DMAT(災害派遣医療チーム)
『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「DMAT(災害派遣医療チーム)」について解説します。
看護副師長・クリティカルケア特定認定看護師
看護主任・救急看護認定看護師
- 災害サイクルを理解しよう
- 災害対応の基本は「CSCATTT」である。
- 一次トリアージと二次トリアージの違いを理解しよう。
災害サイクル
災害サイクルとは、災害発生から復興に至るまでの時間的な経緯を、1つのサイクルとしてとらえる考え方である(図1)。
図1災害サイクル

(日本集団災害医学会監修、日本集団災害医学会DMATテキスト編集委員会:[改訂第2版]DMAT標準テキスト,へるす出版,2016,p.7より一部改変)
発災からの時間経過により超急性期、亜急性期、慢性期に分けられる。
災害の対応の観点からは、発災期、緊急対応期、復旧・復興期/リハビリテーション期、静穏期、準備期、前兆期に分けられる。
1急性期:発災から1週間までが急性期とされるが、とくにに3日までは超急性期とされ、防ぎえた死亡(preventable death)が多く発生する時期である。DMATはこの超急性期に最も活躍が期待される。
2亜急性期:災害が発生して7日から4週間の間を亜急性期とよぶ。衛生環境が整わない生活による呼吸器や消化器疾患の集団発生が危惧され、感染を考慮した医療・看護が必要である。
3慢性期:災害が発生して1か月から3年の間をいう。急性期に受けた強いストレス障害による心的外傷後ストレス障害(PTSD)が問題となることがある。
災害医療対応の基本コンセプト
災害現場ではさまざまな組織や職種が活動するため、災害医療に関する共通の認識や言語が不可欠である。
「CSCATTT」はわが国の、災害医療に従事する多くの職種に定着している共通言語である(図2)。
図2災害対応の基本原則(CSCATTT)

1C(command&control:指揮・統制)
それぞれの組織内での縦の命令系統を指揮とよぶ。
一方、災害の現場では複数の機関が協力して活動を行い、統括と責任は1つの機関に委ねられる。
このような諸機関の横の権限構成を統制とよぶ(図3)。
図3指揮と統制の階層

(日本集団災害医学会監修、日本集団災害医学会DMATテキスト編集委員会:[改訂第2版]DMAT標準テキスト,へるす出版,2016,p.38より一部改変)
2S(safety:安全)
日常の医療行為においては、安全な環境下で行うことを原則としているので、安全に関してとく意識することは少ない。
しかし、地震等の災害時では、医療機関も被災する可能性があり、安全が確保できない場合がある。
そのため、災害時に活動を行う場合は、安全の確保が重要であり、まず自分(self)の安全を確保し、現場(scene)の安全を確保したうえで生存者、傷病者(survivor)の救出救助、治療を行う。
自分自身の安全が確保できない場合は、決して生存者・傷病者に近づいてはいけない。
3C(communication:情報伝達)
組織内および組織間の情報伝達が重要とされる。
正確な情報を入手し伝達するには、通信手段の確保と適切な通信方法が重要である。
4A(assessment:評価)
得られた情報から、災害全体の状況を評価し、今後の活動方針を決定する。
5続く次のステップ:TTT
「T」(triage、トリアージ)、「T」(treatment、治療)、「T」(transport、搬送)が位置づけられている。
「CSCA」を医療管理項目、「TTT」を医療支援項目として分けられる。
重要なことは、医療管理項目「CSCA」が確立するまでは。医療支援項目「TTT」を行えないということである。
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トリアージのカテゴリー分類
一般にトリアージによる優先順位は4つに類型化される(表1)。
表1トリアージの分類

第1順位は「緊急治療群」でトリアージタグでは、「赤」、「I」で表す。
生理学的異常があり、生命の危機的状況にあり、何らかの緊急処置もしくは、ただちに搬送が必要な傷病者である。
第2順位は「非緊急治療群」でトリアージタグの「黄」、「II」に該当する。
治療までに数時間要しても、生命が危機的状況には至らないと推定される傷病者とされている。
第3順位は「治療不要もしくは軽処置群」でトリアージタグは「緑」、「III」に相当する。
歩行可能で処置不要であるが、歩行可能な傷病者のなかには、意識清明期にある頭部外傷なども含まれるため、繰り返しのトリアージが必要である。
最後の第4順位は「救命困難群」で「黒」「0」に相当する。
生命徴候がないもの、平時においても救命の可能性がないものが該当する。医師の診断を待って、死亡とする。
トリアージ
災害時のトリアージは一次トリアージと二次トリアージの2段階で構成される。
一次トリアージは救助者が傷病者の状態を最初に迅速に評価するために生理学的な評価に基づいて行われる。
一般的な方法として「START(スタート)(simple triage and rapid treatment)法」が用いられる。
この方法では、呼吸・循環・意識の3つの指標を評価し緊急度を判断する(図4)。
図4START法によるトリアージ

(日本集団災害医学会監修、日本集団災害医学会DMATテキスト編集委員会:[改訂第2版]DMAT標準テキスト,へるす出版,2016,p.98より一部改変)
二次トリアージは原則として、一次トリアージの実施後さらにトリアージに投入可能な医療資源がある場合に実施する。
生理学的および解剖学的評価に基づいたトリアージを実施する。
この手法は「PAT(パット)法(Physiological and Anatomical Triage)」とよばれる(表2)。
表2PAT法
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また一次トリアージでアンダートリアージ、もしくはオーバートリアージされた傷病者を見つけ出し、適切なカテゴリーに分類し直すことも行う。
しかし、圧倒的な多数の傷病者が発生している状況では、詳細な評価を行うための十分な医療資源に乏しいため、一次トリアージの手法を繰り返し実施して対応する場合もある。
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東京都早期運用計画(東京DMAT)
平成29年から東京DMAT(disaster medical assistance team)の早期運用が開始されている。
「脱出不能」「高エネルギー」「全身または体幹部の下敷きまたは挟まれ」3項目のキーワードがすべて揃った場合に、東京DMATの出動要請の依頼がある(図5)。
図5DMAT 出動要請の流れ
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〔東京DMATの早期運用要領(平成29年3月24日付28救指第1171号)より改変〕
当院でも東京DMAT出動要請があった場合には、5分で出動できるようにしている。
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版


