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2019年02月14日

新人ナースが悩む「インシデントレポート」|わかりにくい書き方の添削例付き

新人ナースがぶつかる壁の一つである「インシデントレポート」

書く必要があるのはどんなケースか、どのように書けばよいのかなど、悩みや疑問はありませんか?

インシデントレポートの基本的な考え方や書く際の注意点などについて、やさしく解説します。

 

【執筆:前原 恵(足利赤十字病院医療安全推進室看護係長)】

 

 

 

医療現場で間違い、失敗が起こりやすい理由

皆さんは日常生活の中で、聞き間違え、取り間違え、見間違え、やり忘れなどの失敗をしたことはありませんか?

 

私は恥ずかしながら何度もあります。皆さんも1つや2つ心当たりがあるのではないでしょうか?

 

人間は失敗や間違いを起こしやすい特性を持ち、人間であるが故にしてしまう失敗や間違いがたくさんあると言われています。このような失敗や間違いは、日常生活の中だけではなく当然病院内でも起こります。

 

医療現場で間違いや失敗が起こりやすい訳は下記のような理由があります。

 

  • 人間が失敗や間違いを起こしやすい特性をもっているということ
  • 看護業務の多くは人の手に頼らざるを得ないこと
  • 失敗や間違いを誘いやすい環境に身を置いて仕事をしていること

 

しかし、病院で日常生活と同じように間違いが起こっていては、患者さんは安心して医療を受けることはできません。

 

そこで、病院ではルールを決めて、チェック体制を強化し、時には機械(システム)を使って、人間のエラー(ヒューマンエラー)を減らし、安全な医療を提供できるような取り組みを進めています。

 

その一方で、当然ながら医療はすべての業務を機械に任せることはできません。その業務の多くは人の手に頼らざるを得ない状況なのです。さらに、私たちは幾つもの業務を同時にこなさなければならない多重課題の状態で勤務しています。

 

 

たとえば、ある患者さんの清拭中や処置中に、点滴終了のナースコールや検査出しの連絡を受ける。内服薬を確認中にトイレ介助のコールが鳴る…遂行している業務を中断され、そこに新たな業務が加わる。時間に追われ、一つの業務に集中することが難しい環境で仕事をしています。

 

この状況をみると、新人でもベテランでもその状況に変わりありません。もちろん経験が浅いことから起こしてしまう失敗や間違いはありますが、ベテランだから、医師だから、失敗や間違いをしないというわけではないのです。

 

 

何のためにインシデントレポートを書くの?

皆さんはインシデントレポートと聞くと、暗い気持ちになるのではないでしょうか?

 

自分の失敗や間違いを報告しなければならず、反省文を書かされていると感じるでしょう。私も新人のころは、夜も寝られないくらい落ち込んだことを思い出します。

 

しかし、先にも述べましたが、人間は誰でも間違いを犯す生き物なのです。どんなに気を付けていても起きてしまう失敗や間違いもあります。ただし、間違っても仕方がないと開き直れと言っているわけではありません。ここで大切なことは、同じ間違いを繰り返さないことです。

 

そう、そこで活躍するツールこそがインシデントレポートです。

 

インシデントレポートは反省文や始末書ではありません。起きてしまったインシデントの原因を突き止め、再発防止策をとるための大切な資源になります。皆さんが報告するインシデントレポートがきっかけで院内のルールやシステムが変わることだってあるのです。

 

 

誰がいつインシデントレポートを書くの?

皆さんはインシデントレポートを作成する必要があるのは、患者さんに対して間違いや失敗をしてしまった時だけと思っていませんか?

 

実はそうではありません。当事者(インシデントを起こした人)でなくても、間違いや失敗を発見した場合も作成します。

 

そしてもう一つ、患者さんに実施される前に発見された事例(患者影響度レベル0の患者さんに直接影響がなかったヒヤリハット事例)に関してもレポートが作成されます。

 

 

インシデントレポートはどう書けばよいの?

では、実際に何をどのように書けばよいのでしょうか。

 

病院により、そのフォーマットに違いはありますが、基本は変わりありません。「インシデントの概要」はもちろん、「当事者の経験年数」「患者情報」「インシデントの種類」「患者影響度」「起こった背景」などが主なものです。

 

その中でも、「インシデントの概要」は文章を通してその内容を端的に伝えなければならず、何を書いたらいいのかと悩んでしまうのではないでしょうか。

 

ここで大切なことは、起こった事実だけを正確に書くことです。自分が何を本来すべきで、何をどのように失敗、間違ってしまったのかを記載します。言い訳や分析は必要ありません。必要なのは「いつ、どこで、誰に、何が起こったのか」という事実です。

 

 

インシデントレポート作成時の注意点

当院では年間2,500件近いインシデントレポートの報告があります。

 

その中には、記載内容に不要な情報が多くて理解するのに時間がかかるものや、必要な情報が不足していて状況が把握できないものなどがあり、書き手によってさまざまです。

 

