「何のためにその報告をしているのか?」を考える|新人ナースのホウレンソウ[4]

これまで、どのような報告の仕方があるか、また報告時のポイントについて紹介してきました。今回は、その中で紹介した「SBAR」についてさらに説明し、「何のためにその報告をしているのか」を改めて確認していただきたいと思います。

 

川原千香子
愛知医科大学医学部シミュレーションセンター講師
急性・重症患者看護専門看護師/救急看護認定看護師

 

☆★☆特別企画☆★★「報告・連絡・相談」にまつわるお悩み大募集!
日ごろ、ホウレンソウでお悩みのことはありませんか? お悩みをお寄せいただいた方の中から抽選で、 『お役立ち看護カード』をプレゼントいたします。詳しくはこちらをご覧ください。

 

〈目次〉

 

SBARからI-SBAR、I-SBARCへ

SBARを思い出してみましょう(SBARの使い方)。

 

S;Situation(状況、状態)
B;Background(背景、経過)
A;Assessment(評価)
R;Recommendation(依頼、要請)

 


SBARは緊急時、簡潔にもれなく報告を行うためのツールです。そのため、“Situation(状況)”から報告をするようになっていますが、一般的には最初に「自分が何者」で「誰(何号室の○○さん)」の報告をしたいかを宣言することが安全面からも求められます。

 

そこで、近年では“Identify(報告者、対象者の同定)”が追加され、「SBAR」 ではなく「I-SBAR」が用いられてきています(1)

 

I:Identify(報告者、対象者の同定)
S;Situation(状況、状態)
B;Background(背景、経過)
A;Assessment(評価)
R;Recommendation(依頼、要請)

 

また、患者安全の視点から口頭指示、特に電話での報告などでは指示内容を復唱し、複数者で確認することが求められるため、“Recommendation(依頼、要請)”の後に、“Confirm(口頭指示の復唱確認) ”が加えられ、「I-SBARC」に発展しています(2)(3)

 

I:Identify(報告者、対象者の同定)
S;Situation(状況、状態)
B;Background(背景、経過)
A;Assessment(評価)
R;Recommendation(依頼、要請)
C;Confirm(口頭指示の復唱確認)

 

ミニ知識

SBARは、米国で医療安全と質の管理を目的に開発されたteamSTEEPSというチームワークトレーニングで用いられている報告のツールです。
teamSTEPPSは、チームとして安全で有益な知識・考え方、態度、成果が得られる戦略で、航空乗務員のための「Crew Resource Management」の原則や米国防省の事故対策の実績をもとに作成、実践された世界標準の行動規範を示しています(4)

 

 

I-SBAR、I-SBARCで考えてみましょう

前回の東京子さんの事例を使って、I-SBAR、I-SBARCを用いた報告例を考えてみましょう。

 

 

I-SBARで考えてみましょう

新人看護師の赤坂るう子さんが東さんの病室を訪れた後、ナースコールでリーダーに報告する場面です。

 

ここの“Recommendation(依頼、要請)”は、なかなか言いにくいかもしれませんが、まず一人では対処が難しいと判断したら、いろいろと説明に時間をかけるより、「応援をお願いします!」と、しっかり伝えることが望まれます。

 

また、今回のように、同室の患者さんからのナースコールで訪室した場合、様子を見るつもりで何も持ってないことも珍しくありません。そのため、報告の際にはバイタルサイン測定用具や、緊急カートなどの物品も依頼しましょう。
もちろん報告を聞いた人たちが、気を利かせて持ってきてくれることもあると思いますし、逆に訪室したのがリーダーで、あなたが必要なものなどの指示を受けることもあると思います。 この“Recommendation(依頼、要請)”の部分を常に考えておくことは、次の行動への予測にもつながりますので、日々I-SBで終わらないように習慣づけてみましょう。

 

I-SBARCで考えてみましょう

では次にI-SBARCです。直接、当直医師に報告の電話をした場面です(点滴ラインはすでに確保されていると仮定します)。

ISBARC

 

(医師からの指示を聞いた後)
ISBARC

 

第1回にも書いた通り、報告は、事実のみを伝えることとは異なります
何のためにその報告をしようとしているのかが大切です。自らの考えや、依頼したいことを伝えるのは、最初は難しいことですが、ぜひ訓練してほしいと思います。

 

 

自分の考えを持つことは「患者さんにどうなってほしいのか」「何が必要なのか」を考えること

筆者が新人のころ、よく先輩や医師に報告した後、「で、どう思うの?」と返されて絶句したことが思い出されます。
自分の考えを持つことは、患者さんにどうなってほしいのか、何が必要なのかを考え、ケアを追加修正することにつながります。「今、何が起きているか?」「今後どうなることが予測されるか?」「何を必要としているか」を考えるようになりましょう。

 

I-SBARCは、基本的な報告の手順と内容であり、医師―看護師間をはじめとする患者を中心とした医療者のコミュニケーションに欠かせないツールだと考えます。

 

☆★☆特別企画 あなたの「報告・連絡・相談」についてのお悩み大募集!!☆★☆

 

 

 

日ごろ、報告・連絡・相談について悩んでいることありませんか?
「自分なりにまとめて報告したら『もっと詳しく!』と言われ、詳しく報告したら『もっと簡潔に!』と言われた。どうしたらいいの?!」
「自分は報告のつもりだったけど『それって相談しないといけないことじゃないの?!』と言われた…」
なんて経験ありませんか?

 

そんなあなたの「報告・連絡・相談」についてのお悩みを大・募・集!!
日ごろから疑問に思っていることや、報告・連絡・相談でどうしたらいいかわからないことについてぜひお寄せください。
お悩みをお寄せいただいた方の中から抽選で、臨床現場で大活躍!『お役立ち看護カード』を 10名の方にプレゼントいたします。
この機会に、あなたの「ホウレンソウ」のお悩み、解決しちゃいましょう!

 

看護カード

 

【応募期間】2016年10月27日(木)~12月18日(日)
応募はこちらからどうぞ!
※お寄せいただいたお悩みは、個人が特定されないようにこちらで編集させていただき、本連載内で紹介させていただく可能性がございます。その際、応募いただいた方の個人名などは一切掲載いたしません。

 

 

参考文献

 

 

 

 


『あなたの報告はOK? NG? 新人ナースのホウレンソウ』の【総もくじ】を見る

 


Illustration:かげ Twitter

 


 

SNSシェア

看護知識トップへ