縦隔腫瘍

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』より転載。
今回は縦隔腫瘍について解説します。

 

 

根布谷輝美
さいたま赤十字病院10F西病棟看護係長

 

 

縦隔腫瘍とは?

縦隔腫瘍とは、1つの疾患の名前ではなく、縦隔内部と臓器から発生した真性腫瘍と、囊腫を指します。

 

縦隔腫瘍は比較的まれな疾患ですが、近年増加傾向にあります。発生部位(図1)により表1のような種類に分けられます。わが国で最も多いのは胸腺腫で、全縦隔腫瘍の15~35%を占めます。

 

図1 縦隔の分類

図1

縦隔の分類

 

表1 縦隔腫瘍の種類

縦隔腫瘍の種類

 

胸腺腫は重症筋無力症(MG;myasthenia gravis)の合併が多くみられます。

 

 

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患者さんはどんな状態?

初期には無症状のことが多いです。検診などで偶然に発見されることがありますが、症状のないものの大半は良性であることが多いです。

 

症状としては、図2のようなものがあり、何らかの症状があり発見されるものは悪性の可能性が高いです。

 

図2 縦隔腫瘍の症状

縦隔腫瘍の症状

 

 

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どんな検査をして診断する?

X線、CT、MRI、エコーなどを組み合わせて、画像診断を行います(図3)。

 

図3 縦隔腫瘍のX線、CT

縦隔腫瘍のX線、CT

 

血液検査として特有の腫瘍マーカー(表2)やホルモンなどの確認を行います。

 

表2 縦隔腫瘍の腫瘍マーカー

縦隔腫瘍の腫瘍マーカー

★1 CA19-9(carbohydrate antigen 19-9)
★2 AFP(alpha-fetoprotein)
★3 β-HCG(beta-human chorionic gonadotropin)

 

治療方針を決定するうえで、生検(図4)、病理診断を行います。

 

図4 縦隔腫瘍の生検

縦隔腫瘍の生検

 

 

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どんな治療を行う?

腫瘍の種類により最適な治療方針は異なります。明らかに良性のものは、経過観察することもあります。

 

組織診断がつかない場合は、診断と治療を兼ねた手術となることもあります。

 

悪性腫瘍に対しては、手術療法放射線療法薬物療法のいずれかや、これらを組み合わせた治療が行われます。

 

切除が不可能な症例に対しては、放射線療法や薬物療法を行うことがあります。

 

 

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看護師は何に注意する?

縦隔腫瘍は通常、初期症状がほとんどありません。しかし、腫瘍が増大すると、周囲の臓器を圧迫することがあります。その場合の症状は、胸痛顔面浮腫(上大静脈の圧迫による)、呼吸困難咳嗽嚥下困難などさまざまです。症状がないことがほとんどですが、患者さんの訴えを聴き、全身の観察をすることが必要です。

 

呼吸や痛みにより、患者さんの不安は大きくなっていきます。精神的なケアとともに、症状に合わせ、疼痛緩和や食事の工夫を行います。

 

基本的には、手術療法、放射線療法、薬物療法に準ずる看護となります。

 

患者さんの訴えを傾聴し、また、それぞれの治療による副作用などに合わせて、症状の緩和に努めていく必要があります。

 

 

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縦隔腫瘍の看護の経過

縦隔腫瘍の看護の経過は以下のとおりです(表3-1表3-2表3-3表3)。

 

表3-1 縦隔腫瘍の看護の経過(発症から入院・診断)

縦隔腫瘍の看護の経過(発症から入院・診断)

 

表3-2 縦隔腫瘍の看護の経過(入院直後・急性期)

縦隔腫瘍の看護の経過(入院直後・急性期)

 

表3-3 縦隔腫瘍の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)

縦隔腫瘍の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)

 

表3 縦隔腫瘍の看護の経過

※横にスクロールしてご覧ください。

縦隔腫瘍の看護の経過

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

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