最終更新日 2023/07/18

脊髄空洞症

脊髄空洞症とは・・・

脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう、syringomyelia)とは、脊髄の命令を全身に伝える神経線維の束)の中に、脳脊髄液(脳や脊髄を保護する液体)が異常に多く溜まることで、脊髄が空洞状となる疾患のことである。脊髄空洞症は頚髄や上側の胸髄に多い。


【症状】
頚髄の脊髄空洞症では、肩から腕、手指にかけて感覚障害が起きる。

 

初期には片側上肢の感覚障害から始まり、徐々に両側上肢の感覚障害、後に運動障害が出現する。さらに進行すると下肢にも感覚・運動障害が生じる。


脊髄空洞症で生じる感覚障害の特徴として、温痛覚神経(温度と痛みを感じる)が障害される。

 

熱いものに手や腕が触れても気づかず、知らないうちに火傷することもある。一方、深部覚神経(振動などを感じる)は比較的保たれる(解離性感覚障害)。

 

【原因】
脳脊髄液の循環が滞ることで起きる。原因疾患として、キアリ奇形(きありきけい、Chiari malformation)と呼ばれる、小脳が脊髄の方へ落ち込む先天性の疾患が代表的である。

 

また、脊髄外傷や脊髄腫瘍、脳脊髄神経の癒着を起こす疾患なども原因となる。

 

【検査・診断】
脊髄のMRI検査で、脊髄内のT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号を認める。
信号の示す場所や大きさ(長さ)、信号強度によって、脊髄空洞症の原因疾患を推定することができる。

 

【治療法】    
無症状であれば治療は必要なく、定期的な画像検査で経過観察する。
症状がある場合は、治療介入を要する。


根本治療は手術となるが、原因となる疾患がある場合にはその治療を優先する。
手術により症状の悪化は止められることが多いが、効果が不十分な場合に薬物療法で対症療法を行う。

 

(1)手術療法
全身麻酔下で脊髄の空洞を縮小させる手術として以下の2種類がある。
・大後頭孔拡大術(大後頭孔部の脳脊髄液の流れをよくする)
・空洞短絡術(脊髄空洞内にチューブを挿入し、空洞内に溜まった脳脊髄液をほかの場所に流す)

 

(2)薬物療法
主に対症療法である。痛みやしびれなどといった神経症状を軽減させる目的で薬物療法が行われる。

 

 

【引用・参考文献】
1)安田宗義.脊髄空洞症.日本脊髄外科学会.(2023年6月閲覧)

2)井上祐一ほか.脊髄空洞症のMRI.Spinal Surgery.1990,4,13-17.(2023年6月閲覧)
 

執筆: 寺本昇生

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター・救急部 副医長

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