心臓の血液が逆流しないのはなぜ?
看護師のための解剖生理の解説書『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
[前回]
今回は「血液が逆流しない仕組み」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
心臓の血液が逆流しないのはなぜ?
拡張と収縮を繰り返している心臓が、血液の逆流を起こさないのは、一方向だけに血液が流れる仕組みを持っているからです。この仕組みのキーポイントになるのが、4つの弁です。
心臓には4つの弁があり、心房から心室、心室から動脈、大血管という向きにだけ血液が流れるようになっています(図1)。
例えば、右心房から右心室に血液が流れる際には、間にある三尖弁(右房室弁)が進行方向に向かって開き、血液を通します。弁は逆方向へ開くことができないため、心室から心房への逆流、大血管から心室への逆流は起こらないのです。
弁が障害されてうまく開閉できなくなると、血液の逆流が起きたり、心筋が収縮しても血液を送り出せなくなります。この状態を心臓弁膜症といいます。弁が機能しなくなると、心臓は同じ血液を何度も送り出さなければならないため、オーバーワークになります。重篤化すると心不全を引き起こします。
MEMO弁の位置と名称
心臓の弁は全部で4つあります。そのうちの1つ(左房室弁)だけが弁の膜が2枚で、ほかの3つは弁の膜が3枚です。
右心房と右心室の間:三尖弁(右房室弁)
左心房と左心室の間:僧帽弁(左房室弁)
肺動脈への出口:肺動脈弁
大動脈への出口:大動脈弁
MEMO心臓弁膜症
心臓弁膜症の85%は、左心房と左心室の間にある僧帽弁(左房室弁)の障害から起きています。先天性、後天性の弁膜症があり、後天性の心臓弁膜症で最も多い原因はリウマチ熱です。
MEMO心不全
心臓の収縮力が弱まり、体の臓器や組織の需要を満たすだけの血液を送り出すことができなくなった状態。臓器・組織の循環障害を生じ、静脈や肺のうっ血が生じます。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版