深部静脈血栓症(DVT)

『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回は深部静脈血栓症(DVT)について解説します。

 

著者/ぷろぺら(看護師)

医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医

 

 

深部静脈血栓症(DVT)とは?

深部静脈血栓症とは、同じ体位をとり続けることで、下肢などの深い部分にある静脈(深部静脈)に血栓が形成された状態です。

 

腹部手術はリスクが高いです

 

形成された血栓が血流に乗って肺や脳に飛んで詰まらせることで、肺塞栓症(PE)といったさらに重篤な合併症を引き起こすおそれがあります。

 

肥満も大きなリスク要因です。

 

 

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観察項目

❶下肢浮腫の左右差

変色腫れ浮腫がないかを確認します。

 

❷疼痛の有無

強い痛みを訴える場合もあります。

 

医師顔画像

第二の心臓って呼ばれるくらい足っていうのはえらいんだよ。

 

一番心臓から離れていて、しかも下から上に向かって血液を押し上げなきゃいけない。

 

この押し上げるポンプの役割を果たしているのが足の筋肉だね。

 

看護師顔画像

確かに…

 

そう考えると、すごい力で血液を押し上げているんですね!

 

看護師顔画像

健常な人でも、エコノミークラス症候群になりますもんね。

 

Point

肺塞栓症(PE)

肺塞栓症の全体像としての特徴は、「ヤバそうなのに異常所見がない」ことです。

 

患者さんから「息苦しい」「胸が痛い」などの訴えがあって、みるからに「ヤバそう」なのに、心電図も呼吸音も正常、胸部X線画像もみた感じ正常(専門の医師がみるとわかるサインはあります)、酸素化も正常…そんな患者さんにDVTの兆候があれば、ほぼ肺塞栓を起こしています。

 

なお、肺塞栓症は心エコーを行うことで、すぐに診断できます。

 

 

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対応

術中~術後にフットポンプ、術後に弾性ストッキングを装着し、血栓ができるのを予防しますが、血栓ができてしまったら、フットポンプや離床は禁忌になります。

 

血栓ができてしまった場合は、すぐに血栓溶解薬の投与を開始します。

 

血栓が
できる前:フットポンプ、離床→ OK!
できた後:フットポンプ、離床→ NG!

 

 
看護師顔画像

血栓ができる前と後では対応が真逆になるわよ!!

 

間違えると本当に大変なことになるから、気をつけて!!

 

Point

なぜ、血栓ができたらフットポンプを使ってはいけないの?

 

下肢の静脈閉塞はもちろん重要な合併症です。

 

しかし、前述したようにできた血栓が脳や心臓などの重要臓器に飛ぶことは、生命活動の維持に直結します。

 

深部静脈血栓ができた状態でフットポンプを使用してしまうと、血栓を静脈から剥離させ、血流に乗せる手助けになってしまうのです。

 

だから
一度できたら予防策は禁忌!!

 

 
看護師顔画像

こまめな観察が必要になりそうですね…

 
医師顔画像

そうだね!


術後は創部やドレーンに気をとられがちだけど、下肢の観察もしっかり行ってね!

 

 

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【著者プロフィール】

ぷろぺら@puropera44

看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。

 

 

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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂

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