第三者評価|いまさら聞けない!ナースの常識【12】

毎日の業務の中で触れているけど、『いまさら聞けない』ことってありませんか?

知ってるつもりで実は説明できない基礎知識や、ちょっと気になるけど調べるほどでもないな、なんてこと。

そんな看護師の素朴な疑問を、元看護師ライターがこっそり教えます。

 


 

Vol.12 第三者評価

 

「第三者評価」というシステムがある。正確には「福祉サービス 第三者評価」という。医療機関勤務の看護師には聞きなれない言葉だと思うが、高齢者施設や保育園などのいわゆる福祉施設で働く場合には大いに関係する。今回はこの「第三者評価」とは何か、というお話。

 

 

第三者評価とはどんなシステムか

この「第三者評価」とは、平たく言えば『福祉サービスを提供する施設を、(施設の事業者でも利用者でもない)全くの第三者が評価する』というシステム。利用者が福祉サービスを選ぶ際の基準を設けることが目的だ。

福祉サービスは、実際のサービスの質などを評価するのが難しい。仮に自分の親がお世話になる高齢者施設を探すとする。アナタは何を基準に選ぶだろうか。施設の理念やサービスの質などもこだわりたいが、施設側は良いことだけを言うだろうし、近所の評判もアテにならない。実際に入居している人に聞いても、主観が入ってしまい公正性に欠ける。つまり、明確な指標が無いのだ。

【看護roo!】看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | いまさら聞けない!ナースの常識【12】第三者評価

図1 福祉サービス施設を選択する基準はなに?

 

そこで始まったのが「福祉サービス 第三者評価」というシステム。目的は、利用者が施設を選択する際の基準を提示すること。「利用したい施設の特徴は?」「サービスの質は?」など、利用者が気になるポイントについて、第三者が公平な眼で評価し、公表するものだ。

 実際に評価をするのは、都道府県が認めた評価機関に所属する評価員。依頼を受けた施設に対して、公平性を持って福祉サービスの実態を評価する。

 

 

看護師だって評価される

施設にとって、第三者評価を受けるのはメリットもあるがリスクもある。

評価を受けた結果、もし仮に、「この施設は理念もしっかりしており、利用者への待遇もバッチリ。スタッフの教育も素晴らしい」という評価が公表されれば、来年は利用者希望者が増えるかもしれない。逆に「この施設、理念は良いのだが、理想と現実のギャップが激しい。スタッフの態度もよろしくない」という主旨の評価となれば、来年から利用者は激減する可能性もある。

つまり施設だけでなく、看護師の仕事ぶりや人間関係も評価される。例えば利用者やそのご家族が「とても良く話を聞いてくれて、親身になってくれる看護師さんがいる」とコメントしたとする。それがそのまま施設としての評価にはならないが、施設の管理者側にはそれなりに伝わるので、スタッフをよく見ている管理者であれば「ああ、この人だ」と分かるかもしれない。またはその逆もあり得る。

 

 

これからの看護師の姿勢

このシステムがスタートしたのは平成15年だが、福祉サービスを提供する事業者側には評価を受けなくても罰則がない。他の都道府県でも徐々にこのシステムを実施しているところが増えているが、今のところ評価の実績は東京都が一番多く、それ以外では中々浸透しないようだ。評価を受ける側(施設側)としては、決して安くはないお金を払って、手間と時間をかける必要があるので無理もない。しかしこれからますます高齢者向け施設は増えるだろうから、利用者からの評価は競争力の1つになる。

看護師の仕事には、やらなくてはいけないもの=「義務」が多い。しかし義務ではなく、あと少しの工夫や心がけで相手がとても救われることも多い。特に福祉は「よりよく生きること」を目標とする分野なので、こういった工夫や心がけは看護師がより飛躍できるポイントとなるだろう。だがこれは一朝一夕で身に着くことではない。「評価されるから」だけではなく、相手が救われる一言、相手が安らぐひと工夫を、ちょっと立ち止まって考えてみてはいかがだろうか。

 

【岡部美由紀】

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