MDRPU発生の予防対応|皮膚トラブルの予防的ケア
『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「MDRPU発生の予防対応」について解説します。
持田裕子
市立青梅総合医療センター 看護師長
- 医療機器が多数装着されることによる医療関連機器圧迫創傷(MDRPU:medical device related pressure ulcer)の高リスク状態
MDRPU発生の予防対応
クリティカル領域でのスキンケアは、迅速かつ簡便さが要求されるため、医療関連機器取り付け前の保清ケアに清拭清浄剤であるリモイスクレンズ®などを標準的に使用する(写真1)。
写真1MDRPU発生の予防

末梢静脈ライン・動脈ラインの固定
MDRPU発生の多くは、コネクター部分である。コネクター部分にクッション材のあるパーミエイドピロー®などを用いて固定する(写真2)。
写真2末梢静脈・動脈ラインの固定

中心静脈(CV:central vein)カテーテル挿入時の固定
頸部、鼠径部の刺入部は皮膚のしわや凹凸かつ湿潤しやすい環境であるため透湿性が高く柔軟性のあるIV3000®などを用いて固定する。外周に切り込みを入れ、辺縁部のテンションを下げる(写真3)。
写真3中心静脈カテーテルの固定

胃管カテーテルの固定
MDRPUの多くは鼻翼に発生する。分泌物で湿潤しやすい部位のため、速乾性があり重ね張り可能なマルチポアドライ®などを用いて固定する。
固定方法は、鼻下、鼻上の2方法から選択する(写真4)。
写真4胃管カテーテルの固定

マスク装着時は、ハイドロサイトADジェントル®などのクッション性のある被覆材を使用し圧迫を避ける(写真5)。
写真5被覆材使用による圧迫軽減

膀胱留置カテーテルの固定
MDRPUはサンプルポートのコネクター部分、挿入部分に多く発生する。閉鎖型のカテーテルはサンプルポートの位置を修正し、カテーテルバルブの直下をクィックフィックス®を用いて固定し、カテーテルに遊びをつくり固定する(写真6)。
写真6膀胱留置カテーテルの固定

非侵襲的陽圧換気療法(NPPV:noninvasive positive-pressure ventilation)の装着
MDRPUの多くは鼻根部、前額部、頬部に発生する。適切なマスクサイズの選択、ストラップを過度に締めつけない、マスクは左右対称に装着し蛇管をまっすぐに下す(写真7)、 2時間に1度はマスクを持ち上げ除圧、1日1回はリモイスクレンズ®と温かいタオルで清拭を行う(写真8)。発赤時はブラバ皮膚保護テープ®(半月型、ストレート型)で保護する(写真9)。
写真7蛇管の位置

写真8顔面の清拭

写真9発赤時の皮膚の保護

気管チューブの使用
MDRPUの多くはバイトブロック、気管チューブの接触による口唇、アンカーファスト®により鼻下に発生する。接触部位の変更と清潔ケア、リップクリームなどを用いて保湿を行う。鼻下にはエスアイエイド®などの非固着性、やわらかい素材の被覆材をはさみ、皮膚の接触を避ける(写真10)。
写真10被覆材による皮膚の保護

深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombosis)予防用具の装着
MDRPUの多くは、腓骨の圧迫、弾性ストッキングのたわみ、フットポンプの断端の接触により発生する。適切なサイズの選択、しわを寄らせない、腓骨に発赤が出現した場合、エスアイエイド®を用い弾性包帯へ変更する(写真11)。
写真11被覆材の使用

1 )日本創傷・オストミー・失禁管理学会編著:ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理,照林社,2015,p.23
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版


