拡大する医療ツーリズムがもたらす看護師への影響とは?
【ナース知っ得ニュース 2015/11/25】
旅行会社や医療支援サービスを手掛ける企業などが「医療ツーリズム」を推進しています。
外国からの患者受け入れが増えることで、外国人対応ができるスタッフニーズが増えるなど、看護師への影響もありそうです。

医療ツーリズムを積極展開=富裕層呼び込みへ-JTBなど(時事通信)
増える“外国人対応ができる”看護師ニーズ
医療ツーリズム(メディカルツーリズム)とは、検診や治療などの医療サービスを受けるために他国を訪れることです。自国では受けられない高度な医療サービスや、低コストでの受診、待機時間の短縮などを求めて他国を訪れる「医療ツーリスト」は、世界で1000万人にものぼると言われています。
日本では、特に中国などのアジア圏の富裕層のニーズを受け、高度な医療技術と細かなサービスを打ち出しています。
医療ツーリズムによって増える外国人患者に対して、看護師などのスタッフのニーズも増えることが予想されます。
また、看護師に求められるスキルも変わっています。特に中国語、英語、ロシア語などのコミュニケーション力がある看護師のニーズは高くなりそうです。
日本病院会が2015年10月に発表した「平成27年医療の国際展開に関する現状調査結果報告書」によれば、患者の主な出身国は中国 76.2%、韓国 45.6%、アメリカ 43.0%、フィリピン 38.3%。
それに対して医療機関として対応できる言語は英語88.5%、中国語27.6%、韓国語12.9%と、患者数の多い中国語・韓国語に対応できる病院はまだまだ少ないのが現状のようです。
同報告書によると、病院が感じる外国人患者受け入れについての課題として最も多かったのが「言語・会話(多言語対応)」で95.8%、次いで「医療通訳の提供体制」が44.6%、「治療費の不払い」43.7%と、特に言語の壁が大きい結果が出ています。
国内スタッフの育成だけでなく、すでに数年前から人間ドックの患者受け入れに着手していた亀田メディカルセンターは、2010年には日本の看護師免許を取得した中国人看護師を増やす動きを見せるなど、外国人看護師を雇用するという考えも広がっています。
地方病院を救うか?「医療ツーリズム」の現状
日本政府観光局によれば、2015年の訪日外国人数は、9月までに1448万人にも達しており、2014年の1341万人をすでに更新しています。経済労働省が推計した外国人患者受入数は2012年で2万7000人、2015年はそれを大きく上回る予想です。
医療ツーリズムには「検診」「治療」以外にも「美容・健康増進」を目的としたサービスも含まれます。その治療費は一回当たり20~100万円にものぼり、患者数の減少や収益が枯渇する地方病院にとっては“希望の光”であるともいわれています。
国の重要戦略である医療ツーリズム
日本での医療ツーリズムの普及は国としても重要戦略としており、2010年6月に閣議決定した「新成長戦略」では、国家戦略プロジェクトの一つとして「国際医療交流」を上げ、「医療滞在ビザ」の発行などを実現しています。
「医療滞在ビザ」とは、治療を目的とする外国人患者やその同伴者が、日本に長期に渡って滞在でき、必要に応じて母国と行き来ができるビザです。2011年4月には、外国人患者受け入れの支援組織であるMedical Excellence JAPAN(MEJ)が創設され、外国人患者の受け入れ窓口を担っています。
MEJは、医療ツーリズムに関わる企業のうち特に直近2年間の外国人患者受け入れが一年で平均150人以上の企業を「医療渡航支援企業」として認定しています。初の認定を取得したのは、旅行会社JTBと、医療支援サービスを手掛ける日本エマージェンシーアシスタンス(EAJ)でした。
(参考)
「医療ツーリズム」:着実に外国人受け入れ数増加か?(Japan.com)

