石鹸清拭の際、2回以上拭き取りが必要なのはなぜ?

『看護技術のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は石鹸清拭の拭き取りに関するQ&Aです。

 

大川美千代
群馬県立県民健康科学大学看護学部准教授

 

石鹸清拭の際、2回以上拭き取りが必要なのはなぜ?

石鹸分が皮膚に残ると、皮膚を刺激して掻痒(そうよう)感や発赤などの皮膚トラブルの原因になることがあるからです。

 

石鹸を用いて清拭を行った場合は、2回以上拭き取りを行います1)。熱めのタオルを絞り、清拭した部位を拭き取るようにすると、短時間で効率的に拭き取ることができます。

 

皮膚表面は皮脂膜によって弱酸性(pH4.5~6.5)に保たれています。これによって皮膚が保護され、細菌の増殖が抑えられています。石鹸の多くは弱アルカリ性であるため、皮膚のpHを元の状態にするためにも、十分に拭き取りを行う必要があります。

 

なお、石鹸は泡立てて使用したほうが、清拭をする前の皮膚のpHに戻りやすいという報告もあります2)

 

表1A法・B法の皮表pH減少率(清拭部位3ヶ所平均)

A法・B法の皮表pH減少率(清拭部位3ヶ所平均)

 

 

表2A法・B法の皮表pH値(清拭部位3ヶ所平均)

A法・B法の皮表pH値(清拭部位3ヶ所平均)

 

山口らは、使用物品の異なる2つの方法(A法、B法)で、左右上肢、前胸部の3つの清拭部位の清拭を行い、その部位のpHを測定した。
方法や清拭部位による皮表pH値とpH値の減少率に顕著な違いはなかったが、皮膚のpH値は2度の拭き取りで約40%減少し、3回の拭き取りで約60%減少した。

 

拭き方のポイント

拭き方のポイントは次の通りです。

 

1ウォッシュクロスを患者の肌から離さないで拭く

末梢から中枢に向けて拭く時はある程度力を入れ、中枢から末梢に戻る時は軽く拭きます。

 

2腕や足は一巻きするように拭く

末梢から中枢へと少しずつウォッシュクロスの位置をずらしながら、20~30cmくらいの幅で往復させ、そのままぐるりと一周するように拭き進みます。このようにすると、拭き残しや二重拭きをしないで効率よく進められます。

 

3胸部や腹部は円を描くように拭く

乳房は筋の走向に沿って外側から中心に向けて円を描くように拭き、下を拭き残さないように注意します。腹部は腸の走行に合わせて拭きます。

 

4関節を支えながら拭く

例えば上肢の清拭を行う場合、腕全体を持ち上げてしまうと患者は苦痛や疲労感を感じます。前腕を拭く時には上腕をベッド上に置き、手首の関節を下から支えるようにすると患者の安楽感が増します。

 

 


[引用・参考文献]

 

  • (1)山口瑞穂子ほか:清拭における石鹸の皮膚残留度の研究、順天堂医療短期大学紀要、1:12~19、1990
  • (2)深田美香ほか:石鹸清拭の効果的な方法に関する検討―石鹸の泡立てによる石鹸成分の除去効果について、日本看護研究学会雑誌、26(5):169~178、2003

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2016照林社

 

[出典] 『看護技術のなぜ?ガイドブック』 (監修)大川美千代/2016年3月刊行/ サイオ出版

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