、とくに本邦においては、導入してもまだ結果が得られずに試行錯誤している状態である。
RRSの目的を考えれば、結果が出ないからといって、止める理由にはならず、努力をし続ける必要があることは疑いの余地はない。
試行錯誤をするプロセスは施設ごと異なり、目標に向かい課題を見出し、改善するというとことこそが、文化をかたち作っていくこととと思っている。
RRSがうまく導入できていないと感じている施設のRRTメンバーには、ぜひ、諦めたり落胆せずに、同じ思いでいるRRTメンバーが隣の施設にいるということに勇気をもらい、一つひとつ課題を解決する階段を登ってほしいと切に願っている。
1) Buist, M. D., Jarmolowski, E., Burton, P. R., Bernard, S. A., Waxman, B. P., & Anderson, J. (1999). Recognising clinical instability in hospital patients before cardiac arrest or unplanned admission to intensive care. The Medical Journal of Australia, 171(1), 22-25.
2) Daryl A. Jones, M. D., M.B., B.S., Michael A. DeVita, M.D., & Rinaldo Bellomo, M.D., M.B., B.S. (2011). Rapid-Response Teams. N Engl J Med, 365(July 14), 139-146. 10.1056/NEJMra0910926
3) Franklin C., M. J. (1994). Developing strategies to prevent inhospital cardiac arrest: analyzing responses of physicians and nurses in the hours before the event. Crit Care Med, 22(2), 244-247.
4) Iwami, T., Nichol, G., Hiraide, A., Hayashi, Y., Nishiuchi, T., Kajino, K., Morita, H., Yukioka, H., Ikeuchi, H., Sugimoto, H., Nonogi, H., & Kawamura, T. (2009). Continuous improvements in 'chain of survival' increased survival after out-of-hospital cardiac arrests: a large-scale population-based study. Circulation, 119(5), 728-734. 10.1161/CIRCULATIONAHA.108.802058
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版


