吸引器|ドレナージに用いられる器具 | ドレーン・カテーテル・チューブ管理

ドレーンカテーテル・チューブ管理完全ガイド』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回はドレナージに用いる吸引器について説明します。

 

 

三木健司
辻仲病院柏の葉内科

 

Point

  • 感染リスクを考慮して、現在の術後管理においては閉鎖式ドレーンが一般的である。
  • ドレーンに接続する吸引器には、主に「電動式低圧持続吸引器」「チェスト・ドレーン・バックシステム」「機械式吸引システム」の3タイプがある。
  • ドレナージ部位によって、適切な吸引圧の製品を選択、使い分けることが重要である。

 

〈目次〉

 

はじめに

近年、手術部位感染(SSI)に対する関心が高まるとともに、ドレーン管理についての考え方も変わってきた。米国疾病管理予防センター(CDC)の感染対策ガイドラインにおいては、閉鎖吸引式ドレーン(低圧持続吸引システム)を用いることが推奨されている。開放式ドレーンでは逆行性感染によるSSIを増加させることが証明され、現在では、ほとんどの手術で閉鎖式ドレーンが一般的となっている。

 

ドレーンに接続する吸引器は、主に3タイプ(表1)に分類できる。

 

ドレナージの部位によって、吸引圧の違いを考慮して吸引器の使い分けが必要である。

 

表1ドレーンに接続する吸引器

ドレーンに接続する吸引器

 

 

電動式低圧持続吸引器(図1

図1電動式低圧持続吸引器の例

電動式低圧持続吸引器の例

 

腹腔内あるいは胸腔内に貯留した分泌物を、持続的に体外に誘導するための吸引器である。

 

吸引圧や吸引時間を自由に設定できるため、間欠的な持続吸引も可能となる。

 

チェスト・ドレーン・バックシステム(図2

図2チェスト・ドレーン・バック

チェスト・ドレーン・バック

 

胸腔ドレーン用に開発されたもので、吸引器(壁配管の吸引器や吸引ポンプ)に接続して、設定した吸引圧で低圧持続吸引ができる装置である。

 

「排液を貯留する部分(排液ボトル)」「水封室」「吸引圧設定部」の3つのチャンバーで構成されており、水封部に水を入れることによって、外気が逆流しないしくみとなっている。また、吸引圧設定部に注入する水の量によって、吸引圧を自由に設定することができる。

 

機械式吸引システム(低圧持続吸引システム)

J-VAC®ドレナージシステムやマルチチャネルドレーンシステムなどのドレーンシステムは、用途によって吸引圧の異なるタイプの吸引器が存在する。

 

いずれのシステムも、持続的に吸引圧を発生させる機構と逆流防止弁が組み込まれている。

 

1バネ式吸引器(図3-①)

図3機械式吸引システム(一例)

機械式吸引システム(一例)

 

金属製のバネの働きにより、持続的な吸引圧を作り出すシステムである。

 

吸引圧は比較的高い。

 

2バルーンによる吸引器(図3-②)

SBバック®に代表される吸引器で、「吸引ボトル」と「排液ボトル」の2つのチャンバーからなり、吸引ボトルを陰圧にしてバルーンを膨張させ、バルーンの復元力によって陰圧を作り出すシステムである。

 

吸引圧は常圧用と低圧用の2種類が存在するため、用途によって使い分けができる。

 

3シリコンバルブ型リザーバー(図3-③)

シリコンの排液リザーバーを凹ませて吸引チューブを接続し、リザーバーの復元力で陰圧を作り出すシステムである。

 

吸引圧は、バネ式やSBバック®タイプに比べて低い。

 

4クリオドレーンバック®図3-④)

腹腔内のドレナージ用に開発された持続吸引システムで、排液バックの手前のゴム球を凹ませて超低圧吸引をかける。

 

チューブが満たされたあとは、ゴム球を凹ませなければ、腹圧や落差圧を利用した排液方法に切り替えられる。

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社

 

[出典] 『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』 (編著)窪田敬一/2015年7月刊行/ 株式会社照林社

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