体外式膜型人工肺(ECMO)とは?

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』より転載。
今回は体外式膜型人工肺(ECMO)について解説します。

 

 

古厩智美
さいたま赤十字病院高度救命救急センターHCU看護係長
急性・重症患者看護専門看護師
齋藤美和
さいたま赤十字病院救命救急センター外来・HCU看護師長
集中ケア認定看護師・呼吸療法認定士

 

 

どんな治療?

ECMOとは、extracorporeal membrane oxygenation(体外式膜型人工肺)のことで、通常の人工呼吸器管理では対応できない重症呼吸不全や、心不全を合併する重症循環不全に対して用いられる簡易型の人工心肺です(表1)。ポンプを用いて脱血し、膜型人工肺でガス交換を行った後、患者さんへ返血するしくみになっています(図1)。

 

表1 人工心肺の種類

人工心肺の種類

★1 V-V(veno-venous)
★2 V-A(veno-arterial)
★3 ECPR(extracorporeal cardiopulmonary resuscitation)

 

図1 ECMOのしくみ

ECMOのしくみ

 

memo:PCPS

percutaneous cardiopulmonary support。経皮的心肺補助装置

 

ECMOの稼働中に肺をまったく使用せず肺組織を回復させることlung rest)が目的であり、ECMOで治療するわけではありません。人工呼吸による肺傷害を防ぎ、全身状態を安定させると同時に、呼吸不全の原因の診断と治療を行います。

 

ELSO(Extracorporeal Life Support Organization)のガイドライン1)に基づき、表2のような症例に使用されます。

 

表2 ECMOの適応

ECMOの適応

 

 

脱血と送血

脱血量が送血量を左右し、脱血量以上の送血量を得ることはできません。脱血量に影響を与える因子は、循環血漿量・血液の粘性患者さん側の因子)と、脱血カニューレ装置側の因子)です。

 

流量はカニューレの内径の4乗に比例し、長さに反比例するので、カニューレの内径が最も脱血量に影響を与えます。

 

十分な脱血を得るために大きな陰圧を必要とするため、脱血ラインでは空気の吸い込みに厳重な注意が必要です。

 

生体への影響

全身への酸素運搬が十分で混合静脈血酸素飽和度(SVO2)が75%であっても、各臓器の酸素需給バランスが保たれているとは限りません。体外循環の流量低下に伴う各臓器への酸素運搬量の低下は、臓器ごとに異なります。

 

脳血流および腎血流には自動調節能があり、他臓器よりも比較的酸素共有が維持され、減少はゆるやかです。一方、内臓血流や筋肉血流は、ポンプ流量の低下とともに減少します。

 

memo:混合静脈血酸素飽和度

SVO2(mixed venous oxygen saturation)。右心室から肺へと向かう肺動脈の酸素飽和度であり、心機能、呼吸機能、末梢循環の状態を反映し、酸素の需要と供給のバランスの指標となる。

 

 

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看護師は何に注意する?

合併症の予防として、1)患者さん側、2)患者さんとECMOの接続部、3)ECMO側について観察が必要です(図2)。

 

図2 ECMOの観察部位

ECMOの観察部位

 

患者さん側の観察

バイタルサイン

体温・脈拍・意識レベルなどのバイタルサインの推移を観察します。ピンポイントの数値で判断するのではなく、時間経過とともに変化をみていくことが大切です。

 

ECMO稼働中、カテーテル内の血液量は2L以上であり、そこから熱が奪われ、体温が低くなることがあります。体温測定を継続的に行うとともに、カテーテルを覆うなどして体温の保持に努めます。

 

合併症として、低酸素症による脳機能障害や、凝固異常による脳出血・脳梗塞が報告されていることから、意識レベル瞳孔径対光反射麻痺の有無なども観察する必要があります。

 

気道

経口挿管中であれば、チューブの位置が適切かどうかX線で確認します。

 

気管切開による管理であれば、合併症として、出血皮下気腫縦隔気腫気胸創感染、肉芽形成による気道閉塞に注意し、カニューレの固定のゆるみがないか注意して観察します。

 

呼吸

人工呼吸器管理中であれば通常の人工呼吸器管理と同様にケアを行います。基本的には、低い気道内圧、吸入酸素濃度(FIO2)とし、肺への傷害を最小限にします。患者さんの呼吸状態に応じて、筋弛緩薬を使用する場合もあります。炎症が落ち着いてきたら、患者さんを覚醒させ、自発呼吸をサポートする設定とします。このような管理中は、患者さんの呼吸の不快さが少ないモードの選択が基本となります。

 

ABCDEFバンドルを参照します。

 

循環

ECMO導入時は敗血症や高度な炎症状態により血管外への漏出が多くなるため、容量負荷が必要となります。全身状態とECMOの稼動状態に応じて水分バランスを調整します。

 

輸液負荷により循環動態が保持できなければ、昇圧薬や強心薬などの薬物療法を併用します。

 

