ICUでよく使う薬
『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「ICUでよく使う薬」について解説します。
市立青梅総合医療センター 薬剤師
- 入室する患者は、病態の変化に応じて薬剤の種類・投与量・投与方法が頻繁に変更されるため、薬物治療も複雑になり薬の効果、副作用、相互作用などを適切に評価していくことが必要となる。
鎮痛薬
フェンタニルクエン酸塩
機序:オピオイドμ受容体作動薬
特徴:血管拡張作用はモルヒネより少ないため、循環動態が不安定な症例にも使用しやすい。
副作用:呼吸抑制;用量依存的に生じる。ナロキソンによる受容体拮抗を検討する。
血圧低下 / 徐脈;昇圧剤、アトロピン投与を検討する。
投与量:成人ICU患者における疼痛の緩和1)
・間欠投与:0.35~0.5μg/kgを0.5~1時間ごと
・持続投与:0.7~10μg/kg/時
肝・腎機能障害を有する患者への投与:減量の必要はない。
モルヒネ塩酸塩水和物
機序:オピオイドμ、δ、κ受容体作動薬
特徴:ヒスタミン遊離作用による血管拡張作用を有するため、循環動態不安定な症例では血圧が低下することがある。
副作用:呼吸抑制;ナロキソンによる受容体拮抗を検討する。
血圧低下 / 徐脈;昇圧剤、アトロピン投与を検討する。
投与量:成人ICU患者における疼痛の緩和1)
・間欠投与:0.2~0.6mgを1~2時間ごと
・持続投与:2~30mg/時
肝・腎機能障害を有する患者への投与:活性代謝物が蓄積して作用遷延の恐れがあるため、使用は推奨されない。
ブプレノルフィン塩酸塩(レペタン®)
機序:オピオイドμ受容体部分作動薬およびκ受容体拮抗薬
特徴:作用時間が長く、作用が発現した後はナロキソンで容易に拮抗されないため呼吸抑制に注意。麻薬拮抗作用があることから、麻薬を使用することが予想される患者への投与は推奨されない。
副作用:呼吸抑制;ナロキソンによる受容体拮抗を検討
投与量:術後鎮痛
間欠投与:0.2~0.3mg(4~6μg/kg)を筋肉内投与、必要に応じて6~8時間ごとに反復投与する。
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麻薬拮抗薬
ナロキソン塩酸塩
機序:オピオイド受容体においてオピオイドの作用を競合的に拮抗する。
特徴:主にオピオイドによる呼吸抑制の治療に用いられる。オピオイドの作用が遷延している場合、ナロキソンの作用消失後に 呼吸抑制が再発する場合がある。
副作用:急性オピオイド離脱;高血圧、頻脈、心室性不整脈、肺水腫など
投与量:1回0.2mgを静脈内投与、効果不十分の場合、さらに2~3分間隔で0.2mgを1~2回追加投与する。
肝・腎機能障害を有する患者への投与:減量の必要はない。
鎮静薬
ミダゾラム(ドルミカム®)
機序:ベンゾジアゼピン受容体作動薬
禁忌:急性閉塞隅角緑内障、重症筋無力症
特徴:前方向性の健忘作用を有する。ポリ塩化ビニル製の輸液バッグ、ルートは使用しない。
副作用:呼吸抑制;フルマゼニル(アネキセート®)投与を検討する(0.2mg、無効時は0.1mgずつ増量し最大2mgまで)。
投与量:集中治療における人工呼吸中の鎮静1)
・初回投与量:0.03mg/kgを1分以上かけて、必要に応じて0.03mg/kgを少なくとも5分以上開けて追加投与する。
・維持投与量:0.03~0.06mg/kg/時で開始、適宜増減する(推奨範囲:0.03~0.18mg/kg/時)。
肝・腎機能障害を有する患者への投与:減量・慎重なモニタリングが必要。腎機能障害患者は代謝の遷延、肝機能障害患者はクリアランス低下による消失半減期延長のため血中濃度が上昇する。
プロポフォール(ディプリバン®)
機序:大脳皮質・脳幹GABAA受容体作動薬
特徴:脂肪乳剤を溶媒としているため汚染による感染症などに注意が必要であり、12時間を超えて投与する場合は新たな注射器、チューブ類および本剤を使用する。
副作用:血圧低下;用量依存的に全身の血管拡張が生じ血圧低下を起こす。腎機能に問題がなければミダゾラムも考慮する。
