画像診断|ICU看護実践マニュアル

『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「画像診断」について解説します。

小川 晃司

市立青梅総合医療センター

診療看護師

 

 

Key point
  • 画像を読み解く場合、まず解剖を把握する。
  • X線画像を読む型を身につけ、自分のなかで読む順番を決めておくと見落とすことが少なくなる。
  • X線画像で覚えるべき用語を理解する。

 

ICUにおける画像診断

ICUや救急病室では頻繁に胸部X線画像を撮影する。

日々のX線画像で何を見ればよいか、ここでは胸部X線画像にポイントを絞って説明する。

 

解剖を把握する

鎖骨、肋骨の数、肺の区域、気管支分岐部、心臓の位置、上大静脈、大動脈の位置、肺動脈の位置を理解、把握することは画像を読むうえで必須の知識である。


重要なことは、解剖を意識しながら画像を読むことである(図1)。

 

図1心臓の位置

 

胸部X線画像では、右第1弓は上大静脈、右第2弓は右房、左第1弓は大動脈弓、左第2弓は肺動脈、左第3弓は左房、左第4弓は左室を意味している(写真1)。

 

写真1胸部X線画像が示す心臓の位置

 

このことをふまえ肺区域とX線画像をみてみる。
肺区域の解剖(図2)を踏まえたうえで、X線画像をみると、心臓、大動脈、横隔膜と接する肺区域がそれぞれわかってくる。

 

図2肺区域

 

心臓は解剖学的に縦隔前面に位置しており、S4、S5と接することになる。大動脈弓は後ろにあるため、S6、S10と接しており、横隔膜は前方から後方にかけて位置しているため、S7,S8と接していることがわかる(写真2)。

 

写真2臓器と接するそれぞれの肺区域

 

接している部分の境界が不明瞭(シルエットサイン陽性)であればそこには何らかの生理的変化が生じているのではないかとアセスメントすることが重要である。

 

 

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X線画像を読む型を身につける

「肺が白くなっている=無気肺、浸潤影?」と考える前に、読む手順・型を身につける必要がある。


読む順番に決まりはないが、自分のなかで読む順番を決めておくと見落とすことが少なくなる(写真3)。

 

写真3読む順番を決めておく

 

1撮影条件を確認する。A-P、P-Aか?

救急・ICUでは呼吸・循環動態が不安定であり、臥位で撮影することが多い。


撮影条件によっては描出される心臓の大きさが異なり、横隔膜の位置も異なってくることに注意する。


過去のものと比較する場合はその撮影条件も同じでないと評価が難しい。


①立位(P-A条件):心臓は A-Pと比較すると小さく撮影され、重力により横隔膜が下がった状態になる。


②臥位(A-P条件):心臓は P-Aと比較すると大きく撮影され、横隔膜は挙上した状態になる。

 

2胸郭の大きさ、左右対称性、軟部組織

①胸郭の大きさ:胸郭の大きさで樽状肺など肺気腫の可能性などを考える。

 

②左右対称性:身体が斜位のまま撮影されていないかなどを確認する。気管支のラインに棘突起が位置しているか、鎖骨の長さが左右で大きく異なっていないかを確認することで左右対称に撮影できているか確認できる。

 

③軟部組織:胸郭の外に気体が存在していれば透過性は亢進する。皮下気腫など本来あるはずのない像や異物などを確認する。

 

3骨を見る(鎖骨、肋骨のライン、肋骨の本数、棘突起の位置)

鎖骨の長さは左右対称か、肋骨は全部で12本存在する。
そのすべてをX線画像で確認するのは難しいが、把握できるところまで確認する。


骨折については骨のラインが整であるかどうか、骨折線があるかどうか、画像を拡大しながら1本ずつ肋骨を確認し、骨折の有無を評価する。

 

4縦隔に存在する臓器の確認

①気管・気管支分岐部の位置:気管偏位の有無を確認、気管支分岐部の角度を確認する。偏位や角度が正常と異なれば、その原因を考え、緊張性気胸、無気肺、腫瘤などの有無を評価する。


②心臓の位置、大きさ、角度:心臓が横になっているか、縦になっているか、心胸郭比はどの程度かを確認することで心拡大などを評価する。


③縦隔陰影:縦隔陰影が拡大していると、上大静脈、大動脈弓、下行大動脈の拡大している可能性を考える。上大静脈が拡大しているのであれば、右室梗塞や右心不全などの可能性を、大動脈弓、下行大動脈の拡大があれば大動脈解離などの可能性を考える。

