点滴ルートの固定方法【2】|成人の手背に固定する場合

この連載では、点滴ルートの固定方法の多様なバリエーションと、それぞれの方法がOKなのかNGなのかをご紹介します。

 

どれが正解? 点滴ルートの固定方法 

Vol.2 成人の手背に固定する場合

タイトル:点滴ルートの固定方法|成人の手背に固定する場合

〔執筆〕 白石弓夏 看護師

〔監修〕 中谷佳子

聖マリアンナ医科大学病院

感染制御部 副師長

〔イラスト〕 かげ 看護師

 

 

 

点滴ルート固定ではずせないポイント

さまざまなバリエーションを見ていく前に、今回も、点滴ルート固定において最低限必要な条件をおさえていきます。

 

【点滴ルート固定に最低限必要な条件】

  • 針とラインがしっかり固定される
  • ラインが閉塞しない
  • 刺入部の観察ができる

 

手背に固定する場合で、この条件をクリアできるのは、どんな方法でしょうか?

具体的に解説していきますね。

 

 

【OK】ループの固定が良い例

ループの固定が良い例の画像。ル―プは小指側に流す、ループ部分が大きく浮いていない、骨に当たらないようにガーゼ、刺入部の観察ができる。

 

こちらが良い例です。

手背の場合には、「利き手を避け」「ルートが邪魔にならないように」固定するのが一番のポイントです。

 

利き手側は、どうしても動かすことが多くなります。

邪魔になるだけでなく、血管外漏出のリスクも増大するため、できるだけ避けましょう。

 

ルートを折り返す部分の浮きが大きいと、着替えの時などに衣服にひっかかり、患者さんにとってストレスになります。

 

邪魔にならないようにする工夫として、ループ部分が大きく浮かないように固定する方法があります。

また、ループの位置としては、体幹側ではなく、外側(小指)に流すと、歩くときに体幹に当たらなくて済みます。

針を刺す位置はかなり慎重に選ばなければいけないと思います。

 

なお、手背の場合は、刺入部の針とルートの接続部が骨に当たって痛みを感じることがあります。

そのため、ガーゼを挟むことが多いです。

 

 

【やむをえない場合はOK】中指から通すやり方

【表側】

中指から通すやり方の画像。手首で固定し、手のひら側を通って手の甲側へ、指の間から出す。

 

【裏側】

中指から通すやり方の画像。手首で固定し、手のひら側を通って手の甲側へ、指の間から出す。

 

できれば避けたいですが、中指から通すやり方もあります。

 

やむをえず、刺す位置が指の付け根側になってしまったり、ルートの材質が硬いもの(非吸着性タイプ)だと、ループが大きくなり引っかかりやすく危険です。

 

そこで、リスクを避けるために指にひっかけて、手のひら側に通します。

 

「絶対にNG」ということはないですが、手を洗うときなどに、邪魔になりやすい固定方法です。

実施の際には、最初に書かれている3つのポイントが守られるように固定しましょう。

 

 

【やむをえない場合はOK】親指から通すやり方

親指から通すやり方の画像。

 

こちらも、刺入部が親指の付け根に近いときなど、やむをえない場合の方法です。

ルートを親指の付け根から、手のひら側へまわして固定します。

 

その際に、ドレッシング材に切り込みを入れると、よりフィットします。

 

 

【NG】ルートが大きく浮いてしまっている例

ルートが大きく浮いてしまっている例の画像。ループの部分が引っかかりやすい。

 

こちらはNG例です。

 

ループの部分が大きく浮いていて、引っかかりやすく危険です。

できるだけ浮きが少ないように固定しましょう。

 

 

【NG】接続部が折れてしまっている例

接続部が折れてしまってい例の画像。

 

こちらもNG例です。

浮きを少なくしすぎると、このように接続部が折れ、閉塞気味になります。

 

また、ルートが引っ張られて、折れてしまう場合もあるので、引っ張られないように固定しておくことも重要です。

 

 

【参考】ネットやバンドで固定する方法

包帯ネット・バンド・カバーの固定方法の画像。

 

より確実に固定するためには、左のように包帯ネットで保護するタイプか、手首の怪我などで使用するバンドを使う方法もあります。

一番右のイラストのようなカバーも販売されています。

 

バンドをめくれば刺入部は見えるので、問題ありません。

これらの方法をとる場合は、圧迫しすぎないように装着することが重要です。

 


自分の施設のやり方に近いものはありましたか?

点滴ルートの固定には、何通りものやり方法があります。

それぞれのメリット・デメリット・禁忌を理解し、方法を選択していきましょう。

 

次回は、高齢者の場合のポイントをご紹介します。

 

★あなたの施設のやり方を募集★

今回の記事を読んで、あなたはどう思われましたか?

ご感想や意見・質問のほか、「私はこうやってる!」「こんなふうにしているけど、これはOK?」「こういう工夫でもっとよくなりますよ!」など「あなたの施設のやり方」をコメント欄へどしどしお寄せください。

 

 

【監修者 プロフィール】

中谷 佳子(なかたに・よしこ)

1997年 聖マリアンナ医科大学病院 入職

2006年 川崎市立多摩病院(指定管理者 聖マリアンナ医科大学)へ異動

2008年 感染管理認定看護師 取得

2008年~ 感染対策専従看護師

2013年 東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科 修了(感染制御学修士)

2019年 聖マリアンナ医科大学病院 へ異動

2019年~ 感染制御部 副師長

2019年9月 特定行為研修 修了

※最終更新日 2019/09/20

 

【イラスト:かげ】Twitter

総合病院で働き、絵を描く看護師です。医療の勉強に役立つ(てほしい)絵や仕事でのほっこり話などをTwitterでつぶやいています。

 

編集/坂本綾子(看護roo!編集部)

 

この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでます

静脈内注射の各種ライン(CV、末梢静脈)の ポイント|輸液ラインの「こんなときどうする?」

SNSシェア

看護知識トップへ