「維持輸液」の指示が出ていた患者さんに、間違えて「細胞外液」の点滴を投与してしまった!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、「維持輸液」の指示が出ていた患者さんに、間違えて「細胞外液」の点滴を投与してしまった場合について解説します。

後藤 順一

社会医療法人 河北医療財団 河北総合病院 看護部
急性・重症患者専門看護師

 

 

「維持輸液」の指示が出ていた患者に、間違えて「細胞外液」の点滴を投与してしまい焦っている看護師のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

輸液製剤にはさまざまな種類があり、それぞれ目的が異なります。
また、投与する輸液内容も異なるため、輸液の目的を医師と確認することが大切です。
そして、投与時は、薬剤が適切かどうかを確認します。
輸液薬剤が決定した後に投与内容と方法が適切かを確認することが必須です。
この際にはダブルチェックを行います。

 

POINT
  • 看護師は、輸液の種類と違いを理解しておき、個々の患者さんに対する輸液の目的と輸液内容を医師と共有しておく必要があります。
    そして、投与後、患者さんの反応をきちんとアセスメントすることは必須です。

 

 

起こった状況

症例

慢性腎不全で透析導入目的で入院となった患者Aさん。
医師からの指示は輸液が1号液の指示であったが、誤ってリンゲル液を投与してしまいました。

 

 

どうしてそうなった?

薬品名の間違いは「輸液製剤関連」のヒヤリ・ハット事例に多く存在します。
また、同一ブランドの薬品名の間違いとしては、開始液、維持液、術後回復液等では、号数・記号間違いが多くあります。

 

 

どう切り抜ける?

細胞外液は血漿とナトリウム濃度がほぼ等しい輸液製剤のことです。
電解質だけで血漿と浸透圧がほぼ等しいことから、等張性電解質輸液ともいわれます。
出血などによる循環血液量が減少したときの補給・充填や、Naを投与したい低張性脱水などの補給・充填に用いられます。
大量・急速に投与することで、心不全や腎不全がある患者さんでは肺水腫などが出現するため注意を要します。
生理食塩液、リンゲル液などがこれにあたります。

 

それに対して、維持輸液とはナトリウム濃度が血漿より低く、電解質だけでは浸透圧が血漿より低いことから、低張性電解質輸液ともいわれます。
水分欠乏型脱水や体液の恒常性を維持するために使用されます。
維持輸液は号数により電解質濃度が変わります(表1)。

 

表1輸液の種類と特徴

輸液の種類と特徴をまとめた表

 

そのため、投与の目的であった調整したい電解質の変化を確認する必要があります。
例えば腎機能が低下し血中K値が上昇している患者さんに対して、医師が1号液投与の指示を出したとします。
そこで、細胞外液を投与してしまった場合、輸液を直ちに中止し、医師へ報告するとともに、患者さんの電解質濃度変化による異常所見を確認する必要があります。

 

つまりK値の上昇を来した場合の所見を事前に把握してそれに伴う観察が必要となるのです。
脱水は、浸透圧と体液量との関係、特にNaのバランスが重要です。
多くの場合、嘔吐や下痢などによる脱水は、等張性から高張性を呈します。
そのため、細胞外液の等張液(乳酸加リンゲル、5%ブドウ糖液など)が用いられます。

 

しかし、脱水時には循環血液量減少による腎前性腎不全を呈している場合があるので、十分な尿量が確保されるまでは、Kが含有していない1号液などを用いて循環血液量を改善させることが推奨されています。

 

 

輸液の目的を医師と共有する

輸液の間違いを防ぐためには、まずはその輸液の目的を医師だけではなく看護師も理解し、医師と共有しておくことが必要です。

 

輸液の1つ目の目的は、前述した「電解質の補充」です。
電解質輸液には細胞外液補充液と維持液があります。

 

輸液の2つ目の目的は「栄養補給」です。
その際の輸液には高カロリー輸液や糖質輸液、アミノ酸輸液や脂肪乳剤、ビタミン剤が投与されます。

 

3つ目の目的として投与されるのが「輸液浸透圧利尿薬」や「血漿増強薬」です。

 

それぞれ目的が異なり、投与する輸液内容も異なるため、目的を医師と確認し合うことが大切です。

 

 

薬剤投与の原則に忠実に

次に薬剤が適切かどうかを確認します。
輸液薬剤が決定した後に投与内容と方法が適切かを確実に確認することが必須です。
この際にはダブルチェックが多くの施設で行われていることと思います。
多くの人の目に触れて確認することによって間違いは減り、その確認行為を日常的な業務であることを認識し、当たり前の行為であることに位置付けることが大切です。
確認方法としては、「6R」が有名です(表2)。

 

表2薬剤投与時の「6R」

薬剤投与時の「6R」をあらわした表

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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