消化器系（94問）　状況設定問題

第102回午前96問

次の文を読み問題3に答えよ。
Aさん（40歳、男性）。入院時体重65kg。既往歴に特記すべきことはなく、全身状態は良好である。胃癌のため胃全摘出術を受けた。術中の出血量は450mLで輸血はされなかった。術後1日、体温37.5℃、呼吸数24/分、脈拍120/分、血圧162/90mmHg。Hb14.8g/dL。経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO₂〉92％（酸素吸入3L/分）。尿量50mL/時。創部のドレーンからは少量の淡血性排液がある。硬膜外持続鎮痛法が行われているが、創痛が強いため呼吸が浅く、離床はできない。

問題3
下痢の回数は減り、摂食も良好で、術後3週で退院が決定した。Aさんへの退院指導で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.　炭水化物を中心にした食事を勧める。
2.　下痢は1か月程度でおさまると説明する。
3.　食事は分割して少量ずつ摂取するよう勧める。
4.　食後に冷汗が出たら水分を摂(と)るよう説明する。
5.　ビタミンB₁₂が吸収されにくくなると説明する。

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解答・解説

1.　炭水化物を中心にした食事を勧める。: 胃を全摘しているので、食べられる量が限られている。体重を維持するためには蛋白質や脂肪を含んだ食事をすることが大切である。炭水化物を中心とした食事とすると、それらの栄養を摂取できなくなる可能性があるため、逆に炭水化物を減らして蛋白質や脂肪を摂る必要がある。
2.　下痢は1か月程度でおさまると説明する。: 下痢は消化酵素の分泌減少や消化機能の低下によって起こっている。術後の消化機能の回復には個人差があるが、多くの場合3か月～1年くらいかかるといわれている。よって下痢は1か月程度でおさまると説明するのは適切ではない。
3.　食事は分割して少量ずつ摂取するよう勧める。: 胃全摘出術を受けているため、食後はダンピング症候群を起こす危険がある。ダンピング症候群を予防するために、1回の食事摂取量を少なくし、分割食とすることは重要である。
4.　食後に冷汗が出たら水分を摂(と)るよう説明する。: 胃全摘出術を受けているため、食後に出た冷汗は後期ダンピング症候群であると考えられる。後期ダンピング症候群は急速に濃い食物が小腸に流れ込むことで、インスリンが大量分泌され低血糖症状が起こる。水分を摂取するのではなく、ブドウ糖を摂取することで症状が改善する。
5.　ビタミンB₁₂が吸収されにくくなると説明する。: 胃全摘出術を受けているため、胃壁細胞から分泌される内因子が減少することになる。ビタミンB₁₂の吸収にはこの内因子が不可欠であり、そのため内因子が減少していることはビタミンB₁₂が吸収されにくくなることを意味する。