患者さんの入れ歯を看護師が廃棄してしまった!

『看護のピンチ!』(照林社)より転載。
今回は、患者さんの入れ歯を看護師が廃棄してしまった場合について解説します。

金 姫静

河北総合病院看護部
救急看護認定看護師

 

 

患者の入れ歯を看護師が廃棄してしまい焦っている様子のイラスト

 

ピンチを切り抜ける鉄則

患者さんの私物の紛失や破損、盗難などトラブルが発生すれば、患者家族との信頼関係が損なわれ、紛失物の捜索や警察対応などに発展する場合もあります。
トラブルを避けるためには、医療者の危機意識を高めることはもちろん、患者さんや家族にも私物の管理方法や、紛失・盗難等に対する危機意識を持ってもらうことが重要です。

 

POINT
  • 医療者による患者さんの私物紛失や破損は、医療者の不注意や確認不足が原因として挙げられます。
    入れ歯を紛失した場合は、代替品を準備するには時間がかかり、患者さんの日常生活に影響が出るため紛失や破損には注意が必要です。

 

 

起こった状況

症例

70歳代、男性、人工股関節置換術後でリハビリ入院中。

患者さんは朝食後に入れ歯を外し、口腔ケアを行った後、ティッシュに包んでガーグルベースンに入れていました。

 

日勤の看護師が環境整備のため訪室すると、患者さんが横になっていたため、担当の挨拶をして環境整備を行い、オーバーテーブルに置いてあったガーグルベースンを片づけました。

 

昼食を食べる前に入れ歯を装着しようとしたとき、入れ歯がないことに気がつきました。

 

 

どうしてそうなった?

担当看護師は患者さんが休んでいたため、声をかけずにベッド周囲を片づけました。

 

その際、ガーグルベースンにはティッシュのゴミが入っていると思い、中身に触れずにそのままゴミ箱に廃棄してしまいました。

 

患者さんの入れ歯がないという訴えを聞いてはじめて、ガーグルベースンに入れ歯が入っていたことに気がつきました。

 

 

どう切り抜ける?

1 入れ歯を捜索する

患者さんの入れ歯を廃棄したことに気づいた時点で、紛失した経緯をリーダー看護師に報告します。

 

ガーグルベースンを片づけた際のティッシュと入れ歯がゴミ箱に残っていないか、ベッド周囲を捜します。

 

紛失してから時間が経過しているため、病棟内のゴミ収集が完了している場合は、病棟内のゴミ収集場所の捜索も検討します。

 

ゴミ収集場所を捜索する場合は、廃棄物の管理について病院のルールに従い、感染防御を行いながら捜索します。

 

2 紛失物を発見できなかった場合

一般的に入院時のしおりや案内で、患者さんの私物は自己管理であり、「紛失や破損などの責任は病院が責任を負いかねます」などと明記している場合があります。

 

しかし、患者さんの病状や状況によっては看護師が管理する場面もあり、患者さんの私物管理には注意しなければなりません。

医療者の不注意で患者さんの私物を紛失した場合、病院の安全管理上の問題として補償問題につながる恐れがあります。

 

患者さんの入れ歯紛失の経緯や、病棟内やゴミ収集場所などを捜索したが見つからないことを所属長に報告し、入れ歯の紛失に対してどのように対応するか相談します。

入れ歯を捜索したが発見できなかった場合、患者さんと家族にもその旨を説明し、誠意をもって謝罪します。

 

3 確認不足、思い込み、コミュニケーションエラー

担当看護師は、ベッド周囲を片づける際、患者さんの了承を得ていませんでした。

確認してからガーグルベースンを片づけていれば、入れ歯の紛失は防げた可能性があります。

 

また、ガーグルベースンの中身はティッシュペーパーだけという思い込みがありました。

直接触れて確認すれば、入れ歯の存在に気づけたと考えられます。

 

患者さんの私物を紛失した原因として、医療者の確認不足や思い込み、患者さんとのコミュニケーションエラーが挙げられます。


患者さんのベッドサイドやその周囲は、患者さんの療養の場であり、ある意味において居住スペースです。

 

不要品と感じる物でも患者さんには必要物品の可能性があるため、患者さんの荷物やスペースの物に触れる際には、必ず患者さんの同意を得る必要があります。

 

4 入れ歯紛失の予防対策

入院時から、入れ歯紛失を防止するため、入れ歯の容器の準備を患者家族に依頼します。

 

入れ歯を使用した後はティッシュや紙に包むとゴミと間違えて捨てる恐れがあるため、必ず所定の位置(口腔か容器、図2)に戻すように定期的に注意喚起します。

 

図2入れ歯ケース

入れ歯ケースを表したイラスト

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『看護のピンチ』 編集/道又元裕/2024年4月刊行/ 照林社

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