そこで、幾つかのよくある「インシデントの概要」がわかりにくい例を紹介していきますので、今後の参考にしてみてください。修正前の赤字部分が問題箇所で、修正後の青字部分が書き換えた箇所です。

 

 

添削例1:反省や言い訳が含まれている

反省や言い訳は不要です。インシデントの事実のみを記載しましょう。また、分析事項は、「インシデントの概要」ではなく、「起こった背景」など別に記載する欄を設けている施設が多くあります。

 

修正前

○月○日、朝の申し送り終了後、他の患者のドレーン排液や検査出しがあり気持ちが焦っていた。申し送り前に留置針を用意したが、針の色を勘違いしていて手術では使用しない針を準備した。針に間違いはないと思い込んでいたので、挿入する前にも確認をしなかった。点滴の針は1回の穿刺で挿入することができた。・・・・・。(中略)・・・・手術室の看護師に手術では使用しない針が入っていることを指摘され間違いに気が付いた。

 

修正後

○月○日10時ごろ、手術のため左前腕に末梢留置針を挿入した。20Gの留置針を挿入するところ22Gの留置針を挿入してしまった。手術室の看護師に申し送りの際、22Gが挿入されていると指摘され間違いに気が付いた。20G針はピンクの外筒だが、青色と勘違いして22Gを準備していた。

 

 

添削例2:推測による記載になっている

発見したままの状況でなく、推測での記載がされています。見ていないことは記載せず、発見した状況を見たまま記載することが大切です。転倒の場面を見ていないのであれば、転倒したのか、転落したのか、気分が悪く横になったのかはわからないからです。転倒の場面を見たのであれば、転倒したと記載しても間違いではありません。

 

修正前

○月○日10時ごろ、物音がして部屋に行くと、ベッドの横で転倒している患者を発見する。

 

修正後

○月○日10時ごろ、物音がして部屋に行くと、ベッドの右側でドアに頭を向けた状態で仰向けに床に横になっているところを発見する。

 

 

添削例3:本来は何をすべきで何が起こったかが明確に記載されていない

状況が物語のように記載されていますが、余計な情報の記載は不要です。本来は何をすべきで何が起こったのかを明確に記載することが大切です。

 

修正前

◯月○日14時ごろに転科転床の患者を看護師2名で迎えに行き、その病棟の看護師より患者が緊急手術後であることや酸素量の確認などを行い、患者家族を病棟に案内する。患者移送時にシリンジポンプがつながっていることに気が付くが、持続で行っていると思い確認はしなかった。病棟到着後バイタルサイン測定を行った。夜勤看護師が18時のバイタルサイン測定時にシーツが濡れていることに気が付き、ルートを確認するとシリンジポンプの接続が外れていた。

 

修正後

◯月○日14時ごろに転床してきた患者の、シリンジポンプのルート接続確認を怠り、薬剤が投与できていない時間(どのくらいの時間か不明)が発生した。転床時からルートの接続確認をしなかった。夜勤看護師が18時のバイタルサイン測定時にシーツが濡れていることに気が付き、ルートを確認するとシリンジポンプの接続が外れていた。

 

 

添削例4:インシデント・アクシデントの顛末がわからない

起こってしまったインシデント・アクシデントの結果、誰に報告し、どのように対応したのか、そして患者さんがとうなったのかを記載すると、さらにわかりやすいレポートになります。特に患者さんに大きな影響を及ばす可能性の高いインシデントにおいては重要になります。

 

修正前

◯月◯日12時ごろ、患者Aに施行する予定だった食前のインシュリン注射2単位を間違って患者Bに施行してしまった。実施前に患者確認を行わなかった。

 

修正後

◯月◯日12時ごろ、患者Aに施行する予定だった食前のインシュリン注射2単位を間違って患者Bに施行してしまった。実施前に患者確認を行わなかった。すぐに主治医に報告し、2時間後に血糖測定を行うことと、低血糖症状が出現したらすぐに報告するよう指示を受ける。その後、低血糖症状の出現はなかった。

 

 

まとめ:わかりやすいインシデントレポートの書き方

わかりやすいインシデントレポートの書き方のポイントは、下記の通りです。これらのポイントを踏まえたお手本をお示ししますので、参考にしてください。

 

1.反省や言い訳は記載しない

2.推測による記載はしない

3.事実を明確に記載する

4.インシデントの顛末を記載する

 

お手本

○月○日、6時ごろ、点滴交換を行った。患者が肘を曲げた状態であったが、入眠していたためそのまま点滴の速度合わせを行った。11時ごろ、バイタルサイン測定のために訪室すると点滴の残量がほとんどないことに気が付いた。12時間で実施予定の点滴(500mL)を2時間で滴下してしまった。すぐにバイタルサインを測定し主治医に報告した。バイタルサインに異常がなければそのまま様子をみるよう指示を受けた。患者の状態に変化は見られなかった。

 

 

患者影響度の「レベル0」って?