プロポフォール注入症候群;横紋筋融解、代謝性アシドーシス、心不全、不整脈などの合併症を起こす。必要に応じてクレアチンキナーゼ、トリグリセリド、コレステロール、リパーゼ、アミラーゼなどのモニタリングを行う。
投与量:
・開始投与量:0.3mg/kg/時
・維持投与量:0.3~3mg/kg/時
肝・腎機能障害を有する患者への投与:減量の必要はない
デクスメデトミジン塩酸塩(プレセデックス®)
機序:脳幹青斑核α2A受容体作動薬、脊髄後角中枢性α2A受容体にも作用し弱い鎮痛作用を有する。
特徴:刺激により容易に覚醒し鎮静時は自然睡眠に近い筋膜を示す。深鎮静が必要な場合には高用量が必要となるため他の鎮静薬との併用が望ましい。
副作用:血圧低下;中枢性α2A受容体を介した交感神経系の抑制により生じる。減量または中止を考慮、必要に応じて昇圧剤を使用する。
徐脈;中枢性α2A受容体を介した交感神経系の抑制により生じる。減量または中止を考慮する。
投与量:集中治療における人工呼吸中および離脱後の鎮静
・初回投与量:6μg/kg/時(負荷投与は、血圧低下や徐脈の発現度が上昇するため推奨されていない)2) 3)
・維持投与量:0.2~0.7μg/時
肝・腎機能障害を有する患者への投与:重度肝機能障害患者では鎮静作用・副作用が起こりやすい。
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筋弛緩薬
ロクロニウム臭化物(エスラックス®)
機序:神経筋接合部ニコチン性アセチルコリン受容体拮抗薬
投与量:
・初回投与量:0.6mg/kg
・維持投与量:7μg/kg/分
肝・腎機能障害を有する患者への投与:肝・胆道系疾患では排泄が遅れるため作用が遷延することがある。
拮抗薬
スガマデクスナトリウム(ブリディオン®)
機序:ロクロニウムを直接包接して薬理作用を失活させる。
投与量:
・浅い筋弛緩状態:1回2mg/kg
・深い筋弛緩状態:1回4mg/kg
ロクロニウム臭化物の挿管用量投与直後、緊急に筋弛緩状態からの回復を必要とする場合:ロクロニウム臭化物投与3分後を目安に1回16mg/kg
肝・腎機能障害を有する患者への投与:CCr<30mL/分で排泄遅延による効果延長の報告があるため腎機能障害患者へは慎重投与3)
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循環作動薬
ノルアドレナリン(ノルアドレナリン)
機序・特徴:α1受容体作用が中心の薬剤、末梢血管収縮による昇圧作用を有する。β1刺激作用もあるため、心拍出量の増加を示す。
投与量:
維持投与量:0.03~0.3μg/kg/分(心原性ショック)、0.05μg/kg/分(敗血症性ショック)、0.1~0.5μg/kg/分(心停止後の治療)3)
肝・腎機能障害を有する患者への投与:減量の必要はない。
ドパミン塩酸塩(イノバン®)
機序:用量に応じてドパミン受容体やα、βアドレナリン受容体へ作用する。
投与量:
・1~3μg/kg/分;血管平滑筋ドパミン受容体作用のため血管拡張作用により臓器血流が増加。腎血流増加による利尿作用も示す。
・3~10μg/kg/分;β1受容体刺激作用により、心収縮力と心拍数が増加する。
・10~20μg/kg/分;α受容体作用が優位で、血管収縮作用により血圧が上昇する。さらに高用量ではα受容体刺激による血管収縮がドパミン受容体刺激による血管拡張よりも優位になり、臓器血流が低下する。
肝・腎機能障害を有する患者への投与:減量の必要はない。
ドブタミン(ドブポン®、ドブトレックス®)
特徴:β1受容体刺激作用による心収縮力の増強および心拍数の増加により心拍出量を増加させる。β2作用による末梢血管拡張により、血圧が低下することがある。
投与量:1~20μg/kg/分
肝・腎機能障害を有する患者への投与:減量の必要はない。
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抗不整脈薬
