口腔ケア|ICU看護実践マニュアル

『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「口腔ケア」について解説します。

剱持雄二

東京医療保健大学大学院 看護学研究科(修士課程)

市立青梅総合医療センター 救命救急センター 院内ICU 看護主任

 

 

Key point

  • 重症患者のための口腔ケアの手順を示す。
  • 主な対象となるのは重症の成人患者である。

 

口腔内の衛生状態を評価

適切な評価ツールを使用(表1表2)し、入院して8時間以内に行う。その後は最低12時間ごとに行う。

 

表1改訂口腔アセスメントガイド(Revised Oral Assessment Guide:ROAG)

(8020推進財団編:入院患者に対するオーラルマネジメント,8020推進財団,東京,2008,p.12より改変)

 

表2臨床的口腔評価指針(Clinical Oral Assessment Chart:COACH)

(岸本裕充編:口腔アセスメントカード,学研メディカル秀潤社,東京,2013,p.2より改変)

 

改訂口腔アセスメントガイド(ROAG)は、唾液(≒口腔乾燥)の項目を、粘膜と歯科用ミラーとの摩擦で評価するように改編されている。


臨床的口腔評価指針(COACH)は、ROAGなどをベースに、開口、口臭、流涎の項目を追加し、口腔乾燥は粘膜とグローブを装着した指との摩擦で評価する。


注意点:口腔外科手術後、外傷、放射線療法後や化学療法後などの場合は、上級医師、歯科 / 口腔外科医、歯科衛生士の助言を求める。

 

 

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標準的な口腔ケア

手順

1毎日2回やわらかい歯ブラシと洗口液を使って、歯 / 義歯、歯茎、舌をブラッシングする(エタノール入りの洗口液は乾燥を助長するため避ける)。

 

2その後、乾燥を防ぐために水ですすぎ、吸引カテーテルで吸引した後、必要時口腔湿潤剤を塗布する。すすげない場合は、スポンジブラシで口腔内を清拭する。乾燥した口への人工唾液の使用や口腔カンジダへの局所抗真菌剤を考慮する。

 

3リップクリームを塗布する。

 

4義歯を水または義歯洗浄液で保存し、毎日交換する。

 

各勤務帯での評価と記録

□歯 / 義歯の状態

□歯茎の状態

□潰瘍

□口腔カンジダ

□唾液と口臭

□食物残渣・汚染物

□気管チューブによる口唇の圧迫

 

鎮静下や人工呼吸器装着中の患者への口腔ケア

手順

1標準的なケアに加え、4~6時間ごとに水または洗口液を含ませたスポンジブラシで口腔内を清拭し、吸引カテーテルで吸引する。

 

2ケア前後にカフ圧を30cmH2Oに調整する。

 

3経口・経鼻挿管の場合に、気管チューブのまわりを生理食塩水を浸したガーゼで清拭する。

 

4経口挿管の場合は、口腔ケア前にバイドブロックを取り除く。

 

5カフ上部吸引孔がある場合は、4時間ごとに吸引する。

 

6ブラッシング後に口腔吸引する。このとき、ペーストまたは洗口液を用いる。

 

7ブラッシング後にはクロルヘキシジン(CHG)、塩化セチルピリジウム(CPC)の殺菌剤入りの洗口液を使用する。

 

8ケア中、体位はセミファーラー位(>30°)とする。

 

9口腔・咽頭部の吸引は少なくとも4時間ごとに行う。唾液が多い場合は、持続声門下吸引を行う。気管挿管は、口腔内を保護する唾液の生成を抑える。乾燥を防ぐためケア後は口腔湿潤剤を塗布する。

 

引用・参考文献 閉じる

1 )岸本裕充,塚本敦美:口腔ケアのアセスメントおよびケア方法概論(1)口腔のアセスメント,8020推進財団編,入院患者に対するオーラルマネジメント,8020推進財団,東京,2008

2 )岸本裕充編:口腔アセスメントカード,学研メディカル秀潤社,東京,2013

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版

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