遠隔ICU

『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「遠隔ICU」について解説します。

森口 真吾 

株式会社Vitaars・国際遠隔医療推進機構

執行役員・代表理事・集中ケア認定看護師

 

 

Key point
  • 目標設定はアウトカムだけでなくプロセスにも着目すること。
  • 最も効果的な支援モデルの導入を検討すること。
  • 運用マニュアルに基づいた運用の共通認識を行うこと。

 

遠隔ICUの目的

遠隔ICUの概要を知り、スムーズに活用・運用へつなげることができる。

 

遠隔ICUの定義

遠隔ICUとは遠隔医療の1つであり、医師対患者(Doctor to Patient:D to P)で実施されるのではなく、医療者同士で実施される遠隔医療である。


医療者間の相談関係は、主に医師対医師(Doctor to Doctor)および看護師対看護師(Nurse to Nurse)で構成される。


2021年に集中治療医学会から発表されている運用指針のなかでは、「遠隔ICUは現場医療に代わるものではなく、医療資源の活用とプロセスの標準化を通じて現場医療を強化するよう設計されている」と説明している1 )


つまり、遠隔ICUを導入したとしても、診療・看護を実践するのは現場であるため、被支援施設と支援施設との関係性構築が非常に重要である。

 

遠隔ICUにおける目標設定

遠隔ICUを成功に導くためには、遠隔ICU支援を提供する支援施設(以降支援施設)と支援を受ける被支援施設(以後被支援施設)の間で支援目標を決定し、共有することが重要である。

 

支援目標は患者アウトカムの改善、コスト削減などの視点で決定すべきだが、支援を受けるICUの構造などによって異なることがある。


目標設定のポイント:ICU死亡率、病院死亡率、ICU入室期間それぞれが改善するという報告2 )がある一方で、人工呼吸器関連肺炎予防・深部静脈血栓症予防などのガイドライン・プロトコルの遵守率が改善したという報告(図1)もあるため、アウトカムだけではなく、プロセスにも目を向ける必要がある3 )

 

図1Tele-ICU導入によるガイドライン・プロトコルなどの遵守率の変化

(Lilly CM, Cody S, Zhao H, et al. Hospital mortality, length of stay, and preventable complications among critically ill patients before and after tele-ICU reengineering of critical care processes.JAMA.2011,305(21):2175-2183より改変)

 

また、患者や家族の満足度や、被支援施設スタッフの労働環境の変化なども評価に用いることを検討する。

 

 

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支援モデル

被支援施設に対し、どのような時間・タイミングで診療支援を行うのかを決定することは、効果的な支援を行うにあたり重要である。


遠隔ICUのモデルは以下の3つに分けられる1 ) 4 )が、支援方法は施設間で最も成果が望まれる方法で検討する。

 

①持続ケアモデル(Continuous Care Model):

決められた時間内で患者を絶え間なくモニタリングすること(例:8時~24時、12時間・24時間)

 

②計画的ケアモデル(Scheduled Care Model):

事前に定めた計画に従って定期的な回診をするモデル(例:患者のラウンドの際に共有するなど)

 

③急変時対応モデル(Reactive Care Model):

警告や必要時に介入するモデル(オンコール体制、モニターのアラームに対応など)

 

このなかで、病院死亡率、ICU死亡率、ICU滞在日数などのアウトカムの改善がみられるモデルは、現段階では持続ケアモデルのみであるが、目標達成のために効果的な運用モデルを検討する。

 

システム

システムを安全に活用するためには、通信技術・セキュリティ対策などにおいて、指針やガイドラインに沿う必要がある。


さらには、遠隔ICUの支援センターでは、医師対患者、および看護師対患者の平均比率はそれぞれ1:60~125、1:30~40とされている5 )


これら多くの患者を監視・トリアージするため、効率化も求められる。
また、データ利活用を行える方法でシステム構築を行う必要がある。

 

①ビデオ音声通話などテレコミュニケーションにおける必要な技術

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づき選択する。

 

②アクセス機器・業務端末管理
携帯端末には、必要最小限のアプリケーションの使用・一貫した監視・管理ソフトの活用を行うべきである。


また支援施設以外への持ち出しに関するルール、管理方法についても検討すべきである。


個人のPC、携帯端末からのアクセスは原則行うべきではない。


詳細は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に基づくこと。

 

③医療情報・医療機器の取り扱い
遠隔ICUでは、通信システム・ビデオ音声を用いて組織外の支援施設で患者の情報を取得する。


これら医療情報・医療機器を安全に扱うためには、個人情報保護を含むセキュリティを担保したうえでデータ管理をする必要がある。


医療法、医師法、個人情報保護法、経済産業省/総務省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」などの規制に則った仕様にする必要がある。

 

 

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運用マニュアル

効果的な遠隔ICU支援を行うためには支援施設相互での詳細な運用手順を準備する必要がある。以下のような内容を含む運用マニュアルを作成し、支援病院と被支援病院で内容の共有を行う。

 

  • □支援の目標
  • □支援施設と被支援施設の業務範囲の違い
  • □職域による役割の違い(医師・看護師・医療事務補助者など)
  • □運用ルールと看護手順
  • □スタッフへ連絡するタイミングおよび方法
  • □モニタリングのタイミング
  • □記録方法
  • □支援実績のログ機能
  • □障害発生時の対応
  • □ソフトウェアアプリケーションの使用方法

 

運用マニュアル内には、実運用における必要な内容を目次に沿って記載する必要がある。
表1に具体例を掲載する。

 

表1運用マニュアルにおいて具体的に検討すべき項目例

 

その他、患者および家族への情報提供・教育に必要なコンテンツ・ツールなどの内容についても含む。

システムのトレーニングは実機を用いて行うほうが望ましい。

 

 

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引用・参考文献 閉じる

1 )日本集中治療医学会:遠隔ICU設置と運用に関する指針.https://www.jsicm.org/pdf/Guidelines%20of%20Tele-ICU.JSICM2021.pdfより2021年12月15日検索

2 )Chen J, Sun D, Yang W et al. Clinical and Economic Outcomes of Telemedicine Programs in the Intensive Care Unit: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Inten Care Med. 2018, 33( 7 ): 383-393.
3 )Lilly CM, Cody S, Zhao H, et al. Hospital mortality,length of stay, and preventable complications among critically ill patients before and after tele-ICU reengineering of critical care processes. JAMA. 2011,305(21): 2175-2183.
4 )Davis TM, Barden C, Dean S et al. American Telemedicine Association Guidelines for Tele ICU Operations. Telemed J E Health. 2016, 22(12): 971-980.
5 )Goran SF. A second set of eyes: An introduction to Tele-ICU. Crit Care Nurse. 2010, 30( 4 ): 46-55.

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版

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