経口レスキュー薬の上手な使い方

『エキスパートナース』2015年1月号<臨床の裏ワザ・裏知識>より抜粋。
経口レスキュー薬の上手な使い方について解説します。

 

松田能宣
国立病院機構近畿中央呼吸器センター心療内科/支持・緩和療法チーム

 

がん性疼痛の鎮痛が不十分なときや突出痛があるときに、オピオイドのレスキュー薬を使用します。医師の指示のもと実際に対応するのはナースだと思います。「痛い? じゃあ飲んでおきましょう」に、もうひと工夫してみましょう。

 

〈目次〉

 

患者さんの個別性(効果発現時間、効果持続時間)に合わせて投与する

レスキュー薬として使用する代表的な薬剤には、オキノーム®、オプソ®があります。そして、それぞれめやすとなる効果発現時間、効果持続時間があります(表1)。

 

表1レスキュー薬の効果発現時間と持続時間

レスキュー薬の効果発現時間と持続時間

 

まずは、患者さんの突出痛の持続時間について評価をしてみましょう。

 

例えば、持続時間が1時間だとどうでしょうか?これだと痛みの一部を改善できる可能性があります(図1-①)。

 

一方、痛みの持続時間が10分しかなければ、オキノーム®やオプソ®を内服しても、効果が出るころには痛みはなくなってしまいます(図1-②)。

 

なお、投与後は実際にレスキュー薬を使用したときの効果発現時間と痛みの改善の程度を患者さんに確認してみましょう。薬剤の効果には個人差があるため、効果の確認は非常に重要です。

 

図1突出痛の持続時間とレスキュー薬の効果

突出痛の持続時間とレスキュー薬の効果

 

予測される痛みにはレスキュー薬を予防的に使用

放射線治療時」「リハビリ時」「食事時」といった体動時痛があらかじめ予想される場合には、使用するレスキュー薬の効果発現時間に基づいて事前に内服をしておきます。

 

ここでも効果発現時間には個人差が予想されるため、投与後の効果を患者さんに教えてもらいましょう。

 

突出痛が強いときはレスキュー薬を増量する

レスキュー薬は一般的には、定期投与されているオピオイドの1日投与量の10~20%の量に設定します。

 

ただし、安静時は痛みがなく、突出痛や体動時痛が非常に強く、標準的なレスキュー薬の量で効果が不十分な場合には、レスキュー薬を増量することで、症状コントロールがうまくいくことがあります(図2)。

 

図2レスキュー薬の増量

レスキュー薬の増量

 

より効果発現の早いROO(rapid onset opioid)を使いこなそう

突出痛や予想できない体動時痛に対して、オキノーム®やオプソ®では効果発現時間が遅いために、痛みの改善が得られないことがあります(図1-②)。こういったときにはオキノーム®やオプソ®より効果発現の早いアブストラル®やイーフェン®といったROO(rapid onset opioid、即効性オピオイド)を用います(表1下)。

 

ただし、投与量の設定方法、増量の方法、投与間隔など、オキノーム®やオプソ®とは異なります。使用方法については本稿では述べませんが、もし使用されるならしっかり確認しておく必要があります。

 

疼痛出現の時間が決まっていたら、レスキュー薬を定期投与する

オピオイド徐放剤を使用している場合、定期投与の切れ目に痛みが出現することがあります(end-of-dose failure、図3)。

 

図3レスキュー薬の定期投与

レスキュー薬の定期投与

 

徐放剤の定期投与の回数を増やす、徐放剤の投与量を増やす、といった対応もありますが、疼痛出現の時間が決まっているようなら、その時間の前にレスキュー薬を定期投与することで、疼痛出現を防ぐことができます。

 

レスキュー薬で自己効力感アップ

患者さんはがんになったことで、がんの告知、抗がん治療など、医療者主体の医療にさらされます。「まな板の上の鯉こい」とおっしゃる患者さんもおられます。そういったなかでレスキュー薬の自己決定による使用は、患者さん自らが希望して行われる患者主体の治療であると言えます。

 

そのような視点を持って、「うまくレスキュー薬を使ってくれたおかげで痛みがよくなってきましたね」と患者さんに返すことで、患者さんの自己効力感のアップにつながります。

 


[引用・参考文献]

 

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社

 

P.12~「臨床の裏ワザ・裏知識」

 

[出典] 『エキスパートナース』 2015年1月号/ 照林社

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