8人死亡の手術では何が起きていたのか?群大病院が「全例で過失」認める最終報告書

群馬大学病院で腹腔鏡(ふくくうきょう)を使った肝臓手術を受けた患者が相次いで亡くなった事件で3日、群大病院は「すべての事例で過失があった」と認める最終報告をまとめました。

 

低侵襲で回復が早いとされる腹腔鏡手術で、過去5年に同じ医師が執刀して8人が死亡、開腹手術でも10人が死亡するなど、全国平均を上回る死亡事例を出した群大病院の事件では、いったいなにが起きていたのでしょうか?

 

事の発端は去年6月、同院の医療管理部長が、腹腔鏡手術を受けた後に亡くなった患者の保険適用範囲を調べたことから始まります。ちょうど当時、千葉県立がんセンターで腹腔鏡手術を受けた患者の死亡例が続き、内部告発によって手術ミスの疑いが表面化するといった事件が取りざたされていた頃でした。

 

 

事件の全体像—腹腔鏡手術の導入後、1年未満で4人が死亡

管理部長が調べたところ、保険適用手術として行われた腹腔鏡手術は、肝門部胆管癌(かんもんぶたんかんがん)に対して腹腔鏡下で行った、保険適用外と疑われる高難度手術だったことが判明しました。

時期を同じくして集中治療部の医師から、その手術を行った第2外科が関与した、腹腔鏡手術の死亡事例がこれまでも複数あったという情報が寄せられ、院内で予備調査がはじまりました。

 

調査の過程で次々と明らかになる事実は驚くべきものでした。

2010年に第2外科が難易度の高い腹腔鏡手術を導入した後に、1年未満で患者4人が死亡。その後、14年までに同一の医師が92例の腹腔鏡下肝切除術を行い、8人が死亡。

開腹手術でも10人が死亡していることがわかりました。

 

 

全国平均の6倍に上る死亡率

日本外科学会などが行った全例調査と比較すると、腹腔鏡を使う保険適用外で高難度の肝臓手術は、死亡率(手術後90日以内)が全国平均で2.27%。群馬大病院の事例では保険適用外に絞ると13.79%と、全国平均の6倍にもなることがわかりました。


死亡率が平均をはるかに上回るほか、今回の事件ではいくつもの問題点が浮き彫りになっています。

  • ●保険適用外の手術であったにも関わらず保険請求していた
  • ●事前のインフォームドコンセントが不十分であった
  • ●死亡した8例についてインシデント報告がなされていなかった
  • ●すべての症例において症例記録、カンファレンス記録が極めて乏しかった
  • ●術前評価が十分でなかった

 

 

「特定機能病院」取り消しも検討

一連の事件を受けて、行政は群大病院に対して厳しい態度を示しています。厚労省は群大病院の特定機能病院としての承認の取り消しを検討しているほか、臨床研究病院としての2014年度の補助金の交付も凍結されています。

 

多くの不備が重なり、多数の犠牲を出してしまった群大病院事件。そもそも腹腔鏡手術導入後の1年未満で4人もの死亡例を出した時点でインシデント報告をし、原因の究明がなされるべきところがその報告すらなされていない状況でした。

 

群大病院では報告書で、「事故報告制度が院内に整備されていても,診療科が事故と認識しなければ報告制度は活用されない」として、医療従事者の問題意識や適切な現状認識が重要であると分析しています。

また同じ病院内に第1外科、第2外科、その下に上下消化器外科、乳腺外科、呼吸器外科など複数のチームが重複する組織体系にも、問題があったとしています。執刀を担当した医師については、懲戒処分も含めた処分を検討しているということです。


(参考)

群馬大学病院中間報告書

腹腔鏡死亡8人の全例過失認め謝罪…群馬大病院(ヨミドクター)

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