ICUにおける低体温療法患者の受け入れ準備および入室直後の対応

『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「ICUにおける低体温療法患者の受け入れ準備および入室直後の対応」について解説します。

礒崎裕子
青梅市立総合病院救命救急センター集中治療室 看護師

河西克介
青梅市立総合病院 救急科部長

 

Key point
  • 低体温療法患者の受け入れ準備が行える。

 

 

低体温療法患者の受け入れ準備および入室直後の対応方法

機器が2種類あり、必要物品が異なるため以下に必要物品・準備手順を明記する。

 

水循環ブランケット(Medi-ThermTM)

必要物品

本体機器、膀胱温測定プローブ、膀胱温センサー付き膀胱留置カテーテル、メディサーム用のブランケット2枚、蒸留水(必要水容量:約9.5L)

 

手順

1本体機器に蒸留水を水位が使用レベルまで達するまで入れる。

 

2患者が使用するベッドにメディサーム用のブランケットを敷き、その上からバスタオルでおおう。

 

3本体機器の電源を入れ、患者が臥床したら、患者の膀胱留置カテーテルの温度センサーを温度プローブに接続し、機器にて患者の膀胱温の確認をする。

 

4患者の全身状態の把握後、身体の上にバスタオルをかけブランケットを被せて保温する。

 

5四肢をバスタオルやフェイスタオルで保護し、治療が効果的に行えるようにする。

 

6医師に目標体温設定温度を確認し、目標体温となるようにブランケットの水温を調節する。

 

粘着性熱伝導パッド(Arctic SunTM)

必要物品

本体機器、体温プローブアダプターケーブル、膀胱温センサー付き膀胱留置カテーテル、患者体温出力ケーブル(測定した体温をベッドサイドモニターへ出力するときに使用する)、粘着性ジェルパッド、皮膚被膜剤

 

手順

1本体機器を準備する。

 

2患者が臥床したら、皮膚トラブルなどの有無を確認しジェルパッド装着部位に皮膚被膜剤を噴霧する。

 

3患者が使用するジェルパッドを選択し装着する。装着後、注入ラインと接続する。膀胱温センサー付き膀胱留置カテーテルと患者体温プローブアダプターケーブルを接続し、患者の体温確認する。

 

4タオルケットや毛布などをかけ、四肢をバスタオルやフェイスタオルで保護し、治療が効果的に行えるようにする。

 

5医師にて、低体温療法スケジュールを設定し開始されていることを確認する。

 

Point

ジェルパッド装着時の注意点

  1. ジェルパッドを貼る皮膚は、清潔で乾いた皮膚の上に装着する。ハイドロゲルの素材の特徴として、50%以上が水分であるため、保湿剤や被覆材を使用してしまうとジェルパッドの薬液成分が吸入されるため粘着力がなくなる。潰瘍、火傷、蕁麻疹、発疹のある皮膚上にはジェルパッドを当てない。

 

  1. 4~6時間を超えずにジェルパッド全体を剥がして(除圧)、皮膚観察をする。また、必要に応じて位置をゆっくりずらして装着する。陰圧管理のため、ジェルパッドの辺縁部に圧がかかる。心停止後は浮腫が増強するため、冷却時間とともにジェルパッドが皮膚に食い込む可能性がある。

 

  1. 適切なサイズの選択と装着の方法(骨突出部を避け、締め付けない、など)を遵守する。

 

  1. 背骨を避けて1~2cm程度開けて装着する。背骨の上にジェルパッドを貼ると、圧による褥瘡発生の可能性がある。背中の隙間を大幅に開けると、皮膚がよれる可能性がある。上記を行なっても、組織灌流の不良や浮腫など基礎疾患または生理学的状態により影響を受けやすい患者の場合もあるため、このかぎりではない。

 

  1. 使用するジェルパッドのサイズは、女性はSS~S、男性はS~Lである(図1)。

 

図1ジェルパッドのサイズ表

(https://www.bdj.co.jp/interventional/products/hkdqj200000w2ht0-att/hkdqj200000w2jw0.pdfより改変)

 

 

【コラム】体温管理療法操作開始後のチェックポイント(Arctic SunTM 5000を使用した場合)

  • ArcticジェルTMパッドは30~40%おわれ、装着している部分の皮膚にトラブルはないか?(4~6時間ごともしくは院内基準に沿って確認し、発赤がある場合、寒冷刺激によるものなのか、引き続き評価をする)

 

  • ArcticSunTMのマークは点滅しているか?(スタートボタンを押し忘れた場合、冷却・加温されない)

 

  • ArcticジェルTMパッドの流量は保持できているか?(注水ライン、ArcticジェルTMパッドのラインの屈曲がないか、また接続の緩みがないか確認する。)

 

  • 患者体温が設定した目標温度を推移しているか?(シバリングや痙攣の確認をする。温度プローブやケーブルの接続を確認する)

 

  • 設定は医師の指示どおりか?

 

  • 水温は変動しているか?

 

  • 警報や警告表示はないか?

 

  • 作動温度範囲(10~27°C)であるかを確認する

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版

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