医療廃棄物の行方|いまさら聞けない!ナースの常識【15】

毎日の業務の中で触れているけど、『いまさら聞けない』ことってありませんか?

知ってるつもりで実は説明できない基礎知識や、ちょっと気になるけど調べるほどでもないな、なんてこと。

そんな看護師の素朴な疑問を、元看護師ライターがこっそり教えます。

 


 

Vol.15 医療廃棄物の行方

ニュースで時折目にする医療廃棄物の不法投棄問題。あってはならないことだが、なぜこのようなことが起こるのだろう。

医療機関で働いていると、看護師は毎日のように医療廃棄物を生み出している。しかし医療現場で破棄するものが全て「医療廃棄物」ではなく、中には一般廃棄物として処理して良いものもある。医療廃棄物と一般廃棄物では回収後の処分の仕方と処分にかかる費用が違うのだが、その分別はきちんと出来ているだろうか。

 

医療廃棄物とは

医療廃棄物とは「医療関係機関等で医療行為に伴って排出される廃棄物」の略称。この中でも、患者の血液や体液が付着したもの・使用済の針やシリンジは、産業廃棄物として扱われ、特別な方法で処分しなければならない。一方、紙屑、ディスポ製品の入っていた袋や箱やパッケージフィルム、血液等が付着していない包帯やガーゼなどは一般廃棄物として処分して良いことになっているのだ。

 

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図1 医療廃棄物の分類

 

医療廃棄物の分別は正しく

医療現場では、バイオハザードマークが書かれた白く四角いケースに医療廃棄物を破棄する。血液や体液が付着していそうであれば何でもそこへ捨ててしまいがちだが、実は紙おむつに関しては別の扱いが必要。紙おむつだけは、一類・二類などの感染症の種類によって、感染性廃棄物としなくて良いものもある。

医療廃棄物の処理は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」という法律で決まっている。管轄しているのは環境省だ。中でも血液等が付着したいわゆる医療廃棄物、感染性のある廃棄物は、中間処理を経て最終処分(埋立)されることになっている。医療機関はいつ、どこで、誰が、どう運搬や処理を行ったかを全て把握する義務があり、最終処分に至るまでの費用をまとめて負担している。この費用はかなり高額になるが、医療廃棄物を排出する側として、最後まで責任を持つ義務があるのだ。

 

医療廃棄物の処理にかかるコストと看護師の責任

感染性のある産業廃棄物の処理にかかるコストを試算してみよう。とある処理業者の価格表では、20Lポリ容器(バイオハザードマークが付いている白いアレの小さいもの)の処理料金が3,000円以上。例えば病棟が10ある病院で、これが3日で一杯になると仮定すると、1か月分2000Lの処理料金は最低でも、

(1病棟10個×10病棟)×3,000円=30万円 になる。

これに対して、医療関係機関から排出されても、一般廃棄物であれば市区町村の定めに従って事業系ごみとして処理ができるので、例えば45Lで数百円程度しかかからない。仮に上記と同じ量を処理する場合、かかる費用は2~3万円だけだ。

 

医療施設全体から出る産業廃棄物を考えると、病棟だけでなく外来や手術室、検査室などから出る分、さらに運搬費用なども必要となり、年間では膨大な金額をゴミの処分だけに支払っていることになる。

これは結局、医療関係機関の収益から支払われるのだが、廃棄物の処理料金までは患者に請求できない。医療機関からみれば、管理も煩雑な上に膨大な費用を捻出しなくてはいけない。これが、医療廃棄物の不法投棄が無くならない原因の1つだろう。

 

医療器具や薬剤は使ったら終わりではなく、正しく処理される必要がある。何故なら、廃棄物による感染・汚染から、重大な問題が起こる可能性が大きいからだ。つまり医療廃棄物を出す当事者である看護師自身も、なんでもポイポイ捨てるのではなく、感染性のあるものとそうでないものはしっかり分別する、無駄なゴミは出さない、なるべく小さくまとめる、薄い紙の箱は破いて細かくするなど、ちょっとした気遣いも必要だ。

 

【岡部美由紀】

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