おうちで死にたい~訪問看護の現場から~【3-3】

前回の話

末期がんの松村さんは、訪問のたびに「ぼく、もうすぐ死ぬんだって…」と問いかけてきます。

花は松村さんの気持ちにどう寄り添えばいいのでしょうか…?

 

死を受け入れられない松村さんの気持ちに寄り添うため、訪問の間だけ「手を握る」ことにした花。松村さんの反応は…?

 

花が手を握ると、松村さんは小さく微笑み、やがて眠りにつきました。それを奥さんと先輩看護師の持田が見守ります。

 

奇跡が怒るわけではない。でも、未熟な自分なりに患者さんと向き合わなければならない。花は心に誓います。翌日、松村さんはなくなりました。

 

自分の対応が間違っていなかったのか、悩む花。持田はやさしく「そうやって考えるのよ、いつまでも。そういうものよ」と諭してくれる。

 

松村さんのもとを訪ねると、ベッドに横たわった松村さんは家族に囲まれて穏やかな顔をしていました。松村さんは亡くなる前に、ひとりひとりと握手をして「ありがとう」と言ったという。

 

亡くなる直前、家族に別れを告げる笑顔を見て、奥さんは「この人あっちに行く気になったんだと思ったの」。幼い孫たちも「最後のお別れができてよかった」と安心しています。

 

そして月日が過ぎ、6月。「松村さん、夏まで生きられなかったな」とつぶやく花に、「あれは医者の優しさよ」と馬淵が答える。みんな、松村さんの気持ちにどう寄り添うべきか、悩んでいたのだ。

 

「誰もがスムーズに死を受け入れるわけではない。それもその人の人生」と馬淵。看護師として働く上で、その人の生き方を尊重することが大切だと花は気がつく。

 

亡くなる直前、花が手を握った時、松村さんは死を受け入れたのだろうと花は思う。ふうっと力が抜けて楽になったのを、花はその手の中で感じたのだ。

 

(おわり)

 

 

 

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

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