上室性期外収縮の出現タイミングによる心電図変化|洞性P波から読み解く不整脈(6)

 

看護師のための心電図の解説書『モニター心電図なんて恐くない』より。

 

[前回の内容]

上室性期外収縮

 

今回は、上室性期外収縮についての2回目、上室性期外収縮の出現タイミングによる心電図変化について解説します。

 

田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長

 

〈目次〉

 

上室性期外収縮の出現タイミングによる心電図変化

上室性期外収縮の出現タイミングについて勉強しましょう。

 

まず、不応期を思い出してください。不応期とは、活動開始から刺激に反応できない時間帯です。それはそうですよね、仕事をしているのに命令されても困ります。

 

不応期は心房筋がいちばん短くなっていて、早いタイミングの刺激に反応可能です。

 

心房筋、心室筋の不応期の終わり頃は受攻期といって、そこに刺激が入ると細動という筋肉の痙攣をきたします。房室結節には受攻期はありませんが、不応期の終了前後は、伝導が遅くなり、心室に伝導するのに時間がかかります。

 

では、脚はどうでしょうか。左脚よりも右脚のほうが不応期は長くなっています。つまり、左脚は通過できて、右脚が通過できない時間帯があります。

 

  • 心房筋は不応期が短い。不応期終了前後に受攻期がある。
  • 房室結節は不応期が長い。不応期終了前後は伝導速度が遅くなる。
  • 左脚に比べて右脚の不応期は長い。

以上の3点を考えながら、上室性期外収縮の出現タイミングを考えてみましょう。

 

まず、洞性心房興奮の直後に心房のどこかが脱分極したらどうなるでしょう。早すぎて心房の不応期にあたれば、心房に興奮が波及できず、期外収縮になりません。受攻期にあたれば、もしかして心房細動を起こすかもしれません。

 

 

心房の不応期を過ぎたタイミングで発生すれば、心房興奮が起こりますし、P′波として現れますが、ただし前の心拍のQRS波、T波に隠れてしまう場合があります。もっと困るのは、早いタイミングの上室性期外収縮は、房室結節の不応期にあたって、心室に伝導しません。

 

つまり、P′波だけがあって追従するはずのQRS波がないという事態になり、しかもそのP′波ですら、前の心拍のQRS波・T波に隠れてはっきりわからないという由々しき問題が起こります。

 

非伝導性の上室性期外収縮

図1の心電図を見ましょう。

 

図1上室性期外収縮の心電図③(非伝導性)

上室性期外収縮の心電図③(非伝導性)

 

1・2拍目のPP間隔が洞周期ですが、次のQRS波は出現が遅いですね。洞不整脈にしては、PP間隔が長すぎるし、洞機能不全でしょうか。

 

こういうときこそ、目を皿にしてP波を探してください。

 

3拍目のT波の終末部分の形がおかしいですね。実はここにP′波が重なっているのです。もちろんT波は心室での活動で、P′波は心房の期外収縮ですから、違う地域での活動ですが、心電図は心房と心室の活動を同じ記録紙に表現しますからタイミングによってはこのように重なってしまい、わかりづらくなります。

 

これを“伝導されない上室性期外収縮”または“非伝導性上室性期外収縮”、英語ではPAC withblock、blocked PACといいます。興奮が伝導されないことをブロックといいます。

 

 

PP間隔が洞周期よりも長い場合は、洞機能不全ばかりでなく、この非伝導性上室性期外収縮も考えてください。

 

もう少し遅いタイミングで上室性期外収縮が起これば、なんとか房室結節の不応期を脱して心室に到達しますが、房室結節の伝導速度が遅くなって、心室に伝わるまでに時間がかかり、P′Q間隔が延長します。

 

P′Q間隔延長がある上室性期外収縮

図2の心電図を見ましょう。

 

図2上室性期外収縮の心電図④(P´Q間隔延長)

上室性期外収縮の心電図④(P´Q間隔延長)

 

2拍目、6拍目のP波は上室性期外収縮であり、P′波ですが、その後に追従するQRS波との間隔すなわちP′Q間隔が延長していますね。これは不応期直後の興奮の侵入のために房室結節の伝導速度が遅くなって心室到達に時間がかかっているためです。

 

さらに、房室結節を伝導して心室に入っても、右脚が不応期で、左脚が不応期から脱しているタイミングでは、左脚だけを通過して右脚は通れないということがあります。

 

この場合、QRS波は左脚を通った興奮が、遅れて右脚側を興奮させるので心室の興奮終了までに時間がかかりQRS幅が広い“右脚ブロック”型のQRS波になります。

 

 

変行伝導の上室性期外収縮

図3の心電図を見ましょう。

 

図3上室性期外収縮の心電図⑤(変行伝導)■

上室性期外収縮の心電図⑤(変行伝導)

 

1拍目のP波が洞性P波ですが、そのP波に引き続くQRS-Tの終末にP′波が見られます。長いP′Q間隔の後に出現するQRS波は幅が広いですね。

 

これは上室性期外収縮の興奮が、なんとか心室に伝わったものの、左脚は通れる、右脚は不応期というタイミングにあたり、右脚ブロック型の幅の広いQRS波になったものです。

 

このように、興奮の入るタイミングによって片方の脚が通れずに脚ブロック型の心室伝導を示す場合を変行伝導といいます。

 

通常は右脚のほうが左脚よりも不応期が長く右脚ブロック型になる場合が多いのですが、心疾患などで左脚のほうが不応期が長い場合は左脚ブロック型になることもあります。

 

 

上室性期外収縮の出現タイミングによる心電図変化のまとめ

  • 上室性期外収縮はその出現タイミングによって、早すぎると房室結節の不応期にあたり、非伝導性の上室性期外収縮となる。
  • PP間隔が洞周期よりも長くなっている場合は、洞機能不全以外に、非伝導性上室性期外収縮も考え、QRS波、T波をよく見てP′波が隠れていないかどうかをよく観察する。
  • 上室性期外収縮が心室に伝導した場合、房室伝導の遅延(P′Q間隔の延長)、変行伝導(脚ブロック型QRS波)が見られる場合もある。

 

[次回]

上室性期外収縮の出現の仕方による分類|洞性P波から読み解く不整脈(7)

 

⇒〔「モニター心電図なんて恐くない」〕記事一覧を見る

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 モニター心電図なんて恐くない』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版

SNSシェア

看護知識トップへ