昇圧薬のノルアドレナリンを開始したが血圧が上昇しない!指示量の1/10で調剤していた!
『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんに昇圧薬のノルアドレナリンを開始したが血圧が上昇しなかったため、確認したところ指示量の1/10で調剤してしまっていた場合について解説します。
ヴェクソンインターナショナル株式会社 看護企画部
クリティカルケア認定看護師

ピンチを切り抜ける鉄則
口頭指示を受ける場合は、メモを取り、必ず復唱して指示内容を確認します。
計算を必要とする薬剤に関しては、投与濃度と、あらかじめ計算された表で確認します。
さらに、看護師1名ではなく複数名での確認や薬剤師への問い合わせなどが必須です。
起こった状況
症例
尿路感染による敗血症で一般病棟に入院となった70歳代の男性患者さん。
深夜になり血圧が安定しないため当直医へコールしました。
当直医は患者さんの体重を看護師に聞いた上で、口頭指示でノルアドレナリン15アンプル、生理食塩液35mLを合わせたものを0.1γで持続投与の開始を指示しました。
指示を受けた看護師は医師の指示をメモし、ノルアドレナリン15アンプルと生理食塩液35mLを合わせたものを、0.1mL/時間での投与指示であることを別の夜勤の看護師と確認し開始しました。
ノルアドレナリンを開始後も血圧は上昇しませんでした。
ノルアドレナリン開始後1時間程経過した後に当直医が病棟に来ました。
当直医が患者の様子を見に行った際、ノルアドレナリンが指示の1/10の投与量であることに気がつきました。
どうしてそうなった?
このインシデントには、以下のようないくつかの問題点があります。
1 口頭指示
夜間勤務時間帯や医師が手術や検査などで手が離せない状況による口頭指示での薬剤投与は珍しいことではありません。
口頭で受けた指示は電話口頭指示受け用紙などを用い、受けた指示を記載します。
そして、受けた指示内容を必ず復唱し医師に確認することが原則です。
指示を受けた看護師はメモをしていましたが、当直医に復唱をしていませんでした。
2 適切な投与量を理解していない
血圧をコントロールするノルアドレナリンやドーパミンは、体重1kgあたりを1分間でどのくらいの量を投与すればいいのかを表す「γ(ガンマ)」を用いて計算します。
指示を受けたノルアドレナリン15アンプルと生理食塩液35mLはノルアドレナリンの濃度が0.3mg/mLであり、ノルアドレナリンを0.1γで投与するには以下の計算となります。
0.1γ=0.1μg/kg/分=0.0001mg/kg/分
(μg→mgにするには1000μg=1mgなので1000で割る)
分を時間にするには60分=1時間なので60をかける
=0.006mg/kg/時間
=0.006×50mg/時間
=0.3mg/時間
ノルアドレナリンの濃度が0.3mg/mLなので1mL/時間がノルアドレナリンの投与速度となります。
3 不適切な指示
γ計算について説明しましたが、この計算ができる看護師がどれくらいいるでしょうか。
おそらくICU経験者や循環器専門病棟の看護師の一部くらいではないでしょうか。
医師は0.1γでの投与指示を出していますが、投与速度で指示を出すことが妥当な指示といえます。
どう切り抜ける?
ピンチを作ったのは口頭指示の指示受け間違いと、γ計算の知識不足さらに不適切な医師の指示が原因です。
このようなピンチを作らないためにも、ノルアドレナリンの投与に関するルールを院内で統一する必要があります。
例えば、表のようなノルアドレナリンと生理食塩液の濃度を統一したノルアドレナリン投与早見表(表1)を活用することで、ややこしいγ計算をしなくて済みます。さらに、このような表を看護師2名で確認することで投与間違いを減らすことができます。
表1ノルアドレナリン投与早見表

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社



