アルツハイマー型認知症(AD)

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』より転載。
今回はアルツハイマー型認知症(AD)の検査・治療・看護について解説します。

 

木戸佐知恵
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任
認知症看護認定看護師

小川和之
東海大学医学部付属八王子病院看護部主任
認知症看護認定看護師

 

 

アルツハイマー型認知症(AD)とは?

アルツハイマー型認知症(AD;Alzheimer’s disease)は、脳の変性や萎縮がゆっくりと進行する疾患です(図1)。

 

図1アルツハイマー型認知症の病態

図1アルツハイマー型認知症の病態

★1 海馬

 

初期段階より極端なもの忘れや、見当識障害が目立つようになります。次第に大脳の萎縮が進むと、身体機能も障害されていきます。

 

記憶障害などの症状が現れる何年も前から脳の萎縮は始まっているとされており、現在では効果的な予防や根本的治療が困難といわれています。しかし、治療薬を早期から投与することで、症状の進行がゆるやかになるという報告もあり、早期発見が非常に重要になってきます。

 

アルツハイマー型認知症は認知症のなかで最も多く、全体の約6割を占めています。

 

男性より女性のほうが多いといわれています。

 

 

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どんな検査をして診断する?

問診・診察によって記憶障害や見当識障害の状態を評価します。

 

画像検査では、CTMRIにおいて側頭葉海馬)を中心とした萎縮がみられます(図2)。また、SPECT、PETにおいて頭頂葉や側頭葉の機能低下がみられます。

 

図2アルツハイマー型認知症の画像診断

図2アルツハイマー型認知症の画像診断

 

 

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患者さんはどんな状態?

アルツハイマー型認知症の特徴的な症状として、記憶をつかさどる海馬の萎縮によって、記憶障害が出現します。記憶の中でも、数分前の記憶(短期記憶)の障害が顕著に表れ、物の置き場所がわからない、同じことを繰り返し話すなど、日々のエピソード記憶にまつわる症状が出現します。

 

意欲の低下、妄想、幻覚、興奮、行動異常などの行動・心理症状(BPSD)が現れることがあります。特に、財布や通帳を盗られたと訴える「物盗られ妄想」(図3)は、アルツハイマー型認知症の人の多くに認められます。

 

図3物盗られ妄想

図3物盗られ妄想

 

進行度ごとの症状

アルツハイマー型認知症はゆっくりと確実に進行していきます。

 

時間、場所などの誤認識(見当識障害)や、前頭葉の障害による遂行機能障害などが生じると、ADLに支障をきたすようになります。

 

中等度に進行すると、金銭管理や買い物などが困難となり、入浴・更衣などの日常動作にも援助が必要となってきます。

 

重度になると会話の内容の理解が難しく、発語も乏しくなります。家族の顔を見てもわからなくなるなど、日常生活のすべてにおいて援助が必要な状態となります。

 

アルツハイマー型認知症の進行度の評価尺度として、FASTの分類があります(図4)。

 

memo:FAST

Functional Assesement Staging。アルツハイマー型認知症の重症度を生活機能の面から分類した観察式の評価尺度。

 

フキダシ:FASTのステージが上がるにつれて、生活の障害が大きくなってくるため、今はどの段階なのかを把握し、障害された部分を補うことや、残された能力を発揮できるようなかかわりが必要といえます

 

図4FAST分類をもとにした各期の生活障害

図4FAST分類をもとにした各期の生活障害

 

 

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どんな治療を行う?

非薬物療法と薬物療法を行います。

 

非薬物療法

薬物を使わずに、脳を活性化し、残っている認知機能や生活能力を高める治療法です。

 

行動・心理症状には、身体的および環境要因が関与していることもあるため、対応の第一選択は非薬物的介入が原則となります。

 

薬物療法

行動・心理症状への薬物療法

幻覚や妄想、興奮といった行動・心理症状に対しては、非定型向精神薬(リスペリドン、クエチアピンなど)や抑肝散(よくかんさん)などが一般的に使用されています。

 

memo:抑肝散

認知症における幻覚、妄想、興奮などの症状に対し効果的とされる。レビー小体型認知症の人に使用されることが多くなってきている。

 

フキダシ:行動・心理症状に対し薬物療法を行う際、副作用の出現に十分注意するとともに、少量の薬剤を短期間だけ投与することを前提に、薬物使用により効果が十分に期待できるかしっかり見きわめることが大切となります

 

抗認知症薬による薬物療法

薬物療法では4種類の内服薬があります(表1)。いずれも完治するための治療薬ではなく、服用していても疾患は徐々に進行していきます。しかし、できるだけ進行を遅らせることで、その人らしく生きることのできる時間を長くし、家族の負担の軽減にもつながります。

 

表1アルツハイマー型認知症の治療薬

表2アルツハイマー型認知症の治療薬

 

医師に処方された薬を忘れずに飲み続けることが大切です。認知機能障害により飲み忘れてしまうことや、飲みすぎてしまうことも少なくないため、家族など周囲が服薬管理をサポートする必要があります。

 

 

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看護師は何に注意する?

物盗られ妄想が出現しているときは、否定をすると不安が増し、興奮を助長させてしまうことがあります。本人の話をよく聞いて、一緒に探したり、さり気なく話題を変えたりすることで興奮が収まることもあります。このとき尊厳をもって接することを心がけましょう。

 

かかわっていくなかで、ケアの拒否や意見が折り合わないときは、無理強いはせずに一歩引いて少し時間を空けることも必要です。

 

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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