アミオダロン塩酸塩(アンカロン®)
機序:心筋Kチャネル抑制による活動電位の延長により不応期を延長し、心室刺激の継続を遮断。ほかにNaチャネル遮断作用、Caチャネル遮断作用も有する。
副作用:甲状腺機能障害;分子内にヨードを含み長期投与により発現する場合がある。
間質性肺炎;長期投与により発現する場合がある。
相互作用:ワルファリン;アミオダロンはCYP2C9阻害作用を有するためワルファリンの血中濃度が上昇し、プロトロンビン時間が延長する。
投与量:
・初回急速投与:125mgを5%ブドウ糖液100mLに加え、600mL/時で10分間投与。
・負荷投与:750mgを5%ブドウ糖液500mLに加え、33mL/時で6時間投与。
・維持投与:17mL/時の速度で合計42時間投与。
*沈殿が生じるため、生理食塩水での溶解は避ける。投与濃度は2.5mg/mLを超えないこと。
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抗けいれん薬
ジアゼパム(ホリゾン®、セルシン®)
機序:大脳皮質・脳幹GABA受容体作動薬
禁忌:急性閉塞隅角緑内障、重症筋無力症
副作用:呼吸抑制;フルマゼニル(アネキセート®)投与を検討する(0.2mg、無効時は0.1mgずつ増量し最大2mgまで)。
投与量:10mgを緩徐に静注する(5mg/分)。数分経過してもけいれんが続いている場合は、さらに追加で10mg投与。
*水溶性注射剤との混合でジアゼパムが析出し混濁が生じるため、希釈せず単独投与。
肝・腎機能障害を有する患者への投与:慎重投与
ホスフェニトインナトリウム(ホストイン®)
機序:神経細胞膜電位依存性Naチャネル抑制作用
特徴:フェニトインの水溶性プロドラッグ
投与量:
・初回投与:22.5mg/kg、投与速度は3mg/kg/分か150mg/分のいずれか低いほうを超えない。
・維持投与:5~7.5mg/kg/日、投与速度は1mg/kg/分か75mg/分のいずれか低いほうを超えない。
肝・腎機能障害を有する患者への投与:維持用量は低用量から開始を考慮する。
レベチラセタム(イーケプラ®)
機序:神経終末のシナプス小胞タンパク質2Aへの結合、N型Ca2+チャネル阻害、細胞内Ca2+の遊離抑制
投与量:1000mg/日、1日2回に分け、1回量を15分かけて静脈内投与を行う。
肝・腎機能障害を有する患者への投与:腎機能障害患者へは減量を考慮する。
1 )日本集中治療医学会 J-PAD ガイドライン作成委員会 : 日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン . 日集中医誌, 2014, 21( 5 ):539-579
2 )大野博司:ICU/CCU の薬の考え方、使い方 ver.2,中外医薬社,2016
3 )JSEPTIC 薬剤師部会:病棟・ICU・ER で使えるクリティカルケア薬 Essense&Practice. 今井徹・前田幹広編著,じほう,2021
4 )Devlin JW et al,集中治療室における成人患者の痛み,不穏/ 鎮静,せん妄,不動,睡眠障害の予防および管理のための臨床 ガ イ ド ラ イ ン the Society of Critical Care Medicine and Wolters Kluwer Health,2018
5 )佐倉考信:鎮痛薬総論 薬理作用,使用方法,使用上の注意点, INTENSIVIST,2021,13( 4 ):633~642
6 )道宗明:筋弛緩薬総論 薬理作用と特徴,拮抗薬,作用遷延,モニタリング方法, INTENSIVIST,2021,13( 4 ):643~650
7 )日本呼吸療法医学会:人工呼吸中の鎮静のためのガイドライン 2007 http://square.umin.ac.jp/jrcm/contents/guide/page03.html
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版


