最終更新日 2018/09/18

脳動脈瘤

脳動脈瘤とは・・・

動脈瘤(のうどうみゃくりゅう、cerebral aneurysm)とは、脳動脈の一部が拡張した状態である。形状としては、多くが嚢状で、一部で紡錘状もある。破裂するとくも膜下出血を引き起こし、死に至ることもある。

【原因】
動脈壁は三層(外膜、中膜、内膜)からなるが、脳動脈分岐部などの先天的に中膜が欠損した箇所に、高血圧症などで圧力がかかることで、瘤状に拡張することにより動脈瘤を形成する。
脳動脈瘤の発症リスクとしては、以下のものが挙げられる。
■遺伝性疾患
・結合織疾患(Ehlers-Danlos症候群、弾性線維性仮性黄色種など)
・常染色体優性多発性嚢胞腎
糖質コルチコイド反応性アルドステロン
もやもや病
・家族性脳動脈瘤
喫煙
■高血圧症
エストロゲン欠乏症
■大動脈縮窄症

【症状】
未破裂であれば無症状のことが多いが、頭痛視力障害、複視など脳神経症状を呈することがある。例えば、前交通動脈-前大脳動脈移行部の動脈瘤が拡張すると、動眼神経を圧迫し、動眼神経麻痺による症状(散瞳や複視、眼瞼下垂)が生じる。

【病態】
ほとんどの頭蓋内動脈瘤はWillis動脈輪の前方循環系に位置し、前交通動脈-前大脳動脈の分岐部(A-com)、中大脳動脈分岐部(MCA)、後交通動脈-内頸動脈分岐部 (IC-PC)の順に好発する。なお、脳動脈瘤は破裂することでくも膜下出血を引き起こす。発症するとおよそ10%は病院に到達するまでに死亡し、治療により良い転機をたどるのは1/3ともされる。
破裂のリスクとしては、以下のものが挙げられる。
・サイズ(7mm以上)
・部位(脳底動脈先端部、前交通動脈、後交通動脈-内頸動脈分岐部など)
・形状(不整形や鶏冠を有するもの、瘤の長さと頸部の比が大きいもの)
・合併疾患(上記に挙げた発症リスク)の有無
・過去のくも膜下出血の既往
・くも膜下出血の家族歴

好発年齢は40~60歳といわれている。また、嚢状動脈瘤は世界人口の推定3.2%が有すると推定され、わずかに女性に多い(54~61%)。特に、50歳を越えると、その比率は「女:男=2:1」程度まで増大するといわれるが、これは、閉経によるエストロゲン欠乏が関与しているためと考えられている。

【検査・診断】
くも膜下出血や頭痛の原因検査の際に施行されるMRAや3D-CTA、DSA(血管造影)で発見されることがほとんどである。近年では、脳ドックの普及により、無症候性脳動脈瘤が偶然発見されることも多くなった。

【治療】
脳動脈瘤の破裂の可能性が高いと判断されれば、動脈瘤クリッピング術や動脈瘤コイル塞栓術といった手術を行い、無症状の場合は保存的加療(降圧、禁煙、画像フォロー)などが選択される。

執筆: 石田 光

元 神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター

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