ストーマ管理
『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「ストーマ管理」について解説します。
田貝佐久子
市立青梅総合医療センター 看護師長
- ストーマサイトマーキング方法の概要を知る(緊急時含め)。
- ストーマ装具交換の留意点を知る。
ストーマ管理の目的
術後のストーマの合併症を予防する。
ストーマ管理の実際
必要物品
ストーマサイトマーキング:水性ペン、油性ペン、メジャー、マーキングディスク、記録用紙
パウチなど装具交換:術後装具もしくは短期交換用装具、剥離剤、シャワーボトル、吸水用パッド、おむつ、弱酸性ボディソープ、ガーゼ、粉状皮膚保護剤(パウダー)、ノギス、記録用紙
ストーマサイトマーキングの基準
選定基準は、以下のとおりである(緊急時はこのかぎりではない)。
ストーマサイトマーキングの5原則 (principles of ostomy care)
- □装具装着に適した条件が得られる位置
- □患者がセルフケアできる位置
- □合併症が起こりにくい位置
- □患者個々の社会的条件に適した位置
- □衣服等を考慮される位置
ストーマサイトマーキングの基準として広く用いられている基準に、クリーブランドクリニックの原則がある。
クリーブランドクリニックの原則
- □臍より低い位置
- □腹直筋を貫く位置
- □腹部脂肪層の頂点
- □皮膚のしわ、くぼみ、瘢痕、上前腸骨棘の近くを避けた位置
- □本人が見ることができ、セルフケアしやすい位置
手順
1患者を仰臥位にし、腹部に水性ペンで臍上線、正中線、肋骨弓、上前腸骨棘、腹直筋外縁、腹部のしわを書く(図1)。
図1ストーマサイトマーキングでの記入線

2患者を端座位または長座位にし、腹部のしわを水性ペンで書く。腹部の張りが強く、また痛みなどある場合は無理をせず仰臥位のままとし、膝を屈曲し大腿を垂直に立てるなどの工夫をすると腹部のしわが出やすい。
3あらかじめ医師より指示のあったストーマ造設予定位置にマーキングディスクを用い、肋骨弓や上前腸骨棘に当たらず、なるべく平坦な位置に油性ペンでマーキングを行う。腹部の張りが強く、しわがわからない、腹直筋が触れないなどあれば、臍上線、正中線、肋骨弓、上前腸骨棘を記入したうえで、あらかじめCT画像などで腹直筋の位置を確認し、創部となる可能性の高い正中線や臍周囲を避け、腹直筋を貫くおおよその位置にマーキングを行う。基本的なマーキングの際の注意事項は下記のとおりである。
基本的なマーキングの際の注意事項
- □腹直筋を貫く位置
- □本人直視可能な位置
- □深いしわや傷を避けた位置
- □生活に支障の出ない位置(ベルトの位 置を避けるなど)
4メジャーを用い、マーキングした位置の測定を行う。(臍からの距離、臍上線からの距離、正中線からの距離、腹直筋外線からの距離、肋骨弓からの距離、上前腸骨棘か らの距離、深いしわからの距離)
5カメラを用い、端座位での腹部、仰臥位での腹部の写真を撮影する。
6マーキング以外の不要な線(水性ペン)を拭き取る。
7医師へマーキングの確認を依頼する(表1)。
表1ストーマの種類とマーキングの位置
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※横行結腸ストーマは、原則として上腹部にマーキングするが、肋骨弓の形状や体格によっては、左右の臍より下側にする場合がある
Point
マーキングを行う前にCT 画像にて腹直筋の位置を把握しておくとよい。
装具交換手順
1シャワーボトルに温湯を準備する。
2ストーマ側の腹の下にパッドを敷き、軽くストーマ側へ身体を傾ける。
3リムーバーを使用し面板や周囲テープを愛護的に剥がしていく。
4ガーゼを湯で湿らせ、ボディソープをつけ泡立て、泡で面板が貼付されていた部位を洗う。洗う際はストーマを中心に、コロストーマは外側から内側へ、ウロストーマは内側から外側にむかって、手でやさしく洗う。
5腹部に面板の粘着成分や排泄物が残らないよう洗い、十分な湯で洗い流す。
6余分な水分を拭き取り、ストーマおよび周囲の皮膚の観察を行う。
7ストーマの直径や高さを測定し、記録用紙に記載。カメラなどでストーマの直上からと真横からの写真を撮る。また、皮膚接合部に離開などがないか確認し、皮膚トラブルなどあればその部位の写真を撮影し、記録に残す。
8術後1週間程度はストーマの皮膚接合部は、急性期創傷の保護のため十分な粉状保護剤を散布する。ストーマのサイズに合わせ面板をカットし装具を貼付する。ストーマの浮腫が強い術後の面板はストーマのサイズより2mm程度大きくカットし面板でストーマが擦れないようにする。また、術後1週間は創部の血流を妨げないよう凸面の装具は避け、毎日もしくは1日おきの装具交換、ストーマの観察を行い、所定の記録用紙に記載する。
Point
ICU入室状態の患者は全身状態がとくに不良のため、ストーマの状態(色調、潤い、浮腫、落屑の有無など)に注意する。
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緊急ストーマサイトマーキング
術前準備が十分でないままに行われる緊急手術は、創感染・離開などストーマの合併症を起こしやすい。
合併症予防や術後ストーマ管理、患者QOLなどの視点から考え、位置決めは必要である。
座位や立位などの姿勢がとれる場合には、基本的な方法に準ずる。
腹部緊満や腹痛、嘔吐などの症状がある場合には仰臥位で行い、可能なかぎりでベッドをヘッドアップし、腹部のしわ・骨突出を確認する。
腹直筋の位置など画像を確認しながら実施する。
手順
1臍を中心にマーキングディスクを置き、マーキングディスクが乗っている位置を避ける(図2)。
図2マーキングが可能な位置
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2肋骨弓、左右上前腸骨棘、恥骨などの骨突起部位から3横指(5〜7cm)内側に線を引く(図2)。
3臥位のまま膝を深く屈曲させ、しわがあれば臍から3横指(5〜7cm)内側に線を引く(図3)。
図3深いしわのマーキング
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4腹直筋外縁に線を引く(腹直筋の確認が困難な場合、CT画像から腹直筋の幅を計測する)。
5①〜④の線の内側で平面が得られる位置に複数マーキングをする。
1)ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編:ストーマリハビリテーション-実践と理論,金原出版,2006
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版