患者影響度「レベル0」はヒヤリハットとも言われています。誤った使われ方をしている場合が多いので、わかりやすいように、薬剤が患者さんに投与されるまでを例に考えてみましょう。

 

薬剤が投与されるまでのプロセスは、処方箋の作成(医師)→薬剤の調剤(薬剤師)→投薬の準備(薬剤師、看護師)→与薬(看護師)です。

 

看護師の皆さんは、与薬を担う最終実施者になりますので、当然、皆さんの失敗や間違いは患者さんに何らかの影響を与えてしまい、その失敗や間違いは明らかです。

 

しかし、与薬以外のプロセスの中でも失敗はたくさん起きています。医師が間違った薬剤を処方する、薬剤師が間違った量の薬剤を調剤する、看護師が違う患者の薬を準備する…薬剤が患者さんのもとへ届けられるまでにもたくさんの間違いや失敗が起こります。

 

図1薬剤が投与されるまでのプロセス

 

幸いなことに、これらの多くの間違いや失敗は、ダブルチェックや他の誰かによって発見され修正がされるので、多くの場合、患者さんに影響を与えることはありません。そのため、患者影響度は「レベル0」とされます。

 

しかし、間違いや失敗はすでに起こっていますよね。もし誰もその間違いや失敗に気が付かず、その工程が進められたならば、間違った薬剤が患者さんのもとへ届き、その影響は患者さんに及んでしまいます。

 

「レベル0」を報告するメリットは、手順や工程のどこに間違いや失敗が多いかが把握でき、患者さんに影響が及ぶ前にその部分に対する事故予防策を講じることができることです。先に悪い芽を摘んでおくイメージです。しかし、この「レベル0」の報告は患者さんに影響が及んだわけではないので、なかなか報告数が増加しないことも事実です。

 

インシデントレポートの作成が必要な事例とは、患者さんに影響を与えた事例だけではなく、失敗や間違いが発生したら報告の対象になると基本的には考えられています。

 

 

レベルの選び方はどうするの?

インシデントレポートを作成する際、そのインシデントに対しての患者影響度分類のレベル選択を行います。

 

日本で標準的に使用されているレベル分けは、その失敗や間違いが患者さんの身体にどのくらい影響を与えたかという基準で考えられています。基準はあくまでも患者さんです。

 

標準的なレベルは、レベル0~5までありますが、独自に自施設でレベル選択の基準を設けている場合もありますので、自施設の基準を確認しておくのが良いと思います。

 

転倒転落のインシデント報告で、レベル選択の間違いをよく見かけます。転倒転落の場合、すでに転倒転落した患者さんを発見した場合がほとんどですが、患者さんがけがをしなかったということでレベル0を選択するケースが多くあります。

 

転倒転落しそうな患者さんを支えて転倒転落を防いだというのであればレベル0になりますが、すでに転倒転落してしまった場合は、患者さんにけががなかったとしても何かしらの影響はありますのでレベル0にはなりません。
 

レベル選択の詳細を以下に示します。

 

表1インシデント影響度分類(国立大学病院医療安全管理協議会)

文献4)より

 

 

おわりに

いかがでしたでしょうか?インシデントレポートを作成することに少しは抵抗がなくなったでしょうか?


まだまだ、医療現場にはインシデントに対して個人を責めるような懲罰的な風習が残っていることも事実です。すべての医療現場でインシデントレポートを前向きなものとして捉え、積極的に提出をするようになるには、もう少し時間がかかりそうです。

 

しかし、失敗や間違いの隠ぺいをせず、再発防止のために正直にインシデントレポートを提出することは、患者安全につながり結果的に自分自身を守ることにもなります。まずは自分が失敗や間違いをしてしまったことを、真摯に受け止め、再発予防策を考えていくことが大切だと思います。

 

そして、インシデントを起こしてしまい心理的な負担を感じたら、一人で抱えず同期の看護師や話を聞いてくれる先輩に相談することもよいと思います。きっと同じ看護師ならば、その気持ちを理解してくれるのではないでしょうか。

 

 

[参考文献]

1)遠山信幸, 亀森康子.報告義務事項と対象を定めて医師からのインシデント報告を増やす.患者安全推進ジャーナル.33:24-27,2018.

2)相馬孝博.ねころんで読めるWHO患者安全カリキュラムガイド.メディカ出版,2015.

3)安藤恒三郎、矢野真、谷眞澄、本田茂樹.実践これからの医療安全学.ピラールプレス.2015.

4)国立大学附属病院長会議常置委員会医療安全管理体制担当校.国立大学附属病院における医療上の事故等の公表に関する指針(改訂版).2012

 


[執筆者]
前原恵
足利赤十字病院医療安全推進室看護係長

1998年、佐野市民病院に入職。2007年より足利赤十字病院に入職し、2015年より医療安全推進室勤務となり、現在に至る。


 

イラスト/宗本真里奈

編集/看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

 

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