人工呼吸器の換気モードとは?

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』より転載。
今回は人工呼吸器の換気モードについて解説します。

 

 

勅使河原育美
さいたま赤十字病院ICU看護師
呼吸療法認定士

 

 

換気モードとは、人工呼吸器が患者さんの肺にガスを送る方式・様式のことです。基本的な3つのモードとして、1)補助/調節換気(A/C;assist/control)、2)同期式間欠的強制換気(SIMV;synchronized intermittent mandatory ventilation)、3)持続的気道陽圧(CPAP;continuous positive airway pressure)をまずは理解しましょう(図1)。

 

 

図1 代表的な換気モードのイメージ

代表的な換気モードのイメージ

★1 CMV(controlled mechanical ventilation)
★2 AV(assist ventilation)

 

補助/調節換気(A/C)

調節換気(CMV)

患者さんの吸気努力があっても人工呼吸器は反応しないモードです(図2)。

 

図2 CMVの波形

CMVの波形

 

基本的には、麻酔で深い鎮静下にあるなど、自発呼吸のない患者さんに使用します。

 

送気開始のタイミングも終了のタイミングも人工呼吸器が決めます。

 

人工呼吸器は設定どおりにしか作動しないため、患者さんの呼吸を妨げてしまうこともあります(患者さんの呼気のときに、設定されたタイミングで送気が始まってしまい、息が吐ききれなくなるなど)。

 

補助換気(AV)

患者さんの吸気努力を感知して、ガスが送気されるモードです(図3)。

 

図3 AVの波形

AVの波形

 

患者さんの吸気努力を感知して送気されるため、換気は不規則になります。

 

送気終了のタイミングは人工呼吸器が決めます。

 

補助/調節換気(A/C)

前述の調節換気と補助換気が組み合わされたモードです。

 

患者さんの自発呼吸がなければ調節換気として機能し、自発呼吸を感知すれば、補助換気として機能します(図4)。

 

呼吸仕事量を減らすことを目的に設定されます。

 

図4 A/Cの波形

A/Cの波形

 

A/Cの観察ポイントは下記のとおりです。

 

  • 従圧式では、十分な換気量が得られているか、従量式では、気道内圧が上昇しすぎていないか観察する
  • 患者さんと人工呼吸器の換気のタイミングが合っているか、ファイティングを起こしていないか観察する
  • 自発呼吸が多いと、すべての自発呼吸に補助換気が入るため、過換気となり二酸化炭素が低下してしまう場合がある。呼吸性アルカローシスの状態となっていないか、必要時は医師に確認し、動脈血ガスやカプノメーターの値を測定する

 

memo:ファイティング

人工呼吸器の換気と患者さんの呼吸が合わず、ぶつかってしまうこと。

memo:動脈血ガス

電解質やpH、酸素化を評価するために必要な指標を得ることができる。

 

カプノメーターの例(図5)と呼気ガスのサンプリング方法(表1)は以下のとおりです。

 

図5 カプノメーターの例

カプノメーターの例

 

表1 呼気ガスのサンプリング方法

呼気ガスのサンプリング方法

 

カプノメーターの見方は図6のとおりです。

 

図6 カプノメーターの見方

カプノメーターの見方

 

★1 EtCO2(end tidal CO2

 

 

目次に戻る

同期式間欠的強制換気(SIMV)

調節換気と自発呼吸を組み合わせたモードです(図7)。

 

図7 SIMVの波形

SIMVの波形

 

患者さんの自発呼吸では十分な換気量が得られない場合に使用します。

 

回復過程にあるが、自発呼吸が十分でない患者さんに対応できます。

 

自発呼吸がみられない場合は、調節換気(A/C)として機能し、自発呼吸を感知すれば補助換気として機能します。

 

設定した換気回数以上に患者さんの呼吸数が多い場合は、自発呼吸が行われます。

 

自発呼吸をサポートしたい場合はPS(プレッシャーサポート)という機能をつけることができます(SIMV+PS)。

 

memo:PS

設定された圧で、患者さんの自発呼吸に合わせてガスを送り込み、吸気終了で圧を下げて自発呼吸をサポートする。

 

SIMVの観察ポイントは下記のとおりです。

 

  • 調節換気や補助換気の中に自発呼吸が入るため、分時換気量が自発呼吸に大きく影響される。分時換気量の低下がないか観察する
  • 自発呼吸が消失していても、調節換気が入るため、自発呼吸が消失しているのを発見するのが遅くなる場合がある。自発呼吸が消失した場合は、モードの変更が必要となる場合もあるので無呼吸アラームの設定に気をつける
  • 自発呼吸はPSを追加しなければ、患者さんの呼吸のみとなるため、自発呼吸の1回換気量は確保できているのか確認する

 

 

目次に戻る

持続的気道陽圧(CPAP)

自発呼吸のある患者さんには、換気補助を行わずPEEPのみかけておく(吸気、呼気問わず一定の陽圧をかける)モードです。


気道確保目的や、人工呼吸器離脱の前のウィーニングとしても使用されます。

 

memo:PEEP

呼気終了時に、肺がつぶれないように陽圧をかけること。呼気終了時に陽圧をかけることで肺胞の虚脱を防ぎ、次の換気が入りやすい状態を保つ。

CPAPの観察ポイントは下記のとおりです。

 

  • 患者さんの自発呼吸に頼っているため、しっかり換気量が確保されているか確認する
  • バックアップ換気(無呼吸となったことを人工呼吸器が感知し、設定された間、無呼吸が継続した場合は強制換気が入る)が適正に設定されているか確認する
  • 頻呼吸が継続する場合は薬剤の投与や、調節換気や補助換気が必要となる可能性がある。患者さんの吸気努力が増強していないか、呼吸補助筋の使用の有無や胸郭の上がりの程度を観察する

 

memo:ウィーニング

ウィーニングはもともと「乳離れ」を意味する。人工呼吸器のサポートを徐々に弱め、人工呼吸器離脱をめざして自発呼吸に移行する過程のこと。

 

 

目次に戻る

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら

 

> Amazonで見る  > 楽天で見る

 

 

[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

SNSシェア

看護知識トップへ