利尿が保持できなければ、持続的血液濾過透析法(CHDF;continuous hemodiafiltration)を使用することもあります。

 

V-A ECMOの場合、送血カニューレ側で下肢末梢動脈の血流障害を起こす場合があります。皮膚の色調や皮膚温の変化、末梢動脈(足背動脈・内顆動脈)の触知を定期的に行います。触知が困難な場合は、ドプラで血流を確認します。

 

血栓塞栓症

回路内の血栓形成により、ECMOの酸素化能が維持できないことがあります。

 

回路内血栓が認められない場合でも、腎臓などの臓器に血栓が形成されることや、V-V ECMOで右総頸静脈へのカニュレーション(送血)の場合に、脳梗塞を発症する可能性も報告されています。

 

腸管虚血

発症早期では腹壁はやわらかく圧痛はないものの、腹部の痛みがあります。その後、壊死が発生することによって腹部圧痛筋性防御筋硬直および腸音消失とともに腹膜炎徴候が出現します。

 

便潜血陽性を呈することがあります。

 

 

出血(易出血性)

ECMO稼働中は抗凝固療法が必須となるため、易出血性血栓の両方を常に注意します。


回路内で血小板が凝集することで、血小板減少症を生じます。血小板は多くの場合減少するため、輸血が必要となることもあります。

 

回路内の血栓が凝固線溶系を亢進させることで、凝固異常を生じ、出血しやすくなります。鼻腔・口腔内・消化管からの出血、脳出血や後腹膜出血などのリスクが高くなるため、観察が必要となります。

 

外観の観察や、意識レベルおよび瞳孔径・対光反射などを含めたバイタルサインのほか、せん妄や鎮静レベルの推移を詳細に把握する必要があります。あわせて動脈血ガスを含めた血液検査値の推移も把握しておきます。

 

ECMOのカニューレの位置異常や、人工呼吸器関連肺損傷の有無を確認するため、検査画像の変化にも注意します。

 

腎機能障害

ECMO施行中は、生体の炎症反応が増幅するため、血管透過性が亢進し、臓器や組織に浮腫を生じたり、多核白血球が活性化されて組織障害を生じます。


これらの影響により、腎機能障害が生じることがあります。

 

ECMOの回路内で赤血球が破壊されることで溶血となり、血尿ヘモグロビン尿を呈し、それが持続することで腎障害を引き起こす可能性があるため、尿の色調観察も重要となります。

 

鎮静

疾患の状態に応じて鎮痛薬・鎮静薬の選択をチームでディスカッションし、鎮静レベルについて共有します。

 

低酸素を含めた全身状態悪化により、せん妄発症のリスクが高いため、モニタリングを継続し、せん妄の要因を除去し、発症時は期間短縮に努めます。

 

栄養状態・血糖値

過大侵襲によって代謝反応や異化亢進状態が急速に進展することで、栄養障害に陥ると、さらに病状が悪化します。また、栄養障害や感染症などによって腸内フローラの機能低下をきたし、全身状態の悪化をまねくという報告もあることから、栄養スクリーニングを行い、栄養アセスメントに基づいて早期に経腸栄養を開始することが推奨されています。


異化亢進中は高血糖になりやすいため、看護師は指示に基づく血糖コントロールを行うとともに、低血糖症状にも注意します。

 

早期リハビリテーション

ABCDEFバンドルに基づいて早期リハビリテーションを行い、廃用症候群やICU-AW(ICU関連筋力低下)を予防します。


体位変換も早期リハビリテーションの一貫です。マンパワーと安全性を考慮してチームで実施します。

 

栄養バランスや、活動と休息のバランスを考慮します。

 

 

患者さんとECMOの接続部の観察

カテーテル刺入部・各ルート

抗凝固薬を使用するため、刺入部から出血していないか観察します。

 

カテーテル刺入部・各ルートから感染を起こすと、敗血症を合併することがあり、その結果、多臓器不全を起こして治療に難渋するケースが多いといわれています。そのため、刺入部の清潔を保ち、発赤腫脹滲出液の有無を観察することが大切です。

 

カテーテルの屈曲・誤抜去の予防

カニューレ挿入部の固定は、医師によるカテーテル縫合や、テープによる固定を行うことが多いです。看護師は、ECMO稼働中に体位変換や清潔保持を行う際、カテーテルの屈曲や誤抜去に注意し、カニューレの固定や位置に問題がないか確認しましょう。体位変換後は、テープによる固定が、刺入部からの滲出液や血液によってゆるんでいないか確認し、X線などでカテーテルの位置がずれていないかを確認しましょう。

 

最近ではV-V ECMO稼働中でも、換気血流比を均一にして背側無気肺や酸素化を改善することを目的に、腹臥位療法を併用することがあります。この際にカテーテルが引っ張られることがあるため、多職種と連携し、十分な人員を動員して行い、誤抜去を防ぎましょう。

 

ECMO側の観察

血栓形成のリスクが高いため、回路内血栓が生じていないか観察します。
 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

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