入浴援助時、肩まで湯につかってはいけない患者がいるのはなぜ?

 

『看護技術のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は入浴援助時の注意に関するQ&Aです。

 

大川美千代
群馬県立県民健康科学大学看護学部准教授

 

入浴援助時、肩まで湯につかってはいけない患者がいるのはなぜ?

患者の状態によっては、肩まで湯につかると脈拍数や呼吸数の増加を招く危険性があるからです。

 

これは静水圧の作用によるもので、循環器疾患、呼吸器疾患などの患者は注意が必要です。

 

体の表面にかかる圧力を静水圧といいます。静水圧の大きさは水面からの深さに比例しますので、水面下に沈んだ部分が多いほど、受ける静水圧は大きくなります。ということは、肩まで湯につかると、静水圧が大きくなって体表面の静脈が圧迫され、心臓に押し戻される血流量が多くなり、拍出量も増加します。その結果、心臓に負担がかかることになります。

 

また、胸部に大きな静水圧がかかると横隔膜が押し上げられ、肺が圧迫されて容量が減ってしまいます。この容量の減少を補うために、呼吸数を多くせざるをえなくなり、呼吸が苦しくなることもあります。

 

このような患者は、心臓の位置くらいまでを湯につける、半身浴を実施します。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護技術のなぜ?ガイドブック』 (監修)大川美千代/2016年3月刊行/ サイオ出版

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