 

5肋骨横隔膜角

肋骨横隔膜は下肺野と横隔膜が接するところで、正常では鋭、異常では鈍と表現することが多い。鈍であれば、胸水や無気肺が生じている可能性を考える。


また、横隔膜の位置を正常画像で覚えておく。左右の横隔膜の位置は正常画像では右の横隔膜のほうが左に比べ挙上している。

 

6肺野

左右での透過性の違いがあるか、上から下へ向かい左右を比較していく。


後述するシルエットサイン、コンソリデーション、エアブロンコグラムは存在するか、血管影は末梢まで追うことができるか。

 

7パッと見た瞬間の印象(代表的な画像を覚えておき、緊急性のチェック)

パッと見でわかる、また、わかりやすい病変は緊急性にかかわることも多いため、第一印象は重要である。


気管偏位や緊張性気胸など臓器の位置が変わるほどの変化には注意が必要である。

 

8過去との比較

変化を見分けるためには過去に撮影されている画像は重要なヒントとなる。
ここで注意するのは撮影条件が同一であるかどうかである。


撮影条件の異なる画像を比較しても正確な評価にはならない。


ICUなどで臥位が続いているのであれば、横隔膜は挙上し、下葉に無気肺が生じやすい。シルエットサインが陽性になっていないかなど過去の画像との比較は撮影条件、病態によってもみるべきポイントに注意したい。

 

9身体所見、症状と照らし合わせる

画像のみで何かを判断することは、看護・医療ではない。
必ず臨床所見と照らし合わせることが最も重要で、そこからアセスメントが始まる。

 

 

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X線画像で覚えるべき用語

透過性の亢進:

透過性が亢進するとはその部分が、黒く抜けて見える状態である。気胸などは肺実質がしぼみ、胸腔内が空気で満たされることでより黒く抜けてみえるため、透過性が亢進すると表現する。また、以前肺炎で白かった部分が改善した場合には透過性が改善したと表現する。

 

透過性の低下:

透過性の低下という表現には以前と比較し、もしくは他の部位と比べその部分だけ、白く映っているということである。透過性が亢進する場合は肺胞の問題、肺胞の壁・間質に問題が生じる場合がある。前者は肺胞の中に水などが貯留するため、真っ白くうつる。後者は肺胞の壁の一部や間質に炎症が生じることでうっすら淡く白く映る。同じ透過性の亢進でもその機序には大きな違いがあり、病態が異なってくる。

 

シルエットサイン:

濃度の同じものが隣同士に接すると、その境界は不明瞭に映る。これをシルエットサイン陽性と表現する。濃度の同じものでも接していなければ、その境界は明瞭となり、シルエットサインは陰性となる。無気肺により、肺胞がつぶれる、しぼむと水と近い濃度となるため、無気肺と接している部分との境界は不明瞭となる。これをシルエットサイン陽性という。

 

コンソリデーション:

浸潤影ともよばれる。特に細菌性肺炎など肺胞内に滲出液が満たされるような疾患で多くみられる。これは滲出液が肺胞にたまり肺胞全体が水に近い濃度となるため、白く映るためである。無気肺と異なる点は、無気肺は肺胞がつぶれ容量が減少するのに対して、肺炎は肺胞それ自体の構造は変わらない点である。そのため、容量は減少しない。

 

エアブロンコグラム:

肺胞内が水分でみたされると、末梢の気管支が黒く抜けて撮影される。気管支周囲の肺胞が水分で満たされることで、肺胞は白く映るが、気管支は空気で満たされており、黒く映るためである。エアブロンコグラムを見つけたときに考えることは、肺胞が水分で満たされた病態を想起することである。気管支内よりも肺胞内に炎症が集中する肺炎、肺胞内が血管からもれでた水分で満たされる肺水腫などがある。

 

 

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代表的なX線画像

以下に代表的なレントゲン画像とその特徴を示す(写真4写真5写真6写真7写真8写真9)。

 

写真4無気肺:両側下葉の無気肺

 

写真5肺炎:右下葉優位の細菌性肺炎

 

写真6肺水腫:両側に認める肺水腫

 

写真7気胸:右気胸のX線画像

 

写真8大動脈解離:縦隔陰影の拡大

 

写真9デバイス類の位置確認

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版

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